The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるAspoxicillinの臨床的検討
大倉 完悦黒木 茂一春田 恒和小林 裕
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1985 年 38 巻 7 号 p. 1898-1904

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抄録

Aspoxicillin (ASPC, TA-058) は田辺製薬株式会社で開発された, 側鎖にN4-メチル-D-アスパラギンを結合した新注射用Amoxicillin (AMPC) 誘導体で, 血中濃度, 組織内濃度共にAmpicinin (ABPC) より高い上に, 半減期も長く, in vivo効果が優れていると言われる1)。
われわれはすでに本剤について若干の基礎的検討を行い, その成績を報告した2)が, 本剤の抗菌力は, ABPCと比べて, Staphylococcus aureusでは及ばなかつたものの, Escherichia coli, Salmonella sp., Proteus mirabilisではやや優れており, Enterobacter, Citrobacter, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaにも弱いながら感受性を示す株が認められた。更に本剤は, Streptococcus pneumoniaeに対してはABPCより1段階弱いが, Haemophilus infiuenzaeでは3段階程度優れた抗菌力を示し3), しかもABPCより殺菌力が強い4)。
本剤の成人領域における検討成績は, 第30回日本化学療法学会総会において新薬シンポジウムとして討議され, β-Lactamase非産生株による感染症に対するその有効性と安全性が認められた1)。上述の本剤の抗菌力上の特質は, 小児の感染症, 特に呼吸器感染症に対してABPCより適していることを示すものと考えられ, 更に幼若動物における安全性検討の結果問題のないことも証明されたので, 小児科領域研究会で検討が進められた。われわれもその一員として若干の知見を得たので報告する。

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