1986 年 39 巻 11 号 p. 2959-3006
化学療法剤の進歩はまことにめざましいものがある。しかし, その一方で感染症起炎菌の変貌もまた著しいものがある。
昭和54年から開始した本研究では, 尿路感染症患者からの検出頻度が比較的高いEscherichia coli, Klebsiella spp., Proteus spp.及びCitrobacter spp.の4菌種に限定して収集し, 感受性を調査してきた1~5)。昭和57年調査から収集する菌株を限定せず, 尿路感染症患者から分離され, 主治医により起炎菌と判定されたあらゆる菌種に調査対象を拡大した。従つて尿路感染症患者分離菌の正確な検出頻度, 検出率の変動及び感受性推移など, 経年的により一層明確な検討を加えられると考えた。尿路感染症においては, 単純性尿路感染症, カテーテル非留置複雑性尿路感染症及びカテーテル留置複雑性尿路感染症に分類して起炎菌の種類並びにその感受性動向について種々検討を加えてきた。
本報においては, 昭和59年度の尿路感染症における各種の菌種の検出頻度及び感受性分布についての知見をここに報告する。