The Japanese Journal of Antibiotics
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Astromicinの点滴静注法による臨床的検討
第1報内科領域細菌感染症に対して
原 耕平斉藤 厚重野 芳輝河野 茂石川 清文加藤 康道菊地 弘毅山本 朝子平賀 洋明大泉 耕太郎今野 淳林 泉三比 和美押谷 浩小林 宏行嶋田 甚五郎斉藤 篤宮原 正小山 優渡辺 健太郎井川 道春真下 啓明小林 芳夫藤森 一平伊藤 章大久保 隆男鈴木 周雄室橋 光宇小田切 茂樹大山 馨網谷 良一久世 文幸米津 精文安永 幸二郎二木 芳人川根 博司矢木 晋副島 林造山本 真志松本 慶蔵後藤 陽一郎那須 勝
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1986 年 39 巻 11 号 p. 2926-2937

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抄録

Astromicin (以下ASTMと略記) は, 臨床上広く用いられているアミノ配糖体系抗生剤の一つであるが, これはその構成糖にFortamineという新規成分を持つ二糖類で, 従来の系統に属さない新しい抗生剤である。
本剤の各種細菌感染症に対する, 筋注による臨床用法の有用性は確立されている。本剤は, 基礎的にはほぼAmikacin (AMK) と同等の抗菌力及び抗菌スペクトルを持ち1), 腎毒性はAMKよりも低く2), 聴器毒性もアミノ配糖体系抗生剤の中では最も弱い3)。臨床的には, 呼吸器感染症や尿路感染症を対象としたAMKとの比較試験4, 5)などによつて, 各種感染症に対してAMKと同等以上の有効性と安全性を有することが明らかにされている。
アミノ配糖体系抗生剤の臨床用法として, 近年本邦においても, 欧米諸国と同様に, 点滴静注による投与が行われるようになつてきた。その理由としては, 1. 小児や重篤な基礎疾患を有する患者, 特に羸痩や出血傾向が認められる症例が認められる症例などでは, 反復して筋注を行うことは不適であること, 2. 使用量に応じて確実な血中濃度が得られることなど, その有用性と管理上の大きなメリットが指摘されている6)。
ASTMの点滴静注時の体内動態については, 健常成人を対象とし, 200mgを60分間かけて点滴静注した時の血中濃度と尿中排泄を同量筋注時のそれと比較検討した成績7)及び200~400mgを60~120分間かけて点滴静注した時の成績8)から, 1. 点滴静注時の血中濃度ピーク値は投与量及び点滴時間に依存すること, 2. 60分間かけて点滴静注すると, 同量を筋注した時と血中濃度, 尿中排泄のパターンや薬動力学的パラメーターに差がないことが確認されている。
今回, 我々はASTMの臨床用法として, 点滴静注した時の有効性や安全性を確認することを目的として, 全国38施設及びその関連施設による「Astromicin点滴静注研究会」において, 昭和59年11月から昭和61年2月にかけて検討を行つた。内科, 外科, 泌尿器科などの領域における主要感染症症例にASTMの点滴静注法を施行し, 臨床的に有用であると認められたので, 本報においては, 19施設 (Table1) 及び協力機関において行つた内科領域での成績について報告する。

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