The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるCeftizoxime坐剤の基礎的・臨床的検討
中村 弘典堀 誠杉田 守正横井 茂夫黒須 義宇豊永 義清落合 幸勝
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1985 年 38 巻 10 号 p. 2849-2862

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抄録

Ceftizoxime (CZX) は, Aminothiazolyl-oxyimino-acetamido cephalosporin (ATOIC)といわれるものの1つであるが, 7-Aminocephalosporanic acidの3位に置換基がないのが他の薬剤と異なつている。本剤はPseudomonas aeruginosaには若干抗菌力は弱いものの, その他のグラム陰性桿菌及び連鎖球菌の発育を1μg/mlで阻止し得る優れた抗菌力を示し1), 小児科領域においても, すでに化膿性髄膜炎, 敗血症を始めとする重症感染症の初期治療薬として使用されている。
小児科領域の細菌感染症の治療では, 外来においては, 静脈内及び筋肉内投与は肉体的侵襲も強く, 又, 連続投与も不可能である点から投与しにくい。一般に行われている経口投与は, 腸管からの吸収が悪く, 外来診療において起因菌として多いStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae及びEscherichia coli等で耐性菌が増加している現在2, 3), それらのMICを上回る血中濃度を維持するのは非常に困難である。又, 入院治療を行う場合でも, 重症心身障害児, 脳性麻痺児のような背景がある場合, 筋緊張が強かつたり過動が著明であつたり, 痙攣が強かつたりし, 静脈内投与が不可能な場合もあり, 血中濃度を注射剤のそれに近づけられる投与方法についての開発が望まれ, 坐剤での検討が行われたのである。現在まで, 抗生物質坐剤は吸収が悪く, 経口剤の血中濃度推移にも及ぼず, 頻用するに至つていなかつたが, 基剤にカプリン酸ナトリウムを添加することにより, 吸収が非常に優れることが判明し, すでにAmpicillin (ABPC) 坐剤4)が先に開発された。CZX坐剤 (CZX-S) も同様に, 基剤にカプリン酸ナトリウムが添加されており, ABPC坐剤では治療が困難である入院を要する比較的重症の感染症にも, その抗菌スペクトラムが広いことから, 治療が可能になると思われる。
今回, 我々はCZX-Sを使用する機会を得たので, 本剤について血中濃度等の基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したのでそれらの成績について報告する。

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