The Japanese Journal of Antibiotics
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37 巻, 2 号
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  • 石橋 凡雄, 高本 正祗, 篠田 厚, 杉山 浩太郎
    1984 年 37 巻 2 号 p. 185-197
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    梅沢らは, 哺乳動物細胞の細胞表面の酵素活性を調べ, その細胞表面酵素の阻害物質を微生物培養液中に求めて, 数種の低分子の免疫増強物質を見いだしている1, 2)。その中に, ニワトリ小腸アルカリフォスファターゼの阻害物質として, 放線菌培養源液からForphenicineが見いだされ, この物質はマウスにおいて腹腔投与により羊赤血球に対する遅延型過敏症, 抗体産生能を増強することが認められた3)。しかし, Forphenicineは経口投与では無効であるので, 経口投与でも有効な物質として, Forphenicineの誘導体のForphenicinolが見いだされた(Fig. 1)2)。Forphenicinolはアルカリフォスファターゼを阻害しないが, 細胞表面酵素と結合し, マウスにおいて遅延型過敏症の増強, マクロファージの食作用の亢進, 移植腫瘍に対する抗腫瘍効果, 緑膿菌感染に対する抵抗性の増強等の生物活性を示し, 且つ極めて毒性が低いことが認められている4, 5)。
    今回我々は萬有製薬からForphenicinolの提供を受け, 経口投与における血中濃度の推移と長期連続投与における安全性の検討を行い, 更に臨床的に興味ある知見を得たので報告する。
  • 村中 正治, 鈴木 修二, 川路 尚徳, 荒川 睦
    1984 年 37 巻 2 号 p. 198-208
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    合成ペニシリン系抗生剤, 合成セフェム系抗生剤の開発につれて, 多数のβ-ラクタム系抗生剤が, 日常診療に使用されるに至つた。
    これらの抗生剤は, いずれも, ベンジルペニシリン(PCG)と同様, β-ラクタム環を通じて容易に蛋白質と共有結合しうる。アナフィラキシーショックをはじめ, アレルギー反応を引き起す抗原物質となり得る可能性は想定し得る。
    我が国では, β-ラクタム系抗生剤の投与に当つては, アナフィラキシー反応の予知のため, 各製剤の300μg/mlの生理食塩溶液を用いた皮内テストを実施することが指示されている。しかし, このテスト溶液の濃度あるいは判定基準などはPCGについての経験をもとに類推されたものである1)。PCGの皮内テストの方法についても, 諸外国のそれと必ずしも一致していない2~6)。
    一般に, 薬物によるアナフィラキシー反応の予知法としては, プリックテストを含めた皮内テストが最も簡便且つ優れているとされている。しかし, 個々の薬物の溶解性, 皮膚刺激作用, あるいはその分子量などは一様ではない。各製剤のアナフィラキシー反応を引き起す抗原性の強弱に関する基礎データを得るためには, 各製剤の各種の濃度の溶解液を用いて, 正常のヒトを対象とした皮内テストを実施し, そのデータに基づいて皮内テスト実施法の基準を定め, その上で, 一定期間各々の製剤の投与を受けた多数の症例について, 投与前後における皮内テスト値の比較を行うことが理論的には必要と言えよう。
    筆者の知る限り, かかる基礎データが報告されている合成β-ラクタム系抗生剤は存在していない。
    今回, 治療のため新しい合成セフェム系注射用抗生剤セフォチアム(CTM)の投与を受ける多数の症例について, それぞれの受け持ち医師に, あらかじめ定めた一定の基準による反内テストの実施を依頼し, その成績を集めて検討させていただく機会を持つた7)。又, 同テストの陽性例, 及び皮内テストは陰性であつたが, CTM投与後に過敏反応を疑わせる症状が出現した症例から採取した血清について, 抗CTM抗体を測定して過敏反応との関係の検討を試みたので併せて報告する。
  • 加納 英行, 榊原 健治, 温田 信夫, 溝上 雅史, 二宮 信夫, 加藤 寿人, 徳田 泰司, 井土 一博, 山下 喜弘, 川村 孝, 岩 ...
    1984 年 37 巻 2 号 p. 209-218
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい抗生物質Cefotiam(CTM)は武田薬品研究所で開発した新しいCephem系抗生物質で, グラム陰性菌及びグラム陽性菌に広い抗菌スペクトラムを有し, Enterobacter, Citrobacter, インドール陽性のProteus vulgaris, Proteus rettgeri, Proteus morganiiにも抗菌力を示す。グラム陰性桿菌, 特にEscherichia coli, Klebsiella, Proteus mirabilisに対して抗菌力が強い1, 2)。静注及び筋注により高い血中濃度が得られ, 胆汁への移行が良好であり3), 生体内ではほとんど不活化されることなく主として腎から尿中に排泄される4, 5)。
    今回私共は消化器領域の感染症, 特に胆道感染症に対する本剤の臨床的効果を検討すると共に, 本院における起炎菌に対する抗菌力について, 他の抗生物質と比較検討したので報告する。
  • 西村 興亜, 河野 菊弘, 澄川 学, 河村 良寛, 日前 敏子, 小立 寿成, 小川 東明, 岸 清志, 古賀 成昌
    1984 年 37 巻 2 号 p. 219-228
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症に対する化学療法剤においては, 起炎菌に抗菌力が高く, 且つ胆道系への薬剤移行性の良好なことが基本条件である。これら条件にかなうものとして, 今日セフェム系を中心とした多種類の薬剤が開発され, その有効性が論じられている。胆石症をはじめとする胆道感染症の治療に際しては, 外科的治療に併せて化学療法が必要であるが, 抗生剤の選択にあたつては, 胆道閉塞にまつわる黄疸や肝障害, 胆嚢炎や胆嚢管閉塞など, 胆嚢の病態をも考慮した薬剤移行性の十分な把握が大切である。
    今回われわれは, β-Lactamase抵抗性が強く, グラム陰性菌に強い抗菌力を有すると言われるCefotiam (CTM)について, 胆石症手術患者を対象に, 血中, 胆汁中並びに胆嚢組織への移行性を検討し, 若干の興味ある成績を得たので報告する。
  • 特に前立腺及び膀胱壁内移行について
    越戸 克和, 多嘉良 稔, 上領 頼啓, 山本 憲男, 安井 平造, 古謝 哲哉, 藤井 光正, 橋本 治, 清水 芳幸, 城甲 啓治, 原 ...
    1984 年 37 巻 2 号 p. 229-236
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam(CTM)は, 武田薬品によつて開発されたいわゆる第2世代のセフェム系抗生物質であり, 化学的には, セフェム母核の7位側鎖にアミノチアゾール環が導入された最初の誘導体として注目されている(図1)。又, 抗菌活性面での特徴としては, このアミノチアゾール側鎖の導入により, 細菌外膜の透過性が改良されたため, 大腸菌, 肺炎桿菌などに対する抗菌力の増強と, インフルエンザ菌, インドール陽性プロテウス, エンテロバクター, シトロバクターなどにまで抗菌スペクトラムが拡大されており1~3), グラム陰性桿菌感染症を取扱う機会の多い泌尿器科領域では, その有用性が大いに期待されている。
    事実, 泌尿器科領域における本剤の臨床的検討はすでに諸家4~20)によって十分なされており, 石神ら21)による慢性複雑性尿路感染症を対象とした二重盲検試験では, CTM2g/日投与により, Cefazolin 49/日投与と同等以上の有用性であつたとされている。又, ヒトにおける腎機能障害時の体内動態, 使い方などについても大川22), 薄田23), 和志田8), 今川24)らによつて報告されており, 泌尿器科領域でのCTMの評価は確立されていると言っても過言ではないが,本剤の泌尿器科領域における組織移行性に関する検討はわずかに加藤ら12)の報告がみられるだけである。
    我々は, 抗生剤の有効性における組織移行性の持つ意義の重要性を勘案し, 山口大学泌尿器科及び関連病院の共同研究として, 前立腺及び膀胱壁への移行性を検討し若干の知見を得たので報告する。
  • Cefhletazoleの尿中排泄からみた腎機能評価第1報
    宮野 武, 下村 洋, 新井 健男, 佐々木 克典, 小川 富雄, 出口 英一, 駿河 敬次郎
    1984 年 37 巻 2 号 p. 237-242
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    両側の腎機能の正常な患者や種々の両側腎機能障害患者における抗生物質の尿中濃度及び尿中排泄に関する報告は多数みられるが, 一方の腎機能が低下し, 他方の腎機能は正常で高窒素血症のない患者における尿中の抗生物質排泄に関しては欧米において若干の報告1)をみるものの, 本邦においてはほとんど報告をみない。そこで今回我々は膀胱尿管逆流を伴う腎(以下VUR腎), 及び腎孟尿管移行部狭窄による水腎症 (以下PUJ狭窄性水腎症) において, 抗生物質Cefmetazole (以下CMZ) の経静脈投与を行い, 左右の腎から排泄されるCMZの尿中濃度を測定し, 腎機能の評価に若干の知見を得たので報告する。
  • 宮野 武, 新井 健男, 下村 洋, 小川 富雄, 佐々木 克典, 出口 英一, 駿河 敬次郎, 入戸野 博
    1984 年 37 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    先天性胆道閉鎖症 (以下CBA) 患児における胆汁酸代謝並びに抗生物質の胆汁中移行は共に現在極めて興味ある問題である。
    本症の患児の根治術時に我々は既報1)のFig. 1に示す駿河II法, 外胆汁空腸瘻を造設するが, 本法によれば術後肝から流出する全胆汁を正確に採取可能である。そこでこの空腸瘻から流出する胆汁を用いて血中並びに胆汁中の総胆汁酸値を測定し, 本症患児術後胆汁酸代謝の病態を検討, 更にCephem系抗生物質のうちで, 我々が本症根治術後に逆行性胆管炎防止などの治療に際し, 良く使用するCefmetazole (以下CMZ) の胆汁中移行を測定し, 胆汁酸代謝との関連性について検討を行つた。
  • 小長 英二, 万波 徹也, 渕本 定儀, 羽井佐 実, 折田 薫三, 間野 清志, 片岡 和男, 木村 秀幸, 清水 準也, 藤井 宏, 由 ...
    1984 年 37 巻 2 号 p. 247-255
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外科手術後の管理において, 感染症の発生予防と効果的な治療は手術成績を左右する重要な要因である。消化器外科においては, 他の臓器の手術と異なり腸管内常在細菌が存在している部分へ侵襲を加えることとなり, 術後感染症の発生頻度が高く, 起炎菌も腸管内常在菌が起炎菌として検出されることが多い。従つて消化器外科手術においては, 術前, 術中, 術後を通じ生体-細菌-抗菌剤の相互関連性を踏まえた感染予防処置が取られねばならない。手術適応が拡大傾向を示す昨今, これらの手術操作は患者の全身的並びに局所の感染防禦力を低下させるものであり, 可及的にこれらの機能を温存させる手術手技も基本となるものと考えられる。
    近年優れた薬剤が次々と開発される一方, 嫌気性菌の検出, 同定法を中心とした臨床細菌学の進歩もめざましく, 感染症における嫌気性菌の関与などが明らかとなりつつある1~4)。これらの業績を踏まえての, 抗菌剤のより効果的な投与法は, 合理的な外科手術後の管理と手術成績向上の目的にかなうものであろう。
    かねて, われわれは消化器外科領域における術後創感染の発生状況の調査とCefmetazole (CMZ)の効果について検討5) したが, その結果を踏まえ, 今回はCMZの投与にょる術後の感染予防効果と, 感染症を発症した際の分離菌の状況について検討し, 併せて消化器手術後の創感染に対する化学療法の予防的投与の意義について考察したい。感染症における嫌気性菌の関与などが明らかとなりつつある1~4)。これらの業績を踏まえての, 抗菌剤のより効果的な投与法は, 合理的な外科手術後の管理と手術成績向上の目的にかなうものであろう。
    かねて, われわれは消化器外科領域における術後創感染の発生状況の調査とCefmetazole (CMZ)の効果について検討5) したが, その結果を踏まえ, 今回はCMZの投与にょる術後の感染予防効果と, 感染症を発症した際の分離菌の状況について検討し, 併せて消化器手術後の創感染に対する化学療法の予防的投与の意義について考察したい。
  • 加来 浩平, 石田 陽治, 井上 昌光, 矢賀 健, 吉崎 美樹, 篠原 健次, 兼子 俊男
    1984 年 37 巻 2 号 p. 256-260
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    急性白血病や悪性リンパ腫等の造血器悪性腫瘍に対する化学療法の進歩は目覚しいものがあるが, それに伴つて感染症や出血傾向に対する補助療法の重要性はますます増大しつつある。特に顆粒球減少に伴う感染症は容易に重症化し, しばしば致命的になる1, 2) ため感染症の早期から殺菌的抗生剤による強力な化学療法が必要である3)。我々は血液疾患を主とした重篤な基礎疾患に合併した重症感染症に対して, いわゆる第3世代のセフェム系抗生剤であるCefoperazone (以下CPZと略す) による化学療法を試みたので報告する。
  • 渡部 洋三, 権田 厚文, 城所 仂
    1984 年 37 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephamycin系新抗生剤Cefbuperazone (T-1982, 以下CBPZと略す)は, 図1に示す化学構造を有し, 各種感染症の起炎菌に対し広い抗菌スペクトラムを持っている。特にSerrat, Citrobacter, Enterobacter, Indole (+) Proteus, Bacteroidesなどに対しては従来のCephem系抗生剤に比べて優れた抗菌力を示すことが特徴となっている。更にβ-Lactamaseに強い抵抗性を有し, 殺菌的に作用することが報告されている1, 2)。又, 本薬剤は外科領域における腹膜炎, 術後感染症などに優れた臨床成績を示し, in vitroの成績以上にin vitro効果を発揮すると言われている。そこで, 腹腔内感染症に対する化学療法の理論的裏付として, 本剤投与後の腹腔内滲出液中への移行性を検討し, 同時に薬動力学的解析も行い興味ある知見を得たので報告する。なお, 本試験期間は昭和57年7月から11月までである。
  • 第3世代抗生剤との比較
    浅利 誠志, 堀川 晶行, 塚本 寿子, 清水 洋子, 甲田 一馬, 林 長蔵, 宮井 潔
    1984 年 37 巻 2 号 p. 267-278
    発行日: 1984/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    広域抗菌スペクトルを有するCephalosporin系抗生剤及びCephamycin系抗生剤が臨床的に汎用されるにつれ, 多剤耐性株が増加しつつある。そこで, これら耐性株に対し抗菌力の強い抗生剤を開発するという目的でCefotaxime (クラフォラン®, CTX) が, ドイッヘキスト社とフランスルセル社で共同開発された。CTXは, 従来のCephalosporin系抗生剤に比べβ-Lactamaseに対する安定性が高く, Cephalosporin系抗生剤には感受性のなかったIndole (+) Proteus, Serratia, Enierobacterなどにも優れた抗菌力を示し, 更にHaemophilusinfluenzae, Pseudomonas aeruginosaに対しても抗菌力を有し, その抗菌作用は殺菌的である1-3)。
    今回, 我々は新鮮臨床分離株を用い, CTXに対する感受性傾向を他の第3世代の抗生剤と比較検討し, 若干の知見を得たので報告する。
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