The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
セフェム系抗生物質セフォチァムの免疫原性に関する検討
村中 正治鈴木 修二川路 尚徳荒川 睦
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 37 巻 2 号 p. 198-208

詳細
抄録

合成ペニシリン系抗生剤, 合成セフェム系抗生剤の開発につれて, 多数のβ-ラクタム系抗生剤が, 日常診療に使用されるに至つた。
これらの抗生剤は, いずれも, ベンジルペニシリン(PCG)と同様, β-ラクタム環を通じて容易に蛋白質と共有結合しうる。アナフィラキシーショックをはじめ, アレルギー反応を引き起す抗原物質となり得る可能性は想定し得る。
我が国では, β-ラクタム系抗生剤の投与に当つては, アナフィラキシー反応の予知のため, 各製剤の300μg/mlの生理食塩溶液を用いた皮内テストを実施することが指示されている。しかし, このテスト溶液の濃度あるいは判定基準などはPCGについての経験をもとに類推されたものである1)。PCGの皮内テストの方法についても, 諸外国のそれと必ずしも一致していない2~6)。
一般に, 薬物によるアナフィラキシー反応の予知法としては, プリックテストを含めた皮内テストが最も簡便且つ優れているとされている。しかし, 個々の薬物の溶解性, 皮膚刺激作用, あるいはその分子量などは一様ではない。各製剤のアナフィラキシー反応を引き起す抗原性の強弱に関する基礎データを得るためには, 各製剤の各種の濃度の溶解液を用いて, 正常のヒトを対象とした皮内テストを実施し, そのデータに基づいて皮内テスト実施法の基準を定め, その上で, 一定期間各々の製剤の投与を受けた多数の症例について, 投与前後における皮内テスト値の比較を行うことが理論的には必要と言えよう。
筆者の知る限り, かかる基礎データが報告されている合成β-ラクタム系抗生剤は存在していない。
今回, 治療のため新しい合成セフェム系注射用抗生剤セフォチアム(CTM)の投与を受ける多数の症例について, それぞれの受け持ち医師に, あらかじめ定めた一定の基準による反内テストの実施を依頼し, その成績を集めて検討させていただく機会を持つた7)。又, 同テストの陽性例, 及び皮内テストは陰性であつたが, CTM投与後に過敏反応を疑わせる症状が出現した症例から採取した血清について, 抗CTM抗体を測定して過敏反応との関係の検討を試みたので併せて報告する。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top