The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるCefixime(5%細粒)の基礎的・臨床的検討
豊永 義清杉田 守正中村 弘典城 宏輔高橋 孝行黒須 義宇堀 誠
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1986 年 39 巻 4 号 p. 1055-1075

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抄録

近年β-Lactam剤の研究の進歩は著しく, 特に注射用セファロスポリン系薬剤では, 抗菌スペクトラムの拡大と抗菌力の増強がなされ, 臨床的にも有用な, いわゆる藤井の分類1)での第4, 5群のセファロスポリン系薬剤が開発されている。一方, 経口用セファロスポリン剤の出現により,外来診療での小児細菌感染症の治療は一段とその幅は広くなつた。しかし, それら抗生剤の抗菌力は一番最近開発されたCefaclor(CCL)を含め, グラム陽性菌とEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae等のグラム陰性桿菌のなかでR-Plasmidを持つていない菌株に対しては優れているが, RICHMONDの分類におけるR-Plasmid支配のIII型β-Lactamase(PCase)によつて中等度に, 又, Enterobacter, Citrobacter, Serratia, Proteus vulgaris等のグラム陰性桿菌が染色体性につくるI型β-Lactamase(CEPase)によつて強く加水分解されるため, 近年, 増加しつつあるR-Plasmid保有株や日和見感染症の原因となるグラム陰性桿菌に対しては, 臨床的使用に際し, 抗菌力が及ばないのも現況である。この度, 藤沢薬品中央研究所で新しい経口用セファロスポリン系抗生物質Cefixime(CFIX, FK027)が開発された。CFIXはFig.1に示す構造式を持ち, 7-アミノセファロスポラン酸の3位にビニル基を, 7位にカルボキシメトキシイミノ基を有している。CFIXはE.coli, Klebsiell, Proteus mirabilisなどのグラム陰性桿菌に対して強い抗菌力を示し, 更に従来の経口用セファロスポリン剤で抗菌力を示さなかつたNeisseria gonorrhoeae, Citrobacter,Enterobacter, Serratia, Indole(陽性)Proteus及びHaemophilus influenzaeにも抗菌力を示すという2)。又, 血清中濃度は成人で投与後約4時間でピークに達し, 半減期は約2.5時間と長く, 投与後12時間においても血清中濃度が認められるという従来の経口用セファロスポリン系薬剤にない特徴も有しており2), その治療効果に対する期待も大きい。
そこで今回, 我々はCFIXについて, 抗菌力, 血清中, 尿中濃度などの基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したので, それらの成績について報告する。

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