The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるsulbactam/Cefbperazoneの臨床使用成績
南谷 幹夫八森 啓金田 一孝
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1984 年 37 巻 10 号 p. 1801-1811

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抄録

細菌感染症の治療に, 最も広く使用され, 効果が期待されている薬剤はPenicillin, CePhalosporinなどのβ-Lactam系抗生剤であるが, 最近, 耐性菌が次第に増加してきたため, その利用価値に危惧が生じてきた。一方において, 耐性機構の仕組の研究が進められ, 臨床分離株の耐性はβ-Lactamaseによる薬剤の加水分解が主作用であることが明らかにされた。耐性菌対策には加水分解されにくい新誘導体の開発, あるいはβ-Lactamase阻害剤と既存抗生物質との併用が採り上げられている1)。
Sodium sulbactam (SBT) 2, 3) は1977年,米国Pfizer社Groton中央研究所で開発されたβ-Lactamase阻害剤で, 化学名はSodium (2S, 5R)-3, 3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo〔3.2.0〕heptane-2-carboxylate 4, 4-dioxideであり, Fig.1のような構造式, 分子量を有するPenicillanic acid sulfoneである。SBTの抗菌力は, ごく少数の菌種を除いて一般的に弱く, SBT単独では抗菌剤としての有用性は少ない。本剤の特性としては各種細菌が産生するPenicillinase型β-Lactamaseに対して強力に, そしてCephaklosporinase型β-Lactamaseには中等度に働く不可逆的不活化作用をあげることができる。この特性からSBTと種々のβ-Lactam剤との配合はβ-Lactamaseによる配合された抗生剤の抗菌作用失活を防ぎ, 抗菌力の増強が期待できる4~7)。
すでに本剤の安定性, 安全性, ヒトに対する吸収排泄などは検討されており, 又, 本剤に配合するβ-Lactam剤としてCefoperazone (CPZ) が選択され, その配合比1対1の有用性が高いことが知られた。Sulbactam/Cefoperazone (SBTICPZ) 配合剤の臨床的有用性が示唆されたところから, 1980年11月から成人領域における感染症に対する治験がすすめられ, 第30回日本化学療法学会総会,新薬シンポジウム8)で, 副作用も極めて少なく有効性が認められた。
今回, われわれはSBT/CPZ配合剤を小児科領域感染症に使用する機会を得たので, その臨床効果並びに副作用を検討した。

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