1985 年 38 巻 7 号 p. 1889-1897
近年, 細菌感染症にみられる起炎菌の種々の変貌は, 臨床的にも新しい抗生物質の開発, 研究における大きな原動力となつている。特にセフェム系抗生物質においてはこれらを考慮し抗菌力の拡大と, β-Lactamase抵抗性に焦点がおかれ, 新たな薬剤の開発, 更にその実用化が進められている。
さて, 今度, 田辺製薬株式会社において開発された側鎖にアミノ酸残基を導入した新しい半合成ペニシリン系抗生物質であるAspoxicillin (ASPC, TA-058)1)はグラム陽性菌, グラム陰性菌に抗菌力を有し, 殺菌作用も比較的強く, 特に, in vitroよりin vivoにおける効果が優れていることが, 各種実験感染症から示されている。
すでに本邦では, 1982年6月の第30回日本化学療法学会総会2)において, 本剤の評価がなされ, 臨床的にもその効果, 安全性が示された。そこで今回, 小児科領域においてもこれら成人の成績の結果から本剤の検討が行われることになり, 著者もその機会を得たので, ここにそれらの成績について述べる。