1986 年 39 巻 11 号 p. 2945-2958
アミノ配糖体系抗生剤 (Aminoglycoside, 以下AGsと略記) は, 欧米では使用が多いが日本ではそれに比べ, 使用される頻度が少ないと言われる。その理由の一つは筋注使用時に疹痛のあることであろう。
AGs剤が点滴注射で与えられれば, 疼痛は軽減し, 注射回数を減らすこともできるし, 出血傾向のある患者などには, 非常に有利になる。このような考え方と, AGsの一部のものの血中濃度モニターが容易に行えるようになつたことから, Gentamicin, Dibekacin, Micronomicinなどが点滴静注で用いられるようになつてきた1~4)。
AGsは, グラム陰性桿菌にも抗菌力を有し, 尿中の排泄率も高いので, 尿路感染症に対して有利なものである。AGsの一種であるAstromicin (以下ASTMと略記) は筋注使用によつて複雑性尿路感染症に65%程度の有効率を示した薬剤であり5), これの静脈内投与が可能であれば, 薬剤としてのメリットは更に高まると考えられたので, [Astromicin点滴静注研究会] を泌尿器科14施設 (Tablel) 及びその関連施設で組織し, 検討を行つてみることにした。ASTMは点滴静注使用によつても, 筋注使用時とほぼ同等の血中濃度, 尿中回収率を有することが, すでに知られているので, 今回は, 臨床的有用性の検討を主目的として行つた5~7)。