The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
38 巻, 10 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • 宍戸 春美, 前澤 功, 松本 慶蔵, 山本 真志, 山口 東太郎, 永武 毅, 佐久間 由光, 宇塚 良夫
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2699-2715
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aspoxicillin (ASPC, TA-058) 1) について, 臨床治験の第一段階として, 健康成人男子志願者に対する安全性と体内動態を検討した。ASPCの安全性を確認するために1g×1回/日を2日間投与後, 直ちに諸検査を実施し異常が認められないことを確認した上で, 更に1g×2回1日を3日間連続投与し, 試験終了後4週間にわたり追跡検査を実施した (Group A)。前記試験で安全性が確められた後, 1g×2回/日を5日間連続投与し, Group Aと同様の追跡検査を実施した (Group B)。
    ASPCの吸収・排泄を検討するために, まず連続投与で, ASPC 1gを8-10回投与して, 本剤の蓄積性を調べ (Group AとGroup B), その後, 単回投与で1gのASPC及びPiperacillin (PIPC) を筋注, 静注及び点滴静注して, Cross-over法で両剤の吸収・排泄を比較し, 更にASPCの点滴静注における用量依存性を調べた。
  • Cefaclor通常製剤との二重盲検比較試験
    岩井 昭彦, 政田 明徳, 犬飼 昭夫, 河辺 章夫, 水野 章, 沢田 晃, 譜久原 朝勝, 岡田 英也, 小谷 彦蔵, 福住 弘雄, 鈴 ...
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2716-2734
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefaclor (以下CCLと略す) は経口用Cephem系抗生物質であり, グラム陽性菌及びグラム陰性菌に幅広い抗菌スペクトラムを有すると共に, 強い抗菌力を有している。本剤の通常製剤 (商品名ケフラール (R)) はすでに市販されており, 各科領域の感染症に広く使用されている。
    S6472はCCLの速溶性顆粒と腸溶性顆粒をCCL力価比4:6に配合したもので, これにより血中濃度が持続性となるので, 朝, 夕食後の1日2回投与で十分効果が期待される新しいCCLの持続性製剤である1)。
    我々は本剤の皮膚軟部組織感染症に対する一般臨床試験を多施設共同研究にて行い, その有効性, 安全性, 有用性を確認し, すでに報告した2, 3)。
    今回は本剤の皮膚軟部組織感染症に対する有効性, 安全性及び有用性を客観的に評価するため, すでに市販され皮膚軟部組織感染症に汎用されているCCL通常製剤 (カプセル) を対照薬とした二重盲検比較試験を実施したので, その成績について報告する。
  • Cephalexinを対照薬とした二重盲検比較試験
    柯 昭仁, 藤井 明, 安室 朝三, 大島 秀夫, 大前 博志, 斎藤 博, 山崎 浩, 永田 均, 石神 襄次, 近藤 兼安, 寺杣 一徳 ...
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2735-2769
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefaclor (CCL)[化学名3-Chloro-7-D-(2-phenylglycinamido)-3-cephem-4-carboxylic acid]は, 米国Eli Lilly社で開発されたセフェム系経口抗生物質であり, その通常製剤 (商品名ケフラール) はすでに市販され, 広く各科細菌感染症に臨床使用されている。本剤の化学構造式上の特徴はFig. 1に示すように7-Aminocephalos-poranic acidの3位に直接Cl原子を結合させた点にあり, Cephalexin (CEX) に比べ, 抗菌性が優れ, 特に短時間で強い殺菌効果を示すとされている1)。CCL通常製剤は, 経口投与により消化管から速やかに吸収され, 投与後6時間目までに約70%が尿中に排泄され, 1日3回投与が標準用法とされている。S6472は新しくCCLの持続性製剤として開発されたものであり, 胃溶性及び腸溶性Coatingを施した顆粒が力価比4:6に配合されている。前老は胃中で直ちに崩壊し速やかに腸に移行し, 吸収されるが, 後者は徐々に腸に移行してそこで崩壊し吸収されることから, 通常製剤に比べ有効血中濃度を長く持続させることができ, 1日朝夕食後2回投与で十分とされている。我々は本剤の尿路感染症に対する一般臨床試験を行い, その有用性についてはすでに報告した2)。
    今回, CCL通常製剤 (1日3回投与) 及びS6472 (1日2回投与) の複雑性尿路感染症に対する有用性を客観的に評価する目的で, CEX通常製剤 (1日4回投与) を対照薬剤とした3群比較の二重盲検比較試験を行ったので, その成績を報告する。
  • 山下 文雄, 富永 薫, 石本 耕治, 田中 耕一, 冨田 尚文, 久田 直樹, 本廣 孝, 藤本 保, 古賀 達彦, 西山 亨, 島田 康 ...
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2770-2796
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftriaxone (Ro 13-9904, CTRX) はスイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社で開発された新しい注射用Cephem系抗生物質1) であり, その化学名は(Z)-(6R, 7R)-7-[2-(2-Amino-4-thiazolyl)-2-(methoxyimino) acetamido]-3-{[(2, 5-dihydro-6-hydroxy-2-methyl-5-oxo-as-triazin-3-yl) thio]methyl}-8-oxo-5-thia-1-azabicyclo-[4.2.0] oct-2-ene-2-carboxylic acid disodium saltで, Fig. 1に示した構造式を持ち, グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対し広域抗菌スペクトルを有するが, 特にグラム陰性桿菌のHaemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Indole陽性Proteus, Serratia marcescensなどに強い抗菌力1, 2, 6.3, 10)を示し, β-Lactamaseに安定1-3, 6) で, 本剤を成人に静注で投与した場合の半減期は既存のCephem系注射剤に比較し, 非常に長い特徴を有しており4, 5), 本邦ではすでに1982年の第29回日本化学療法学会東日本支部総会において新薬シンポジウムにとりあげられ, その基礎的検討及び成人での臨床評価が論じられた6)が, 本剤をヒトに投与した場合の糞便内細菌叢に対する影響を検索した成績はない (Fig. 1)。
    そこで成人にCTRXを投与し, 糞便内細菌叢の変動を観察, 本剤の糞便中濃度を測定, 分離株のCTRX, Cefazolin (CEZ), Cefmetazole (CMZ), Cefotaxime (CTX) に対する薬剤感受性試験を実施すると共に副作用を検討したので, その成績を報告する。
  • (Clavulanic acid-Amoxicillin) に対する感受性
    出口 浩一, 佐藤 久美子, 横田 のぞみ, 池上 亮祐, 小田 清次, 田中 節子, 深山 成美, 福本 寅雄, 松本 好弘, 西村 由紀 ...
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2797-2808
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    BRL25000は英国ビーチャム社によって開発されたβ-Lactamase阻害剤であるClavulanic acid (CVA) とAmoxicillin (AMPC) を1:2の割合で配合した経口抗菌剤 (以下経口剤) である。本剤のわが国における検討は1980年から2相試験, 1982年からは3相試験が開始され, 1982年の第29回日本化学療法学会新薬シンポジウムにおいて有用性が確認された1)。
    BRL25000のβ-Lactamaseに対する阻害作用はCVAが細菌の産生するβ-Lactamaseを不可逆的に不活化するためであるとされているが, その阻害作用 (β-Lactamase inhibitory effect) はオールマイティなものではなく, Penicillinase (以下PCase), 特にTEM型のβ-Lactamaseに強い阻害作用を発揮するが, Cephalosporinase (以下CEPase) に対する阻害作用は弱い1-3)。私たちのこれまでの検討によれば, 外来を中心とした日常診療レベルの気道系感染症の主な起炎菌は, Staphylococcus aures, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Branhamella Catarrholis, Klebsiella pneumoniaeである4)。これらの菌種のうちS. aureus, H. influenzae, B. catarrhalis, k. pneumoniaeは, β-Lactamase産生株が増加していて5, 10, 14), なお且つそのβ-Lactamaseは主としてPCaseである3)。
    上述したようなBRL25000の抗菌作用, 起炎菌の特徴からして, BRL25000は日常診療レベルの気道系感染症の治療に期待が持てる。そこで, 外来の気道系感染症由来新鮮臨床分離株を用いてBRL 25000, Amoxicillin, Cefaclor, Cephalexin, Cefadroxil, Cefroxadineの抗菌力(MIC)とβ-Lactamase活性を測定したところ, BRL 25000はβ-Lactamase産生株に対して優れた抗菌力を示した。以下で詳細を報告する。
  • Cefmenoxime投与法の検討
    森崎 伸之, 千村 哲朗
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2809-2814
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域において, 帝王切開術と腹式単純子宮全摘出術は最も頻度の高い手術の一つであるが, その術後感染予防に対する抗生物質の選択と投与法は一定ではない。
    現在, 一般的には術後投与法が行われているが, 腹式単純子宮摘出術は準無菌的手術に属し, 腔内常在菌の術中睦断端部から骨盤腔内への侵入と, 開腹部位からのContaminationの危険性がある。従って, 術前後の消毒法の問題や手術手技 (特に腔断端の処理法) などの影響が大きいと言えよう。
    一方, 抗生物質の種類と投与法の影響は, 術後の発熱パターンに反映されるとする考え方は, Fever indexやFever morbidityの比較から検討されてきたが, 今回われわれはCefmenoxime (CMX) の感染予防効果を投与法の比較で検討したので報告したい。
  • 特にアンプルとバイアルでの差について
    岡田 敬司, 大越 正秋, 河村 信夫
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2815-2820
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 本邦において使用されている各種薬剤の中で注射用製剤としてのバイアル製剤及びアンプル製剤の数は非常に多くその容量も千差万別である。
    上記薬剤の中で特に容量の少ないもの, あるいは力価がmg単位のものの注射用シリンジへの採取については, ある程度厳格に実施しないと, 血中濃度, 組織内移行, 尿中濃度が予想されたより低い濃度しか得られず, 満足のいく結果が得られない場合が考えられる。常日頃, 病棟で各種薬剤採取後のバイアル, アンプル中に溶解液の一部 (薬剤を含む) が残存するのを我々は見ており, その意味を改めて考えてみる必要が十分あると思われる。
    今回我々は対象薬として全投与力価がmg単位で, 比較的簡単に体内移行が測定できる薬剤1~4)としてアミノ配糖体系抗生物質のTobramycin (TOB) を選び, バイアルとアンプルの両製剤をCross-over法で健康成人志願者8名に投与し, 血中濃度を測定した。更にアンプル及びバイアル内の残存薬剤量を測定し, 採取者の手技の差異による影響を検討し興味ある結果を得たので報告する。
    以上TOB 90mgのバイアル製剤及びアンプル製剤を使用し, Cross-over法にて血中濃度の推移を検討し, 更に採取量の人為的差異について検討した。血中濃度については最高血中濃度だけに有意の差が認められたが, それ以外の時間でもアンプル群が高い血中濃度を示すように思われた。Tmax及びAUCには有意の差はなかつた。次に人為的差異に関しては, むしろ経験豊かな看護婦の方が処理速度が早いためか, 採取量が少ない傾向が認められた。このことは他の注射用製剤の場合にもあてはまると思われ, 注意が必要と考えられた。
  • 西崎 昭, 山田 秀雄, 杉山 博子, 青山 久, 鈴木 生世, 尾熊 隆嘉, 井沢 洋平
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2821-2826
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    熟傷患者の創面感染対策として, 抗生物質の全身投与がされる。全身投与された抗生物質が創面にどの程度移行するかに関しての報告は少ない。そこで今回著者らは, Oxacepheln系抗生物質Latamoxef (LMOX) を1時間点滴静注し, LMOXの熱傷創面への移行性を水疱液をモデルにして調べた。
    又, 水疱液中, 血清中のLMOXの経時的濃度測定値を用いて, 薬動力学的解析を行い, 若干の知見を得たので報告する。
  • 橋本 伊久雄, 三上 二郎, 清水 矩基雄, 吉本 正典, 上田 直紀, 中村 孝, 沢田 康夫, 中西 昌美
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2827-2837
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生剤の進歩発達, 普及によつて, 近年における感染症起炎菌の様相は大きく変化してきている。腹部一般外科にて多く扱われる感染症である急性腹膜炎, 胆道系感染症においても, ブドウ球菌などのグラム陽性球菌群は減少し, 大腸菌, 肺炎桿菌などのグラム陰性桿菌群が増加し, 更に老齢に伴う免疫能などの抵抗力を減じた患老では, 常在菌あるいは弱毒菌と呼ばれるセラチア属, プロテウス属, 緑膿菌などの細菌群による感染の増加も指摘され, しかも単一の菌ではなく, これらの菌の混在した複数菌の感染が増加していると言われている。一方, 今日広く使用されているPenicillin系並びにCephem系抗生剤に耐性を有する大腸菌及び肺炎桿菌による感染症が増加し, 臨床上の大きな問題となつてきている。この耐性の原因は耐性菌の有している加水分解酵素β-Lactamaseによるとされており, 現今の抗生剤の開発は, このβ-Lactamaseに抵抗性を有し, グラム陰性桿菌群に有効な薬剤に主力がおかれており, 特にCephem系抗生剤の進歩は目ざましく, 抗β-Lactamase性と, 特にグラム陰性桿菌群に対する強い抗菌力を兼ね備え, 有効性を多くの菌種に拡げた第3世代と呼ばれるCefotaxime, Cefoperazone (CPZ), Ceftizoxime, Latamoxef (LMOX), Cefmenoxime, Cefotetan, Cefpiramide, Ceftazidime, Cefminox, Ceftriaxoneなどが開発され, その一部はすでに市販されて一般に使用されるに至つている。しかしこれらのいわゆる第3世代Cephem系抗生剤も, グラム陰性菌特に緑膿菌に対する抗菌力は不充分とされ, β-Lactamaseによる加水分解に対する安定性も問題が残されている。一方, Aminoglycoside系抗生剤も, グラム陰性菌, 特に緑膿菌に対して強い抗菌力を示すものが多いが, 聴器及び腎毒性に問題があるとされている1, 2)。
    米国Squibb医学研究所において, β-Lactam系抗生剤の整理統合研究のためにβ-Lactam環を核として組織的な研究を行つた際, 植物寄生の好気性真性細菌からグラム陰性菌に抗菌力を有し, β-Lactamaseに非常に安定なβ-Lactam単環を有する物質を発見し, これをモデルとしてL-Threonineから全合成された薬剤がAztreonam (AZT)である3)。著者らは先にAZTの1g Vial剤を使用して, 43例の外科的感染症の治療を行い, その有用性を検討すると共に, 更に28例の手術時に術前に本剤1gを静注し術中採取した各種体液, 組織内濃度をEscherfchia coli NIHJ JC-2を検定菌とするBioassay法により測定して, グラム陰性桿菌による腹部外科的疾患に極めて有用であることを認め報告した13)。
    一般に感染症にて入院している患者の治療に抗生剤を投与する際には, 5%ブドウ糖液あるいはLactated RINGER液などの輸液に混ぜて点滴静注を施行し, 1日2回の投与を行うことが多い。他の薬剤との混合注射をさけるためには抗生剤単独の点滴静注用製剤が望ましく, 一部の抗生剤で点滴静注用のBottle剤が開発, 使用されている。今回AZTの点滴静注用Bottle剤の提供を受けたので, 本剤を使用して若干の外科系感染症の治療を施行し, 有用性を認めたので報告する.
  • 目黒 英典, 益子 仁, 藤井 良知, 篠崎 立彦
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2838-2848
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児の細菌感染症に対する抗生物質療法は経口あるいは注射 (主として静注) が現在は主体をなしている. 注射剤の有用性は確立されているが, 乳幼児では静注を続けることは患者の苦痛も多く管理上も繁雑であり何らかの改善が望まれるところである. 京都薬品 (株) では抗生物質の直腸内投与に適した基剤 (ウィテプゾール) を用いて住友化学工業 (株) との共同によりまずAmpicillin (ABPC) 坐剤を開発した.小児における臨床試験が行われ, 経口剤に比較して2~3倍高い血中濃度を得ることに成功し, 臨床的にも期待どおりの効果を認めた1~4). 次いで京都薬品 (株) と藤沢薬品工業 (株) の共同により, 新Cephem系 (CEPs) 抗生物質Ceftizoxime (CZX) の坐剤化が行われた (CZX-S). CZXは第5群のCEPsに分類される抗菌力,抗菌範囲, β-Lactamaseに対する安定性共に極めて優れた抗生物質で5), 注射剤はすでに市販され広く使用されている。CZX-Sの実用化がなれば,注射によらない強力な抗生物質として従来の経口剤にない応用分野が開かれる可能性がある。我々はCZX-S研究会の一員として, 小児科領域における本剤の安全性, 有用性及び薬物動態について検討したので報告する。
  • 中村 弘典, 堀 誠, 杉田 守正, 横井 茂夫, 黒須 義宇, 豊永 義清, 落合 幸勝
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2849-2862
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime (CZX) は, Aminothiazolyl-oxyimino-acetamido cephalosporin (ATOIC)といわれるものの1つであるが, 7-Aminocephalosporanic acidの3位に置換基がないのが他の薬剤と異なつている。本剤はPseudomonas aeruginosaには若干抗菌力は弱いものの, その他のグラム陰性桿菌及び連鎖球菌の発育を1μg/mlで阻止し得る優れた抗菌力を示し1), 小児科領域においても, すでに化膿性髄膜炎, 敗血症を始めとする重症感染症の初期治療薬として使用されている。
    小児科領域の細菌感染症の治療では, 外来においては, 静脈内及び筋肉内投与は肉体的侵襲も強く, 又, 連続投与も不可能である点から投与しにくい。一般に行われている経口投与は, 腸管からの吸収が悪く, 外来診療において起因菌として多いStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae及びEscherichia coli等で耐性菌が増加している現在2, 3), それらのMICを上回る血中濃度を維持するのは非常に困難である。又, 入院治療を行う場合でも, 重症心身障害児, 脳性麻痺児のような背景がある場合, 筋緊張が強かつたり過動が著明であつたり, 痙攣が強かつたりし, 静脈内投与が不可能な場合もあり, 血中濃度を注射剤のそれに近づけられる投与方法についての開発が望まれ, 坐剤での検討が行われたのである。現在まで, 抗生物質坐剤は吸収が悪く, 経口剤の血中濃度推移にも及ぼず, 頻用するに至つていなかつたが, 基剤にカプリン酸ナトリウムを添加することにより, 吸収が非常に優れることが判明し, すでにAmpicillin (ABPC) 坐剤4)が先に開発された。CZX坐剤 (CZX-S) も同様に, 基剤にカプリン酸ナトリウムが添加されており, ABPC坐剤では治療が困難である入院を要する比較的重症の感染症にも, その抗菌スペクトラムが広いことから, 治療が可能になると思われる。
    今回, 我々はCZX-Sを使用する機会を得たので, 本剤について血中濃度等の基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したのでそれらの成績について報告する。
  • 成田 章, 佐藤 肇, 近岡 秀次郎, 鈴木 博之, 田添 克衛, 中澤 進一, 岡 秀, 中澤 進, 中田 義雄
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2863-2876
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生剤の坐剤としての投与法はMacrolide系製剤で一時使用されたこともあつたが, 使用時の吸収が不良で血清中濃度も低く臨床効果に疑問な面が多かつた1)。最近Ampicillin (ABPC) 坐剤で同量内服時以上の血中濃度の得られる新製剤が開発されるようになり, 内服, 筋注類似の臨床効果が期待できるようになつた2)。
    今回, 従来注射用として使用されてきたCephem系抗生剤Ceftizoxime (CZX, Fig. 1)3)の坐剤 (CZX-S) が開発され, 小児科領域における一連の基礎的, 臨床的検討を行うことができたので現在までの成果について報告する。
  • 秋田 博伸, 井原 正博, 小佐 野満, 岩田 敏, 老川 忠雄, 村井 孝安, 佐藤 吉壮
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2877-2888
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    感染症治療における抗生物質の使用は, 通常感染症の種類, 重症度, 他の要因により注射あるいは内服の経路が選択され行われている。しかし, 一般に行われている経口投与では腸管からの吸収が悪く, 又, 特に小児科領域では静脈内投与が困難な症例も少なくなく, 血中濃度を注射剤のそれに近づける投与方法の開発が望まれていた。その投与方法の一つとして直腸内投与があげられるが, 従来の抗生物質坐剤は吸収が悪く, 改良が期待されていた。Ceftizoxime坐剤 (CZX-S) は直腸内投与により確実に吸収され, 且つ刺激性が少なく, 治療に十分な強い抗菌力,抗菌スペクトラムを有する1)といつた条件を備えた藤沢薬品工業株式会社と京都薬品工業株式会社で新たに開発された坐剤である。今回, 我々は本剤の小児科領域における吸収・排泄などの基礎的検討及び臨床的検討を行う機会を得たので報告する。
  • 広田 曄子, 砂川 慶介, 斎藤 伸夫, 石塚 祐吾
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2889-2895
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    感染症の治療の手段としての抗生剤は, その抗菌力の増強, 抗菌スペクトラムの拡大, β-Lactamaseに対する安定性の強化等目覚ましい進歩をとげている. なかでもいわゆる第3世代のセフニム剤はグラム陰性菌に対して強い抗菌力を示し, 従来難治性であつた細菌による感染症の治療にも優れた効果を発揮している。一方, 外来における小児の感染症の治療においては, 服薬の拒否や, 時に小児の感染症に伴う嘔吐の問題から抗生剤の経口的投与が不十分な症例がしばしばあり, 筋注は局所の副作用の面から, 静注は外来での処置が困難であり, 且つ投与回数の面から不可能なことが多く, 新しい投与経路による抗生剤の投与が望まれる症例に遭遇する。
    この問題を解決するために基剤にカプリン酸ナトリウムを用いたいわゆる第3世代のセフェム剤Ceftizoxime (CZX) の坐剤 (CZX-S) が開発され1), 臨床例に使用する機会を得たのでその結果を報告する。
  • 早川 文雄, 久野 邦義, 屋冨祖 正光, 中島 佐智恵, 袴田 享, 中島 崇博, 宮地 幸紀
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2897-2902
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    セフチゾキシム坐剤 (CZX-S) は, 藤沢薬品工業 (株) と京都薬品工業 (株) によつて協同開発された新しい抗生物質坐剤で, 坐剤1個中にセフチゾキシム (CZX) 125mg (力価) 又は250mg (力価) を含有する。CZX-Sは, 基剤としてカプリン酸ナトリウムを含有するウィテプソールを使用することにより, 局所の刺激が少なく吸収が優れ, 良好な血中濃度の上昇を得ることができた。
    今回我々は, CZX-Sを小児期感染症に使用し, その有用性につき検討する機会を得たので報告する。
  • 溝口 文子, 中村 はるひ, 片山 道弘, 柴田 元博, 岩井 直一, 種田 陽一
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2903-2916
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime坐剤 (CZX-S) は, 藤沢薬品工業 (株) と京都薬品工業 (株) との共同で開発されたCeftizoxime (CZX) 含有の坐剤である1)。
    従来から, 感染症の治療に際しては, 疾患の種類, 重症度, 患者側の種々の要因により主として経口剤あるいは注射剤が選択され, 坐剤による治療はまれであつた。この理由としては, 直腸内投与によつて確実に吸収され, しかも刺激性が少なく, 幅広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力を有する抗生物質坐剤の開発がなされていないことによると考えられる。ところで, 日常の診療では, 静注の困難な症例や, 悪心, 嘔吐あるいは服用忌避等のために経口剤の服用が困難な症例にしばしば遭遇する。
    本剤は, 基剤の中にカプリン酸ナトリウムを加えることにより, CZXの吸収を良くし, しかも刺激性が少なく, 排出を少なくすることに成功した坐剤である1)。CZXは, 周知のようにグラム陽性菌並びに陰性菌に幅広い抗菌スペクトラムを有し, 特にグラム陰性菌に対する抗菌力は優れており, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Haemophilus influenzaeに対してはもちろん, Indole陽性Proteus, Serratia, Enterobacterr, Citrobacter, Bacteroides fragilis等にも優れているのが特徴である2)。従つて, 本剤は, CZXが適応となるような症例で, 種々の理由で内服できない場合や, 静注が困難な場合には極めて有用であり, 期待されるところが大きいと考えられる。
    今回, 我々は小児科領域における本剤の吸収, 排泄について検討すると共に, 臨床的検討を行つたので, その成績を報告する。なお, 試験期間は昭和57年12月から昭和59年2月までの15ヵ月間である。
  • 酒徳 浩之, 神谷 斉, 児玉 公子, 井戸 正流, 桜井 実, 曽野 玲子, 清水 信, 川崎 洋子, 川村 芳秋
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2917-2924
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime坐剤 (CZX-S) は, 藤沢薬品工業 (株) と京都薬品工業 (株) によつて共同開発されたCeftizoxime (CZX) 含有坐剤で, 現在までの検討では直腸刺激性も軽微で, 吸収性もよく臨床応用が可能な抗生物質坐剤であることが基礎的研究1) から明らかにされている。今回我々も本剤の基礎的及び臨床的検討を行う機会を得たので, その成績について報告する。
  • 田吹 和雄, 高木 道生, 西村 忠史, 高島 俊夫
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2925-2931
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 新しいβ-Lactam系抗生物質の開発はめざましく, すでに多くのものは実際に臨床使用され, その有用性は高く評価されている1)。
    さて, 抗生物質の投与経路としては, 静脈内注射, 筋肉内注射, 経口投与がそれぞれの病態に応じて行われてきた。しかし, 小児においては, 静脈確保の困難さ, 筋注による筋拘縮症, 内服拒否などの問題があるため, 他の投与経路の必要性も考えられ, 従来から抗生物質含有坐剤の検討も行われてきた。しかし, 吸収性, 局所刺激性などに難点があり実用化も難しかつたが, すでにErythromycin坐剤があり, 最近ではAmpicillin (ABPC) 坐剤が開発されている。
    この度, 藤沢薬品工業株式会社及び京都薬品工業株式会社は, カプリン酸ナトリウム含有のウィテプゾールを基剤として吸収性を高めたCeftizoxime坐剤 (CZX-S) を開発した。
    著者らも本剤について基礎的及び臨床的検討を行つたので, その成績について述べる。
  • 西岡 敦子, 小橋 秀彰, 大原 克明, 宮本 直紀, 岡本 喬
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2932-2942
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児における感染症治療では, 悪心, 嘔吐あるいは患児の服薬忌避等のため正確な経口剤の服用が不可能であつたり, 注射剤においても筋拘縮症の他, 注射に対する過剰な不安, 恐怖など多くの欠点を持つている。このような投与方法による諸問題を解決するものとして, 抗生物質坐剤の投与が有用と考えられるが, 現在市販されているErythromycin (EM) 坐剤は抗菌力, 吸収量が十分でなく, 優れた抗菌力, 抗菌スペクトルを有する抗生物質坐剤の開発が強く望まれていた。
    今度, 京都薬品工業K. K., 藤沢薬品工業K. K. 両社によりCeftizoxime 125mg又は250mg (力価) を含有するCeftizoxime坐剤 (CZX-S) が開発された。
    Ceftizoxime (CZX) は, 藤沢薬品中央研究所で創製されたセファロスポリン系抗生剤であり, Fig. 1に示すように7-アミノセファロスポラン酸の3位に置換基がない点が, 他剤と構造的に全く異なる1)。本剤はEscheziohia coli, Klebsiella, Proteus mirabilisなどに対してはもちろん, 従来のセファロスポリン剤では抗菌力が弱かつたHaemophilus influenxae, インドール陽性Proteus, Serrtia, Enterobacter Citrobocterなどのグラム陰性桿菌やBacteroides fragilisをはじめとする嫌気性菌に対しても強い抗菌力を示す。又, 諸種細菌の産生するβ-Lactamaseに対して非常に安定で, 多剤耐性菌に対しても感受性菌と同様に強い抗菌力を示し1), 注射剤として広く用いられている。CZX-SはCZXの優れた抗菌力及び坐剤製剤としてのメリットを有し, 又, 直腸吸収にも優れる薬剤であることから2), 本剤の臨床利用にかける期待は大きい。
    今回, 私たちはCZX-Sを小児の細菌感染症に使用する機会を得たので, ここに報告する。
  • 古川 正強, 岡田 隆滋
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2943-2951
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime坐剤(CZX-S)は, 藤沢薬品工業 (株) 及び京都薬品工業 (株) の共同開発による新規抗生物質坐剤であり, 主薬としていわゆる第3世代Cephalosporin系抗生物質であるCeftizoxime (CZX) を含有する。CZXは周知のとおり, 特にグラム陰性桿菌に対する抗菌力が強く, β-Lactamaseに対しても非常に安定であり, 小児感染症における有用性も十分確認されている1, 2)。又, CZX-Sは直腸におけるCZXの吸収促進のため基剤として, Ampicillin坐剤 (KS-R1) と同様, 脂肪酸ナトリウムを含有するウィテプゾールが使用されており, 良好な吸収効果が得られていることから3), 本剤の小児感染症における有用性は大いに期待されるところである。
    今回われわれは, 種々の理由でCZX-Sによる治療を必要とした乳幼児に本剤を使用し, 体内動態及び有効性, 安全性を検討したので, その成績を報告する。
  • 田中 弘, 鎌田 君代, 増田 昌英, 宮尾 益英, 市岡 隆男, 細田 禎三, 湯浅 安人, 宇山 祐子
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2952-2961
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime坐剤 (CZX-S) は, 十分な抗菌力, 抗菌スペクトル及び易吸収性を有する抗生物質坐剤として京都薬品及び藤沢薬品工業により開発されたセファロスポリン系抗生物質としては最初の坐剤であり, 1個中にCeftizoxime (CZX) 125mg (力価) あるいは250mg (力価) を含有する。
    今回, われわれは小児科領域における細菌感染症患児に本剤を使用する機会を得て, 臨床的検討を行つたので報告する。
  • 森田 英雄, 小倉 英郎, 脇口 宏, 喜多村 勇, 倉光 誠, 森岡 直子, 倉繁 隆信
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2962-2969
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児科領域における感染症治療においては, 抗生剤の投与方法が問題になることが少なくなく, 服薬忌避あるいは嘔吐, 嚥下困難等により経口抗生剤の投与が困難であつたり, 注射剤の適応と考えられる症例においても血管確保困難あるいは体動が激しく持続的な投与ができない場合などがある。このような問題点は, 単に一般の小児感染症患児だけでなく重症心身障害者など肢体不自由児の感染時にも認められ, 治療上苦慮することも多い。これら既存抗生剤の投与方法が問題となる患者には, 投与が簡便で, 抗菌力に優れる抗生物質坐剤の適用が望ましいと考えられ, 長らくその開発が待ち望まれていた。
    この度, 藤沢薬品及び京都薬品工業 (株) が共同開発したCeftizoxime坐剤 (CZX-S) は, 第3世代抗生物質であるCeftizoxime (CZX) を含有する坐剤製剤であり, 新しい感染症治療方法を確立するものとして大いに期待される薬剤である。今回, われわれは, 主に呼吸器感染症に罹患した脳損傷児のうち, 既存の抗生物質療法が困難な症例にCZX-Sを使用する機会を得たのでその成績を報告する。
  • 松田 博, 貴田 嘉一
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2970-2976
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年の抗生物質の開発はめざましく, 経口及び注射用抗生物質の両製剤において, 強力な殺菌力と広域抗菌スペクトルを有する優れた薬剤が創製されている。しかしながら, 小児科領域における感染症治療においては, 患児の服薬拒否あるいは高熱, 嘔気・嘔吐のため, 抗生物質の経口投与が困難な場合が多く, 又, 注射剤を必要とする患児にあつても, 静脈確保が難しいもの及び患者側の都合で入院治療ができないものなど, 治療上の問題点は多い。このようなケースには, 投与が簡便で, 強力な抗菌力を有する抗生物質坐剤の投与が適応となるが, 現在, 市販されているマクロライド系抗生物質のエリスロマイシン坐剤は, 抗菌力及び直腸吸収が十分でないことから, 本剤の用途はごく限られた使用範囲にとどまつている。又, 最近ではアンピシリン (ABPC) 坐剤が, ペニシリン系抗生物質としては初めて開発され, すでに臨床利用が可能となつている。
    この度, 図1に示す化学構造を有する第3世代セファロスポリン系抗生物質であるセフチゾキシム (CZX) が, セファロスポリン系抗生物質としては初めてCZX坐剤 (CZX-S) として開発された。CZXは周知のとおり, 注射用製剤であり, 特にグラム陰性桿菌に対して強い抗菌力を有している1)。CZXの有効性と安全性は多くの感染症について明らかにされており2), 小児科領域においても, 重症感染症を含む各種感染症にその有用性が認められている3~5)。
    以上のとおり, CZX坐剤はCZXの有効性と共に坐剤製剤の有用性を兼ね備えた薬剤として, 臨床適応にかける期待は大きい。今回, CZX坐剤を小児感染症に使用し, 若干の知見を得たので報告する。なお, 試験期間は昭和58年6月から昭和59年2月までの9カ月間である。
  • 川上 晃, 田中 地平, 浦部 大策, 小野 栄一郎, 田中 永一郎, 加藤 栄司, 大滝 悦生, 山下 文雄, 江口 春彦, 坂本 博文, ...
    1985 年 38 巻 10 号 p. 2977-3012
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, β-Lactam系抗生物質の中でもCePhem系薬剤の開発はめざましく, 特にグラム陰性桿菌に優れた抗菌力を有する注射剤が次々と出現している。現在市販されているCeftizoxime (CZX) も同系統の藤井の分類による第5群の薬剤で, 従来Cephalosporin系と言われていた薬剤では抗菌力の弱かったHaemophilus influenzae, インドール陽性Profeus, Serratia sp., Enterobacter sp., Citrobacter sp. 及びBacleroides fragilisなどの嫌気性菌に対しても優れた抗菌力と殺菌作用を有している1-6)。
    CZXの投与方法は現在のところ筋注と静注の2方法があるが, 小児では大腿四頭筋拘縮症のおそれがある筋注での投与は行い難い。そこでAmpicillinの坐剤化7-11) と同様に本剤でも投与方法が簡単で, 既存のCephem系経口剤に劣らない血清中濃度が得られ, 加えて筋注に匹敵するBioavailabilityを有する坐剤の研究が行われていたところ, 京都薬品工業株式会社研究所がその坐剤化に成功し, Ceftizoxime suppository (CZX-S) として藤沢薬品工業株式会社と共同開発を行うことになった。私たちは別稿12) に述べたとおり本剤を成人, 小児に投与し体内動態及び刺激性についての基礎的検討を実施し, 本坐剤が十分に臨床に役立つ成績を得た。そこで, 本剤を小児に投与し吸収の確実性と吸収で個人差がないことをみる目的で単回投与後に1回採血を行い, 血清中濃度を測定すると共に刺激性を観察, 更に, 種々の小児細菌感染症に対する臨床効果, 細菌学的効果, 副作用及び利点について検討したので, その成績を報告する。
  • 山下 文雄, 富永 薫, 田中 耕一, 石本 耕治, 荒巻 雅史, 冨田 尚文, 久田 直樹, 本廣 孝, 藤本 保, 古賀 達彦, 西山 ...
    1985 年 38 巻 10 号 p. 3013-3056
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime (CZX) はCephem系抗生物質の第5群に属する注射剤で, 従来のCephalosporin系薬剤はHaemophilus influenzae, インドール陽性Proteus, Serratia sp., Enterobacter sp., Citrobacter sp., Bacteroides fragilisなどの嫌気性菌に対し抗菌力は弱かつたが, 本剤はこれらの細菌にも優れた抗菌力を有し1~6), 本邦ではすでに発売され3年になる。本剤は種々の細菌感染症に対し筋注, One shot静注あるいは点滴静注で投与されているが, 小児での筋注は他の薬剤と同じく大腿四頭筋拘縮症をきたす恐れがあり, ほとんど筋注での投与はされていない現状である。そこで, 可能ならば筋注に代るBioavailabilityを示す本剤の坐剤の出現が望まれていたところ, 京都薬品工業株式会社研究所が坐剤化に成功し, CZX suppository (CZX-S) として藤沢薬品工業株式会社と共同開発を行うことになつた。しかし, その基礎的資料は動物だけの成績であることから, 私たちはヒトにおける体内動態及び刺激性について検討したのでその成績を報告する (試験期間昭和56年12月~昭和57年10月)。
  • 植田 浩司, 佐藤 忠司, 黒岩 利正
    1985 年 38 巻 10 号 p. 3057-3064
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime sodium坐剤 (CZX-S) は直腸内投与を目的として京都薬品工業 (株) と藤沢薬品工業 (株) で新たに開発されたCeftizoxime (CZX) 含有の坐剤である。CZXはβ-Lactamaseに安定で各種グラム陽性菌及び陰性菌に強い抗菌力を示し, 小児科領域の細菌感染症においてその有効性と安全性が認められているが1, 2), 現在製剤としては注射剤だけである。
    しかし, 小児科領域ではこの種の抗生物質が注射でなく, 坐剤で投与が可能であることの意義は極めて大である。さきに開発されたAmpicillin (ABPC) 坐剤については直腸からのABPCの良好な吸収と安全性がすでに報告されている3, 4)。私たちは本剤CZX-S125 (CZX 125mg力価含有製剤) 及びCZX-S 250 (CZX 250mg力価含有製剤) を小児の感染症に使用し, その臨床効果及び吸収・排泄について検討したのでその成績を報告する。
  • 林 克敏, 冨増 邦夫, 辻 芳郎
    1985 年 38 巻 10 号 p. 3065-3069
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime (CZX) は, 藤沢薬品工業 (株) で開発された第3世代のCephem系抗生物質で, 広い抗菌スペクトルを持ち, 特にグラム陰性菌に対する抗菌力が強く, 従来のCephem系抗生物質に対して感受性の低いCitrobacter, Enterobacter, Serratia及びBacteroidesを含む嫌気性菌などにも優れた抗菌力を示し, その作用は殺菌的であり, β-Lactamaseに安定で, β-Lactamase産生菌にも強い抗菌力を示すことなどがすでに知られており1), 小児科領域の臨床においても有用性が認められてきている2, 3)。この度, 同社と京都薬品工業 (株) で, Ceftizoxime坐剤 (CZX-S) が開発され, 小児科領域の感染症の若干例に使用する機会を得たので, その成績について報告する。
  • 木下 治二, 伊藤 晴夫, 島田 純一郎, 鈴木 賢二, 馬場 駿吉, 丸尾 猛, 森 慶人
    1985 年 38 巻 10 号 p. 3070-3076
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime坐剤 (以下CZX-S) は藤沢薬品工業, 京都薬品工業両社で開発され, いわゆる第3世代のセフェム系抗生物質Ceftizoxime (CZX) にカプリン酸ナトリウムを配合した肛門坐剤である。
    今回我々は本剤を耳鼻咽喉科領域感染症に応用するにあたり, その基礎的並びに臨床的検討を行つたので報告する。
feedback
Top