The Japanese Journal of Antibiotics
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新しいアミノ配糖体系抗生物質硫酸イセパマイシン (Isepamicim, HAPA-B) の神経筋接合部に対する作用
篠田 芳樹望月 大介鉾之原 忠実高柳 法康
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1987 年 40 巻 1 号 p. 136-144

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抄録

新アミノ配糖体系抗生物質, 硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) の神経筋接合部に対する作用をラットを用いて検討し, 以下の成績を得た。
1.HAPA-B (2×10-3~5×10-3g/ml) は, 摘出横隔膜神経筋標本において神経刺激による横隔膜の単収縮反応を選択的に抑制し, その50%抑制濃度 (IC50) は3.6×10-3g/mlであつた。Amikacin (AMK), Gentamicin (GK), Netilmicin, Kanamycin及びStreptomycin (SM) のIC50は, それぞれ2.7×10--317.1×10-4, 5.0×10-4, 2.5×10-3, 1.3×10-3g/mlであつた。
2.HAPA-Bの神経筋伝達抑制作用は, Neostigmilleで影響されず, D-Tubocurarine及びMgCl2により増強され, CaCl2, KCl及びCaffeineにより拮抗された。
3.HAPA-B400mg/kgの筋肉内投与及び100mg/kgの静脈内投与は, 坐骨神経刺激による腓腹筋の単収縮反応に影響しなかつたが, 200mg/kgの静脈内投与では死亡例が出現し,生存例では神経刺激による単収縮反応の抑制が観察された。AMKは50mg/kgの静脈内投与で単収縮反応に影響しなかつたが, 100mg/kgで死亡例が出現した。GM及びSMは50mg/kgの静脈内投与で死亡例を出現させ, 同用量をゆつくり投与した場合に, 神経刺激による単収縮反応を著しく抑制した。
4.静脈内へ1時間持続注入すると, HAPA-B (400mg/kg) 及びAMK (200,400mg/kg) は単収縮反応を抑制した。
以上, HAPA-Bは神経筋伝達抑制作用を有すること, その作用はAMKをはじめとする諸種アミノ配糖体系抗生物質のそれよりも弱く, Ca2+により拮抗されることが判明した。HAPA-Bの作用部位は運動神経末端部と推察された。

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