1984 年 37 巻 2 号 p. 247-255
外科手術後の管理において, 感染症の発生予防と効果的な治療は手術成績を左右する重要な要因である。消化器外科においては, 他の臓器の手術と異なり腸管内常在細菌が存在している部分へ侵襲を加えることとなり, 術後感染症の発生頻度が高く, 起炎菌も腸管内常在菌が起炎菌として検出されることが多い。従つて消化器外科手術においては, 術前, 術中, 術後を通じ生体-細菌-抗菌剤の相互関連性を踏まえた感染予防処置が取られねばならない。手術適応が拡大傾向を示す昨今, これらの手術操作は患者の全身的並びに局所の感染防禦力を低下させるものであり, 可及的にこれらの機能を温存させる手術手技も基本となるものと考えられる。
近年優れた薬剤が次々と開発される一方, 嫌気性菌の検出, 同定法を中心とした臨床細菌学の進歩もめざましく, 感染症における嫌気性菌の関与などが明らかとなりつつある1~4)。これらの業績を踏まえての, 抗菌剤のより効果的な投与法は, 合理的な外科手術後の管理と手術成績向上の目的にかなうものであろう。
かねて, われわれは消化器外科領域における術後創感染の発生状況の調査とCefmetazole (CMZ)の効果について検討5) したが, その結果を踏まえ, 今回はCMZの投与にょる術後の感染予防効果と, 感染症を発症した際の分離菌の状況について検討し, 併せて消化器手術後の創感染に対する化学療法の予防的投与の意義について考察したい。感染症における嫌気性菌の関与などが明らかとなりつつある1~4)。これらの業績を踏まえての, 抗菌剤のより効果的な投与法は, 合理的な外科手術後の管理と手術成績向上の目的にかなうものであろう。
かねて, われわれは消化器外科領域における術後創感染の発生状況の調査とCefmetazole (CMZ)の効果について検討5) したが, その結果を踏まえ, 今回はCMZの投与にょる術後の感染予防効果と, 感染症を発症した際の分離菌の状況について検討し, 併せて消化器手術後の創感染に対する化学療法の予防的投与の意義について考察したい。