The Japanese Journal of Antibiotics
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Imipenem/Cilastatin sodiumの産婦人科領域における基礎的・臨床的検討
高村 慎一秦 知紀熊谷 淳二山辺 徹
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1986 年 39 巻 6 号 p. 1620-1625

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抄録

Imipenem (MK-0787) は米国メルク社研究所において開発された物質で, Streptomyces cattleyaから得られるThienamycinのN-Formimidoyl誘導体でβ-ラクタム環を有し, Fig. 1のような構造式で示される。細菌のβ-ラクタマーゼに対しては安定であるが, 体内において主として腎においてDehydropeptidase-I (Renal dipeptidase) により水解不活化される。動物への投与試験においては, 常用量では影響は認められないが, 多量投与の場合, 腎尿細管の壊死が生じ, 腎毒性が問題となることがある。しかしMK-0787の腎毒性はCephaloridineより弱く単剤としても充分に使用できる程度のものである。
Cilastatin sodium (MK-0791) は同じく米国メルク社において開発され, Fig. 2の構造式を有する。本剤はDehydropeptidase-Iの特異的阻害作用を有し, 又OMK-0787の腎毒性を軽減する。これら2剤を配合剤として便用した結果, 1. 両剤を1: 1に配合した揚合, MK-0787の尿中回収率が最高に達し, 動物への多量投与においても腎毒性 (Tubular necrosis) が消失した。2. MK-0791自体は低毒性でありDehydropeptidase-Iを選択的, 可逆的に阻害し, MK-0787の抗菌活性に全く影響を与えなかつた。3. Dehydropeptidase-I阻害による生理的影響にも問題がなかつた。MK-0787はグラム陽性菌及び陰性菌, 又, 好気性菌及び嫌気性菌にかかわらず, 幅広く現存する薬剤と同等以上の優れた抗菌力を有する1-3)。MK-0791との1: 1の配合剤の場合, MK-0787の血中の半減期は, 約1時間であり投与後6時間以内で約70%が尿中に排出され, 胆汁, 喀痰中にも移行する。一方, MK-0791の半減期はMK-0787同様約1時間であり, 投与後6時間以内に約60%が尿中に排出される。
MK-0787/MK-0791の基礎的検討及び臨床成績は主として内科, 泌尿器科を中心として, すでに昭和59年12月14日, 第32回日本化学療法学会西日本支部総会の新薬シンポジウムで報告されている4)。今回我々はMK-0787/MK-0791の提供を受け, その産婦人科領域における有用性を検討する目的で, 薬剤の内性器への移行を測定し, 又, 実際の臨床例について投与を行つたので, その結果を報告する。

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