1984 年 37 巻 2 号 p. 185-197
梅沢らは, 哺乳動物細胞の細胞表面の酵素活性を調べ, その細胞表面酵素の阻害物質を微生物培養液中に求めて, 数種の低分子の免疫増強物質を見いだしている1, 2)。その中に, ニワトリ小腸アルカリフォスファターゼの阻害物質として, 放線菌培養源液からForphenicineが見いだされ, この物質はマウスにおいて腹腔投与により羊赤血球に対する遅延型過敏症, 抗体産生能を増強することが認められた3)。しかし, Forphenicineは経口投与では無効であるので, 経口投与でも有効な物質として, Forphenicineの誘導体のForphenicinolが見いだされた(Fig. 1)2)。Forphenicinolはアルカリフォスファターゼを阻害しないが, 細胞表面酵素と結合し, マウスにおいて遅延型過敏症の増強, マクロファージの食作用の亢進, 移植腫瘍に対する抗腫瘍効果, 緑膿菌感染に対する抵抗性の増強等の生物活性を示し, 且つ極めて毒性が低いことが認められている4, 5)。
今回我々は萬有製薬からForphenicinolの提供を受け, 経口投与における血中濃度の推移と長期連続投与における安全性の検討を行い, 更に臨床的に興味ある知見を得たので報告する。