新アミノ配糖体系抗生物質, 硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) の一般薬理作用を検討し, 以下の成績を得た。
1.一般症状, 中枢神経系に関しては, 500mg/kg以上の筋肉内投与でマウスにおける酢酸Writhing回数抑制作用が, 1,000mg/kgではマウスあるいはラットにおいて筋緊張度低下, 呼吸抑制, 運動性低下等の一般症状変化, 自発運動抑制作用, 協調運動阻害作用及び麻酔増強作用が認められた。抗痙攣作用及び体温に及ぼす影響は認められなかつた。静脈内投与した場合は100mg/kgでも一般症状及び中枢神経系に影響が認められなかつた。
2. 呼吸, 循環器系に関しては, 麻酔イヌに12.5mg/kg以上を静脈内投与した場合に大腿動脈血流量の増加, 25mg/kg以上で血圧下降及び呼吸興奮, 50mg/kg以上で総頸動脈血流量の増加が認められた。心拍数, 心電図には影響が認められなかつた。無麻酔ウサギに100mg/kg静脈内投与した場合, 心拍数増加が認められたが, 血圧の有意な変化はみられず心電図にも影響は認められなかつた。3×10
-4~10
-3g/ml濃度で摘出モルモット心房の運動抑制が認められた。
3.消化器系に関しては, 100mg/kgの静脈内投与あるいは500 mg/kg以上の筋肉内投与でラットにおける胃液分泌抑制作用及び1,000mg/kgの筋肉内投与でマウスにおける腸管輪送能抑制作用が認められた。3×10
-4~10
-3g/ml濃度で摘出ウサギ回腸自動運動抑制作用が認められた。胃粘膜障害作用は認められなかつた。
4. 自律神経系, 平滑筋に関しては, ネコに100mg/kg静脈内投与した場合, 交感神経節前線維刺激による瞬膜収縮の抑制が認められた。摘出したモルモット気管筋, ウサギ大動脈, ラット胃, モルモット回腸及びラット輸精管の各種自律神経作働薬による収縮が3×10
-4~10
-3g/ml濃度で非特異的に抑制された。
5.生殖, 泌尿器系に関しては, 50~100mg/kgの静脈内投与あるいは10
-4~3x10
-4g/ml以上の濃度適用で生体位ウサギ子宮及び摘出ラット子宮の自動運動が抑制された。250mg/kg以上の筋肉内投与でラットにおける抗利尿作用が認められた。
6.血液に対しては, 1,000mg/kgの筋肉内投与で全血凝固時間延長作用及び血糖値上昇作用が認められた。10-3g/ml濃度でAdenosine diphosphate誘発血小板凝集抑制作用が認められた。Collagen誘発血小板凝集及びCa再加時間に影響はみられず, 溶血作用も認められなかつた。
7. 局所麻酔作用は認められず, 0.1%以上の溶液を皮内注射することによリラットにおいて血管透過性充進作用が認められた。
8.上記のHAPA-Bで認められた諸種薬理作用は硫酸アミカシンと同程度かあるいは若干弱いものであつた。
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