The Japanese Journal of Antibiotics
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40 巻, 1 号
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  • 馬場 駿吉, 木下 治二, 森 慶人, 鈴木 賢二, 島田 純一郎, 河村 正三, 大西 信治郎, 上田 良穂, 小林 恵子, 伊藤 依子, ...
    1987 年 40 巻 1 号 p. 1-24
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい経ロセフェム剤, Cefixime (CFIX) の小児急性化膿性中耳炎に対する有効性及び安全性を検討するため体重10~30kgの患者245例を対象とし, Cefaclor (CCL) を比較対照薬とする二重盲検試験を実施した。その成績は次のとおりである。
    投与量はCFIXでは3~6mg/kg/日 (分2回), CCLでは2投~40mg/kg/日 (分3回) で7日間投与とした。
    1.臨床効果については211例 (CFIX群108例, CCL群103例) を解析対象とした。主治医の判定では有効率はCFIX群88.9%, CCL群83.5%で, 両群間に有意差は認められなかつた。委員会判定でも主治医判定と同様の成績であつた。
    2.分離菌別臨床効果については, 主治医判定におけるグラム陰性菌単独感染症例の有効率がCFIX群100%, CCL群84.6%でCFIX群の効果が有意に優つていた (P<0.05)。一方, 委員会判定では, 同感染症例の有効率はCFIX群100%, CCL群88.5%で両群間に有意差は認められなかつた。
    3.細菌学的効果では, 全症例の菌陰性化率はCFIX群97.1%, CCL群90.3%で, CFIX群の菌陰性化率が有意に優つていた (P<0.05)。
    4.各症状の改善度については, 鼓膜・鼓室粘膜発赤では投与3日目の改善率でCFIX群 (84.1%) がCCL群 (67.6%) より有意に優つていた (P<0.05)。又, 中耳分泌物量では投与7日目の改善率でCFIX群 (98.1%) がCCL群 (91.3%) より有意に優つていた (P<0.05)。
    5.安全性 (副作用) については, 238例 (CFlx群120例, CCL群118例) を解析対象とした。
    副作用の発現率はCFIX群0.8% (1例/120例), CCL群1.7% (2例1118例) で, 両群間に有意差はみられなかつた。
    以上の結果から, CFIXは小児の急性化膿性中耳炎の治療に有用な経口の抗生物質であり, CCLと同等ないしそれ以上の効果が期待できると考える。
  • 松永 亨, 荻野 仁, 浅井 英世, 白石 孝之, 河村 正三, 大西 信治郎, 上田 良穂, 小林 恵子, 伊藤 依子, 坂本 裕, 川崎 ...
    1987 年 40 巻 1 号 p. 25-54
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. Cefixime (CFIX) の急性陰窩性扁桃炎に対する有効性, 安全性を客観的に評価するため, Cefroxadine (CXD) を対照薬として二重盲検群間比較試験を実施した。CFIXは1回100 mgを1日2回朝・夕食後, CXDは1回250 mgを1日3回朝・昼・夕食後経口投与した。
    臨床効果検討症例数は202例 (CFIX群103例, CXD群99例) で患者背景においてCFIX群に重症例が有意に (P<0.01) 多く分布していた。
    2. 主治医臨床効果は, CFIX群で著効63例 (61.2%), 有効28例 (有効率88.3%), CXD群で著効54例 (54.5%), 有効37例 (有効率91.9%) であり, 両薬剤群間に有意差は認められなかつた。委員会の3日目判定ではCFIX群で有効率40.8%, CXD群47.9%で両薬剤群間に差は認められなかつたが, 7日目判定においてCFIX群の有効率79.8%に対してCXD群93.4%であり両薬剤群間に有意差 (P<0.05) が認められた。主治医判定と委員会7日目判定の有意差検定結果で認められた差異については, 主治医判定と委員会判定の判定方法の差異に加えて, 両薬剤群間の委員会判定に用いたデータの観察日の偏りが影響している可能性が高いと考えられた。細菌学的効果はCFIX群93.4%CXD群96.9%と両薬剤群とも良好な菌消失率を示した。
    3.安全性の検討例数は226例 (CFIX群110例, CXD群116例) で, 副作用の発現は消化器症状と発疹がCFIX群に6例 (5.5%), CXD群に5例 (4.3%) 認められ, 臨床検査値の異常としてCFIX群にGOT, GPTの上昇1例が認められたが, 両薬剤群間に差は認められなかつた。
    4.有用性検討例数は201例 (CFIX群102例, CXD群99例) で, CFIX群で極めて有用65例 (63.7%), 有用25例 (有用率88.2%), CXD群で極めて有用54例 (54.5%), 有用37例 (有用率91.9%) と両薬剤群共優れた有用性を示し, CFIXは急性陰窩性扁桃炎の治療薬として, CXDの約1/3の量で同等の効果が期待できる有用性の高い薬剤と考えられた。
  • 小山 優, 中川 圭一
    1987 年 40 巻 1 号 p. 55-76
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-2588の臨床第1相試験を実施し, ヒトでの安全性と体内動態を健常成人志願者25名を対象にに, 錠剤では100mgの1回投与, カプセル剤では100,200,400mgの1回投与及び1日300,600mgをそれぞれ15日間, 14日間連続投与で検討した。
    1回投与試験では何ら臨床症状に異常はなく, 1日300mg連続投与及び1日600mg連続投与時だけにそれぞれ一過性の腹部膨満感, 軽度の軟便各1例が認められた。
    臨床検査値異常は1回投与試験時1例, 連続投与時3例に軽度のトランスアミナーゼ上昇が認められたが, 試験終了時には正常範囲内及び投与前値まで回復していた。上記以外の自他覚的及び臨床検査値に何ら異常を認めなかつた。
    本剤の体内動態は食事摂取後の方が空腹時よりTmaxが遅れ, Cmaxは高い傾向にあつた。尿中回収率は投与8時間までに19~28%を示し, 食後の方が高い回収率を示した。連続投与試験の最終投与24時間後の血中濃度は測定限界以下であり, 投与3時間後の各測定日においてもほぼ同じ値であつた。尿中回収率の検討からみても本剤の蓄積性は認められなかつた。
  • 加来 浩平, 藤井 新也, 安藤 慎太郎, 矢賀 健, 井上 昌光, 井上 康, 大久保 正士, 藤井 康彦, 松谷 朗, 東野 洋一, 松 ...
    1987 年 40 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    内科領域の各種感染症40例に対し, Cefoperazone (CPZ) を用い, その臨床効果と安全性を検討すると共に, Area under the time concentration curve (AUC) 値と臨床効果との相関性についても検討し, 次のような結果が得られた。
    1. 判定可能総症例36鯨著効15例, 有効16例, や鮪効3例, 無効2例で, 86.1%の有効率であつた。投与量別に臨床効果を比較するとi回29投与群では95.8% (23例124例) と1回19投与群の66.7% (8例/12例) に比べて高い有効率を示したが, 推計学的有意差は認められなかった。
    2. CPZ投与の前後で32株の菌について, その消長が確認できたが, 29株 (90.6%) で消失, 3株で減少であった。
    3. AUC値と臨床効果との関連をみると1回29投与群では19投与群に比べてAUC値は有意に高く, 臨床効果も優る傾向がうかがえた。又, 著効及び有効例でAUC値も大きい傾向がみられたが, やや有効ないしは無効例が少なかつたこともあり, 推計学的有意差はみられなかつた。
    4. 40例中4例に臨床検査値の異常ないしは皮疹等のアレルギー症状をみたが, いずれも軽度且つ一過性であり, 原疾患との関連も否定できず, 投与継続中又は投与中止により正常に復した。
  • 千村 哲朗, 吉村 由紀子
    1987 年 40 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域における代表的手術である腹式帝王切開術と腹式単純子宮全摘術に対する術後感染予防に対しCefbtaxime (CTX) の投与効果を, Fever indexで検討し以下の結果を得た。
    1.腹式帝王切開術後に対しCTX2g/日×5日投与群 (n=15) のTotal fbver index は3.53±2.07 degree hours, 術前感染群 (n=2) では22.25±0.19degree hoursを示した。腹式単純子官全摘術後に対するCTX2g/日×5日投与群 (n=13) のTotal fever indexは3.79±3.87degree hours, Astromicin 400mg/日×5日筋注併用投与群 (n=13) では3.10±3.60degree hoursと低値を示した。広汎子宮全摘術群 (n=7) では6.72±3.14 degree hoursであつた。
    2. 各投与群におけるDaily fever indexの比較 (Cumulative percentage) では, 術式によりパターンは異なり, 又, 投与抗生物質により差を認め, 発熱の経日的推移と熱型で差を示すことが判明した。
    3. CTX投与による臨床検査値の異常, 自他覚的副作用は認められなかつた
  • 池本 秀雄, 渡辺 一功, 小酒井 望, 林 康之, 小栗 豊子, 斎藤 玲, 篠原 正英, 松宮 英視, 上田 京子, 寺井 継男, 井田 ...
    1987 年 40 巻 1 号 p. 91-116
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1984年9月~1985年3月の間, 全国14施設において, 呼吸器感染症患者504例の主として喀痰から分離され, 起炎菌と推定された細菌は629株であつた。このうちStaphylococcusaureu 39株, Streptococcus pneumoniae82株, Haemophilus influenzae 190株, Pseudomonasaeruginosa (Non-mucoid型) 94株, P.aeruginosa (Mucoid型) 39株, Klebsiella pneumoniae35株, Escherichia coli 8株, Branhamella catarrhalis 29株などに対する各種抗生剤のMICを測定し, 薬剤感受性分布を求めた。
    更に呼吸器感染症患者及び疾患別にみた年齢分布, 感染症の頻度, 分離菌の種類, 検体採取時の抗生剤の使用状況などについても合せて検討した。
  • 鈴木 恵三, 高梨 勝男
    1987 年 40 巻 1 号 p. 117-135
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1.体内動態
    Micronomicin (MCR) を3例の高齢者 (平均年齢77歳) に180mg投与し吸収と排泄を測定した。1時間で点滴静注 (i.v.d.) した時の血中濃度ピークは16.0~22.2μg/ml (平均18.8±3.2μg/ml) であった。腎機能に異常のない2例のT1/2は2.2~2.5時間であったが, 軽度の障害をみた1例では4.3時間で軽度の延長をみた。このうち2例で1日180mgを2回, 5日間連続投与したが, 蓄積がなく, 安全性に問題がなかつた。
    上記3例で, 血中β2-Microglobulin (β2-MG), N-Acetyl-β-r D-glucosaminidaso (NAG), SCreatinineと尿中β2-MG, NAG, U-Creatinineを投与前, 後で測定したが, MCRに基づくと思われる異常を認めなかつた。
    2. 臨床効果
    MCRを慢性複雑性尿路感染症 (CC-UTI) 26例に点滴静注により投与した。1日投与量は240~360mgが24例とほとんどを占め期間は5日間とした。UTI薬効評価基準で評価可能な25例の成績は, 著効4例, 有効14例, 無効7例で有効率72%であつた。
    3. 安全性
    自他覚的副作用, 臨床検査値を検討したが, 全てに異常を認めなかつた。
    4. 結語
    MCRは高齢者のCC-UTIを主対象として, 1日240~360 mg, 5日間の点滴静注による治療で, 有効性に優れ, 安全性にも問題のないことが確認されたが, 腎障害例では排泄が遅れる傾向があり, 腎機能に応じた投与量の設定が肝要である。
  • 篠田 芳樹, 望月 大介, 鉾之原 忠実, 高柳 法康
    1987 年 40 巻 1 号 p. 136-144
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新アミノ配糖体系抗生物質, 硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) の神経筋接合部に対する作用をラットを用いて検討し, 以下の成績を得た。
    1.HAPA-B (2×10-3~5×10-3g/ml) は, 摘出横隔膜神経筋標本において神経刺激による横隔膜の単収縮反応を選択的に抑制し, その50%抑制濃度 (IC50) は3.6×10-3g/mlであつた。Amikacin (AMK), Gentamicin (GK), Netilmicin, Kanamycin及びStreptomycin (SM) のIC50は, それぞれ2.7×10--317.1×10-4, 5.0×10-4, 2.5×10-3, 1.3×10-3g/mlであつた。
    2.HAPA-Bの神経筋伝達抑制作用は, Neostigmilleで影響されず, D-Tubocurarine及びMgCl2により増強され, CaCl2, KCl及びCaffeineにより拮抗された。
    3.HAPA-B400mg/kgの筋肉内投与及び100mg/kgの静脈内投与は, 坐骨神経刺激による腓腹筋の単収縮反応に影響しなかつたが, 200mg/kgの静脈内投与では死亡例が出現し,生存例では神経刺激による単収縮反応の抑制が観察された。AMKは50mg/kgの静脈内投与で単収縮反応に影響しなかつたが, 100mg/kgで死亡例が出現した。GM及びSMは50mg/kgの静脈内投与で死亡例を出現させ, 同用量をゆつくり投与した場合に, 神経刺激による単収縮反応を著しく抑制した。
    4.静脈内へ1時間持続注入すると, HAPA-B (400mg/kg) 及びAMK (200,400mg/kg) は単収縮反応を抑制した。
    以上, HAPA-Bは神経筋伝達抑制作用を有すること, その作用はAMKをはじめとする諸種アミノ配糖体系抗生物質のそれよりも弱く, Ca2+により拮抗されることが判明した。HAPA-Bの作用部位は運動神経末端部と推察された。
  • 柴田 健介, 三田 育代, 篠田 芳樹, 中野 潮, 木下 寛之, 野口 優, 鵜沢 豊暢, 宗宮 善典, 高柳 法康
    1987 年 40 巻 1 号 p. 145-169
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新アミノ配糖体系抗生物質, 硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) の一般薬理作用を検討し, 以下の成績を得た。
    1.一般症状, 中枢神経系に関しては, 500mg/kg以上の筋肉内投与でマウスにおける酢酸Writhing回数抑制作用が, 1,000mg/kgではマウスあるいはラットにおいて筋緊張度低下, 呼吸抑制, 運動性低下等の一般症状変化, 自発運動抑制作用, 協調運動阻害作用及び麻酔増強作用が認められた。抗痙攣作用及び体温に及ぼす影響は認められなかつた。静脈内投与した場合は100mg/kgでも一般症状及び中枢神経系に影響が認められなかつた。
    2. 呼吸, 循環器系に関しては, 麻酔イヌに12.5mg/kg以上を静脈内投与した場合に大腿動脈血流量の増加, 25mg/kg以上で血圧下降及び呼吸興奮, 50mg/kg以上で総頸動脈血流量の増加が認められた。心拍数, 心電図には影響が認められなかつた。無麻酔ウサギに100mg/kg静脈内投与した場合, 心拍数増加が認められたが, 血圧の有意な変化はみられず心電図にも影響は認められなかつた。3×10-4~10-3g/ml濃度で摘出モルモット心房の運動抑制が認められた。
    3.消化器系に関しては, 100mg/kgの静脈内投与あるいは500 mg/kg以上の筋肉内投与でラットにおける胃液分泌抑制作用及び1,000mg/kgの筋肉内投与でマウスにおける腸管輪送能抑制作用が認められた。3×10-4~10-3g/ml濃度で摘出ウサギ回腸自動運動抑制作用が認められた。胃粘膜障害作用は認められなかつた。
    4. 自律神経系, 平滑筋に関しては, ネコに100mg/kg静脈内投与した場合, 交感神経節前線維刺激による瞬膜収縮の抑制が認められた。摘出したモルモット気管筋, ウサギ大動脈, ラット胃, モルモット回腸及びラット輸精管の各種自律神経作働薬による収縮が3×10-4~10-3g/ml濃度で非特異的に抑制された。
    5.生殖, 泌尿器系に関しては, 50~100mg/kgの静脈内投与あるいは10-4~3x10-4g/ml以上の濃度適用で生体位ウサギ子宮及び摘出ラット子宮の自動運動が抑制された。250mg/kg以上の筋肉内投与でラットにおける抗利尿作用が認められた。
    6.血液に対しては, 1,000mg/kgの筋肉内投与で全血凝固時間延長作用及び血糖値上昇作用が認められた。10-3g/ml濃度でAdenosine diphosphate誘発血小板凝集抑制作用が認められた。Collagen誘発血小板凝集及びCa再加時間に影響はみられず, 溶血作用も認められなかつた。
    7. 局所麻酔作用は認められず, 0.1%以上の溶液を皮内注射することによリラットにおいて血管透過性充進作用が認められた。
    8.上記のHAPA-Bで認められた諸種薬理作用は硫酸アミカシンと同程度かあるいは若干弱いものであつた。
  • Bioassay法, HPLC法及びEIA法の検討
    森下 真孝, 鈴木 忠清, 芹澤 和憲, 林 満男, 木下 健司, 中野 雄司
    1987 年 40 巻 1 号 p. 170-187
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体系抗生剤である硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) の体液中濃度測定法として, 微生物学的定量法 (Bioassay法), 高速液体クロマトグラフ法 (HPLC法) 及び酵素免疫測定法 (EIA法) について検討した。
    又, 本薬剤の体液中保存安定性をBioassay法により検討した。
    Bioassay法としては, 検定菌にBacillus subtilis ATCC 6633を使用し, 検定培地として, 0.4%のNaClを含む1.5%Agar (pH無修正) を基層とし, 種層にNutrient agar (pH 8.0) を用いる寒天孔平板拡散法 (二層Agar well法) が最適であつた。
    Bioassay法, HPLC法及びEIA法での血漿中における測定限界は, それぞれ0.08μg/ml, 0.2投μg/ml (5μ1注入) 及び0.05μg/mlであつた。
    健常人にHAPA-B 200 mgを筋肉内単回投与し, 血漿中及び尿中濃度をBioassay法, HPLC法及びEIA法の3法で測定し比較した結果, Bioassay法に対しHPLC法及びEIA法共に良好な相関関係が得られた。
    血漿中及び尿中HAPA-Bの保存安定性に関しBioassay法により検討したところ,-20℃, 15日間保存しても抗菌力の低下は認められなかつた。
  • I.ラット単回投与時の吸収, 分布, 代謝及び排泄の検討
    鈴木 忠清, 芹澤 和憲, 宗宮 善典, 志良以 まりよ, 遠藤 里子, 森下 真孝
    1987 年 40 巻 1 号 p. 188-201
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規アミノ配糖体系抗生剤である硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) をラットに投与し吸収, 分布, 代謝及び排泄につき検討した。
    本薬剤は筋肉内投与後速やかに吸収され, 6.25~100mg/kgの投与量で最高血漿中濃度到達時間 (Tmax) は0.10~0.21時間であつた。最高血漿中濃度 (Cmax) 及び血漿中濃度時間曲線下面積 (AUC) は投与量に依存して増加した。
    血漿中からの本薬剤の消失は速やかであり, 筋肉内及び静脈内投与後の生物学的半減期 (T1/2) はそれぞれ0.41~0.47時間及び0.23~0.35時間であつた。
    本薬剤25mg/kgを筋肉内, 腹腔内及び皮下投与した場合のTmaxはそれぞれ0.18, 0.24時間及び0.37時間, Cmaxはそれぞれ64.15, 53.71μg/ml及び40.39μg/ml, T1/2はそれぞれ0.47, 0.73時間及び0.87時間であつた。
    分布に関しては, 本薬剤25mg/kgを筋肉内及び静脈内投与した場合, 本薬剤は各組織に速やかに分布し, 特に腎において高濃度であつた。腎以外の組織では, 肺及び心の濃度が比較的高かつたが, いずれも血漿中濃度と比べ低値であつた。
    尿中排泄は投与量及び投与方法にかかわりなくいずれも速やかであり, 24時間までの尿中排泄率は79~90%であつた。
    胆汁中排泄はいずれの投与方法においても低く, 24時間までの胆汁中排泄率は0.1%以下であつた。
    筋肉内投与後の尿中には活性代謝物は検出されなかつた。
    雌雄ラットにおける筋肉内投与後の体内動態で性差は認められなかつた。
    同系抗生剤のアミカシン (AMK) 及びゲンタマイシン (GM) と筋肉内投与で比較した場合, HAPA-Bの血漿中濃度推移及び尿中排泄率はこれら同系抗生剤とほぼ同じであつた。更に, 組織内濃度測定において, 筋肉内及び静脈内の両投与方法共にHAPA-BはAMKと同様の分布を示した。
  • II.ラット連続投与時の蓄積性の検討
    鈴木 忠清, 芹澤 和憲, 宗宮 善典, 志良以 まりよ, 遠藤 里子, 森下 真孝
    1987 年 40 巻 1 号 p. 202-207
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    硫酸イセパマイシン (lsepamicin, HAPA-B) を25mg/kg, 1日1回, 8日間及び15日間, ラット筋肉内及び静脈内に連続投与し, 本薬剤の蓄積性に関する検討を行つた。
    血漿中濃度推移は両投与経路とも単回投与の場合とほぼ同様であり, 連続投与の影響は認められなかつた。
    組織内濃度は両投与経路とも連続投与することにより, 特に腎において顕著な上昇が認められ, 各回投与後24時間の腎内濃度は初回投与に比べ, 8回投与後で3~4倍, 15回投与後で4~5倍に上昇した。両投与経路とも8回投与後までの上昇に比べ, 8回投与以後の上昇は緩徐であつた。
    一方, 腎からの消失速度は連続投与しても単回投与の場合と同様で緩徐であつた。
    腎以外の組織 (肺, 心, 脾, 肝) では若干の蓄積傾向が認められたが, これらの濃度は腎に比べ極めて低値であつた。
  • III. ウサギ単回投与時の筋注静注, 点滴静注の検討
    鈴木 忠清, 宗宮 善典, 志良以 まりよ, 酒井 敦史, 岩崎 正和, 森下 真孝
    1987 年 40 巻 1 号 p. 208-219
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ウサギに硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) 6.25, 25μg/kg及び100mg/kg筋注, 静注及び点滴静注し, その体内動態を比較検討した。
    筋注, 静注及び点滴静注時の血漿中濃度はいずれの場合も投与量に依存して増加した。
    生物学的半減期 (T1/2), 総体内クリアランス (Cl1) 及び血漿中濃度時間曲線下面積 (AUC) はいずれの投与経路においても差は認められなかつた。
    45分間点滴静注時の血漿中濃度から算出した薬動力学的パラメーターを用いて点滴静注時の理論推定曲線を作図すると, 筋注時の最高血漿中濃度 (Cmax) とほぼ同じ値を得るためには60~90分の点滴時間が必要とされ, 又, 点滴静注においては点滴時間を調節することにより筋注と同等の最高血漿中濃度が得られるものと考えられた。
    15分間点滴静注でCmaxに達する15分後における各組織内濃度は, 筋注の場合と比較し, 高濃度を示したが, 1時間後においては腎を含め各組織とも筋注とほぼ同じ値を示し, その後の消失推移も筋注の場合とほぼ同様であつた。
    筋注, 静注及び点滴静注時の尿中排泄は, いずれの投与量及び投与方法においても速やかで, 24時間までに投与量の75~92%が回収され, 高い排泄率を示した。
    筋注時の尿を用いて活性代謝物の検索を行つた結果, 単一の阻止帯だけが検出され, 尿中には活性代謝物は認められなかつた。
  • IV. イヌ単回投与時の筋注, 静注, 点滴静注の検討
    芹澤 和憲, 志良以 まりよ, 遠藤 里子, 鈴木 忠清, 森下 真孝
    1987 年 40 巻 1 号 p. 220-231
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    イヌに硫酸イセパマイシン (lsepamicin, HAPA-B) 6.25, 25mg/kg及び100mg/kgを筋注, 静注及び点滴静注し, その体内動態を検討した。
    筋注, 静注及び点滴静注時の最高血漿中濃度 (Cmax) は投与量に依存して増加した。生物学的半減期 (T1/2) 及び血漿中濃度時間曲線下面積 (AUC) はいずれの投与経路におv・ても大きな差は認められなかつた。
    点滴静注においては, 点滴時間を調節することにより筋注とほぼ同様の血漿中濃度推移が得られることが確認された。すなわち, 筋注と同一投与量でCmaxを合せるためには6.25mg/kg及び25mglkgの場合で1時間, 100mg/kgの場合は更に長い点滴時間が必要と推定された。
    筋注時の血漿中濃度から算出される薬動力学的パラメーターを用いてのシミュレーションにより得た点滴静注時の血漿中濃度理論推定曲線を実測値と比較した結果, 点滴時間が短い場合は理論値の方がわずかに低い値を示したが, 点滴時間が長くなるに従い理論値と実測値は一致し, 筋注時の薬動力学的パラメーターから点滴静注時の血漿中濃度推移を推定することが可能であつた。
    筋注, 静注及び点滴静注時の尿中排泄は, いずれの投与量及び投与方法においても速やかで, 投与後24時間までに71~89%と高い排泄率を示した。
    TLC/Bioautographyにより筋注時の尿中代謝物を検索した結果, 単一の阻止帯だけが認められ, 尿中には活性代謝物は検出されなかつた。
    アミカシン25mglkgを筋注及び静注しHAPA-Bと比較した結果, いずれの投与方法においても血漿中濃度推移及び尿中排泄率に差は認められなかつた。
  • V. イヌ連続投与時の血漿中濃度
    鈴木 忠清, 志良以 まりよ, 遠藤 里子, 宗宮 善典, 酒井 敦史, 中西 大介, 森下 真孝
    1987 年 40 巻 1 号 p. 232-237
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    雌雄ピーグル犬に硫酸イセパマイシン (Isepamicin, HAPA-B) 6.25, 25mglkg及び100mg/kgを1日1回30日間筋肉内連続投与し, 初回, 18回及び30回投与後の血漿中濃度推移を調べることにより, 本薬剤の蓄積性を検討し, 併せて硫酸アミカシン (AMK) 25mglkg及び100mg/kgを筋肉内連続投与してHAPA-Bとの比較検討を行つた。
    HAPA-Bを連続投与した場合, いずれの投与量でも血漿中濃度推移に及ぼす連続投与の影響は認められなかつた。
    一方, AMKを連続投与した場合, 100mg/kg投与では血漿中濃度推移に及ぼす連続投与の影響が顕著に認められた。
  • I. ラット単回投与時の吸収, 分布, 代謝及び排泄の検討
    岩崎 正和, 芹澤 和憲, 鈴木 忠清, 森下 真孝, 高橋 智雄, 村西 昌三
    1987 年 40 巻 1 号 p. 239-252
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    14C標識硫酸イセパマイシン (14C-Isepamicin, 14C-HAPA-B) をラットに筋肉内及び静脈内投与した場合の吸収, 分布, 代謝及び排泄に関する検討を行つた。
    1. 14C-HAPA-Bを25mg/kg投与した揚合, 血漿中濃度は筋肉内投与では投与後10分で約75μg/ml, 静脈内投与では投与後5分で約116μg/mlであり, 筋肉内投与時の吸収は速やかであつた。又, 両経路とも消失は速やかであつた。
    2.組織内分布は両経路とも, 眼球及び中枢神経系を除き, 投与後速やかにほぼ全身にわたり, 特に, 腎及び軟骨部に高濃度に分布した。腎には長時間滞留したが, 軟骨部では以後急速に消失した。腎及び軟骨部に次いで肺で高濃度であつた。又, 投与後4時間以降の腎における分布では, 腎皮質に偏在が認められた。
    3.主たる排泄経路は腎からであり, 6時間までに投与量の約90%, 24時間までに95%以上が排泄された。胆汁中排泄率は24時間までに0.1~0.2%と極めて少なく, 糞中回収率も1~3%程度とわずかであつた。
    4.代謝物の検索を筋注時の尿を用いて行つたが, TLCオートラジオグラムにおいて, 未変化体の単一スポットが認められただけであつた。
    5. 血漿蛋白結合率はin vivo, in vitro共に10%以下, in vitro血球結合率は9%以下であつた
  • II.ラット連続投与時の蓄積性の検討
    岩崎 正和, 芹澤 和憲, 鈴木 忠清, 森下 真孝, 高橋 智雄, 村西 昌三
    1987 年 40 巻 1 号 p. 253-258
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    14C標識硫酸イセパマイシン (14C-Isepamicin, 14C-HAPA。B), 1日1回25 mg (50μCi) /kgを8回及び15回ラット筋肉内に連続投与し, 血漿中濃度, 組織内濃度及び尿糞中排泄を測定した。
    1.連続投与後の血漿中濃度推移は単回投与の場合とほぼ同様であり, 連続投与の影響は認められなかつた。
    2.腎内濃度は連続投与により著しく上昇し, 高い貯留性が認められた。
    3. 腎以外の組織では, 消失速度が連続投与によりやや緩徐になる傾向があり, 若干蓄積傾向がみられたが, 投与後10分の濃度はほとんど影響されなかつた。
    4.排泄については, 連続投与による影響は認められなかつた。
  • III. ラットにおける胎盤通過性, 乳汁移行性の検討
    岩崎 正和, 芹澤 和憲, 鈴木 忠清, 森下 真孝, 高橋 智雄, 村西 昌三
    1987 年 40 巻 1 号 p. 259-266
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Placental transfer and excretion into milk of 14C-isepamicin sulfate (14C-HAPA-B) following a single intramuscular or intravenous dose of 25 mg/kg were studied in pregnant or lactating rats.
    1. Concentrations of HAPA-B in placenta, ovary and uterus reached their maxima in 10 minutes after administration then declined rapidly. The maximum concentration in the fetal membrane was similar to 10-minute levels in these other tissues, but was attained in 4 hours or later after the drug administration and some drug still remained there even at 24 hours.
    2. A small amount of radioactivity was distributed into the fetus and the maximum level in the fetus was attained in 1-4 hours after administration, much later than in maternal tissues.The concentration in the fetal kidney was the highest in the fetus, but only 1 μg/g or lower was found. A very small amount of radioactivity was also found in the fetal bone by radioautography.
    3. The drug was excreted into milk at 2-4 tegiml during the first 6 hours and decreased a little in 24 hours after administration.
    4. There was no difference in results due to administration routes.
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