The Japanese Journal of Antibiotics
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Imipenem/Cilastatin sodiumの産婦人科感染症に対する効果
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1986 年 39 巻 6 号 p. 1509-1513

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抄録

Imipenem (MK-0787) は, 1976年米国メルク社研究所のJ. S. KAHANらによつて発見されたStreptomyces cattleyaによつて産生され, 従来のペニシリン系及びセファロスポリン系抗生物質とは基本的に化学構造を異にするカルバペネム系抗生物質ThienamycinのN-Formimidoyl誘導体である。構造式は図1に示す, 分子量317.37の白色又は黄白色の結晶性の粉末である。MK-0787はグラム陽性及び陰性の両菌種に対し優れた抗菌力を示す。いわゆる第3世代セファロスポリン剤と抗菌力を比較すると, グラム陰性菌に対しては同程度, グラム陽性菌に対しては, はるかに強い抗菌力を示す。加えてPseudomonas aeruginosaをも含めた抗菌スペクトラムに特徴を持つ。又, 嫌気性菌に対しても第3世代セファロスポリン剤に比べ, はるかに優れた抗菌力を有する。
MK-0787はこのように優れた抗菌力を持ち,且つ細菌のβ-ラクタマーゼ阻害活性を有する優れた抗生物質であるが, 残念ながら体内の主として腎尿細管上皮のDehydropeptidase-Iにより水解不活性化されるという弱点を持つ。このため, この酵素の特異的阻害剤として開発されたのが, Cilastatin sodium (MK-0791) である。MK-0791は分子量380.44で構造式を図2に示す。MK-0791自身には抗菌活性は全くないが, MK-0787の単独投与時の未変化体尿中回収率は約23%であるのに対し, MK-0787とMK-0791を1:1に配合し投与した場合は, 未変化体尿中回収率が約70%と高率になり, in vivoにおけるMK-0787の抗菌力を高めると共にMK-0787の腎毒性を軽減するという作用を持つ。なお, Dehydropeptidase-Iを阻害することによる重篤な副作用は現在まで特に認められていない。
今回, 北海道大学産婦人科教室において, MK-0787/MK-0791を婦人科感染症に使用する機会を得, その有効性を確認できたのでここに報告する。

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