The Japanese Journal of Antibiotics
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アンピシリン坐剤
藤井 良知
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1986 年 39 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

アンピシリン坐剤 (ヘルペン®坐剤, アンピレクト®坐剤) は住友製薬 (株), 京都薬品工業 (株) により新しく開発された小児用坐剤で, 吸収促進剤としてカプリン酸ナトリウムを添加することにより, 従来から困難とされていた抗生物質の直腸からの吸収を可能とし, 世界で最初に実用化されたβ-ラクタム剤の画期的な新投与経路医薬品である。
アンピシリン (ABPC) は1961年に開発された合成ペニシリン剤で, 広い抗菌スペクトラムと優れた抗菌力により, 多くの感染症に対し有用な抗生物質として長年にわたり汎用され, 特に小児科領域感染症に対しては, 今日なお第1次選択薬剤として用いられている。しかし, ABPCの一般的投与経路として, 注射剤及び経口剤の2種の剤型しかなく, 疼痛及び特に小児においては血管確保の問題等から静注での使用は容易ではなく, 筋注についても四頭筋短縮症の問題から一般的に使用されない。一方, 経口剤については下痢の副作用が多いこと, 又, 通常幼児, 小児においては有熱時, 意識障害, 嘔吐, 悪心あるいは咳嗽, 咽頭痛等がある場合に服用が困難であり, 更に苦味から拒薬する等の欠点を有している。
このような理由で, 注射剤, 経口剤における欠点を補う剤型として, 使用が簡便で, 良好且つ一定の吸収が得られる直腸投与坐剤が宿望され, ABPC坐剤 [ヘルペン坐剤 (住友製薬), アンピレクト坐剤 (京都薬品工業)]が開発された。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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