The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児・未熟児におけるLatamoxefの基礎的, 臨床的検討
豊永 義清黒須 義宇杉田 守正北川 道弘堀 誠
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1983 年 36 巻 9 号 p. 2322-2335

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抄録

新生児, 未熟児においては抗生物質の進歩した現在でも, 化膿性髄膜炎, 敗血症と言うような重症感染症に日常しばしば遭遇する。しかし, これらの時期の上記疾患は定型的な症状に乏しく, 未だに死亡率が高いことは諸家1~3) により報告されている。又, この時期の起因菌としては, 大腸菌を中心とするグラム陰性桿菌が優性であることも周知の事実4, 5) である一方, β-Lactamase産生株の増加も今日問題となつており, 従来新生児期において頻用されていたAmpicillin (ABPC) についてはEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Haemophilus influenzaeなどに対しては耐性株が多く, 第1選択剤として使用するのは困難であると思われる。これらの背景から, 従来のCephalosporin系薬剤 (CEPs) の利点を有しながら, 近年分離菌が増加しており, しかも従来の薬剤では抗菌力が及ばなかつたSerratia, Enterobacter, Citrobacter及びIndole陽性のProteus等にも優れた抗菌力を示す薬剤の開発が進み, 第5群6) のCEPsが登場してきた。更に, 7-ACAの7α 位をMethoxy基に置換した, Cephamycinの開発を行い, 又, 母核の硫黄原子 (S) を酸素原子 (0) に置き換え, Oxacephem系薬剤であるLatamoxef (LMOX) が開発された。このLMOXの乳幼児以降の小児に対する検討は, すでに, われわれも報告7) しているが, その有用性は, 従来のCEPsと比較すれば, 問題にならない程優れており, 特に, グラム陰性桿菌による重症感染症についての臨床効果並びに体内動態には目を見張るものがある。
新生児においては, 発育に伴う解剖学的, 生理学的変動が, 薬物の代謝排泄に及ぼすことが大きく, 特に肝機能の未熟性のために, 抗生物質が不活化されず体内を循環し得る場合もあり, 腎機能の未熟性のため代謝が異なる点なども考えねばならないだけに, 薬剤の日令による体内動態の変動を知ることは, 投与設計を決定するには必要である。
今回, LMOXを周産期研究会の班員として検討する機会を得たので, 生理的変動が著明である生後1週間に注目し, 新生児, 未熟児とも, 生後3日以内, 4~7日, 8日以上の3群に分けて, その体内動態を検討し, 更に一部の症例について髄液移行の解析を行い, 合せて臨床的検討を加えたので, それらの成績について報告する。

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