The Japanese Journal of Antibiotics
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注射液採取時における問題点
特にアンプルとバイアルでの差について
岡田 敬司大越 正秋河村 信夫
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1985 年 38 巻 10 号 p. 2815-2820

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抄録

近年, 本邦において使用されている各種薬剤の中で注射用製剤としてのバイアル製剤及びアンプル製剤の数は非常に多くその容量も千差万別である。
上記薬剤の中で特に容量の少ないもの, あるいは力価がmg単位のものの注射用シリンジへの採取については, ある程度厳格に実施しないと, 血中濃度, 組織内移行, 尿中濃度が予想されたより低い濃度しか得られず, 満足のいく結果が得られない場合が考えられる。常日頃, 病棟で各種薬剤採取後のバイアル, アンプル中に溶解液の一部 (薬剤を含む) が残存するのを我々は見ており, その意味を改めて考えてみる必要が十分あると思われる。
今回我々は対象薬として全投与力価がmg単位で, 比較的簡単に体内移行が測定できる薬剤1~4)としてアミノ配糖体系抗生物質のTobramycin (TOB) を選び, バイアルとアンプルの両製剤をCross-over法で健康成人志願者8名に投与し, 血中濃度を測定した。更にアンプル及びバイアル内の残存薬剤量を測定し, 採取者の手技の差異による影響を検討し興味ある結果を得たので報告する。
以上TOB 90mgのバイアル製剤及びアンプル製剤を使用し, Cross-over法にて血中濃度の推移を検討し, 更に採取量の人為的差異について検討した。血中濃度については最高血中濃度だけに有意の差が認められたが, それ以外の時間でもアンプル群が高い血中濃度を示すように思われた。Tmax及びAUCには有意の差はなかつた。次に人為的差異に関しては, むしろ経験豊かな看護婦の方が処理速度が早いためか, 採取量が少ない傾向が認められた。このことは他の注射用製剤の場合にもあてはまると思われ, 注意が必要と考えられた。

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