1984 年 37 巻 10 号 p. 1880-1892
近年のβ-Lactam系抗生剤の開発・進歩は著しく, かつ細菌感染症治療に大きく貢献している. しかし, これらの新抗生剤の使用頻度の上昇と共に, 耐性菌の増加傾向もみられ, 臨床上重要な問題となっている。さて, β-Lactam系抗生剤に対する耐性機構としては, 1) β-Lactamaseの産生, 2) 外膜透過性の変化, 3) 薬剤の作用点であるMurein transpeptidaseの変化が考えられているが, なかでもβ-Lactamase産生による耐性が大半を占めるとされている1)。そこで, これら耐性菌に対する対策として, まずβ-Lactamaseに安定な抗生剤の開発が進められ, 更にはβ-Lactamase阻害剤を既存β-Lactam系抗生剤と併用して対処しようとすることが考えられるようになった2)。
さて, Sulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) は後者の考えにそって開発された新しいタイプの抗生剤で, β-Lactamasoに対し強い不可逆的阻害作用を持つSulbactam 3) とグラム陽性菌及びPseudomonas aeruginosa, Enterobacterを含むグラム陰性菌まで抗菌スベクトルを持つCefoperazone 4) とを配合したものである。
すでに, 本邦ではSBT/CPZに関する基礎的及び成人領域における臨床検討が行われ, 第30回日本化学療法学会総会5) において, 本剤の評価が行われた。
今回, 著者らは, そこで得られた本剤の有効性と安全性の成績に基づいて, 小児におけるSBT/CPZの基礎的及び臨床的検討を行ったので, その成績について述べる。