The Japanese Journal of Antibiotics
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産婦人科領域におけるImipenem/Cilastatin sodiumの基礎的, 臨床的検討
小幡 功今川 信行横山 志郎小池 清彦森本 紀蜂屋 祥一
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1986 年 39 巻 6 号 p. 1531-1554

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抄録

近年, 各種の抗生物質が開発, 臨床応用されているが, 抗菌Spectrumが広域である点や作用機構から安全性が認められる点などから, その主体はβ-Lactam系抗生物質が占めていると言えよう。しかし, β-Lactam剤にも細菌細胞外膜の透過性, β-Lactamaseによる加水分解又は結合, Penicillin binding Proteinの変異等の耐性発現機構が存在するため, その使用頻度, 使用量の増加に伴い耐性菌が出現することは一般的に容認あるいは推定可能である。そこで, これらの耐性機構を考慮して, 今日のβ-Lactam剤の研究開発はその母核や側鎖の改良や炉Lactamase inhibitorの検討が主として指向されている。
Imipenem (MK-0787) は米国Morck社のMerck Institute for Therapeutic Researchで開発され, 1976年J. S. KAHAN等により報告されたFused β-Lactam環を有するβ-Lactam剤の新しいCategoryに属するCarbapenem系のThienamycinのN-Formimidoyl誘導体である1~3)(Fig. 1)。本剤はβ-Lactamase inhibitorであるためPenicillinase (PCase) 型やCephalosporinase (CEPase) 型のβ-Lactamaseに阻害的に作用するのは無論であるが, Sulbactamとは異なり, 抗菌SpectrumもGram陽性菌, Gram陰性菌, 嫌気性菌と広範囲で, 平均して強い抗菌活性を有すると報告されている4~6)。しかし, MK-0787単独ではDehydropeptidase-Iで水解不活化され尿中回収率が低値を示す点や, 動物実験で腎毒性を示すなど臨床応用に際して不適当な要因が認められた7, 8)。こうした点を軽減あるいは解消する目的で種々の薬剤との配合が検討されたが, Cilastatin sodium (MK-0791) との配合が適当と考えられた2, 9)(Fig. 2)。MK-0791は構造的にMK-0787と同様にAmide結合を有し, 抗菌力はないがDehydropeptidase-Iを選択的に, 可逆的に阻害する作用が認められた。又, MK-0787/MK-0791の配合比についても検討されたが, 尿中回収率の増加や腎毒性の軽減効果から1: 1の配合比が適当とされた9)。
今回, 著者らは日本メルク萬有 (株) からMK-0787/MK40791の提供を受け, 基礎的には末梢血, 子宮動脈血, 子宮組織及び子宮附属器組織への経時的濃度移行性について検索すると共に, 臨床的には産婦人科領域感染症例に投与し, 有効性並びに安全性について検討したので, その成績について報告する。

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