1987 年 40 巻 1 号 p. 220-231
イヌに硫酸イセパマイシン (lsepamicin, HAPA-B) 6.25, 25mg/kg及び100mg/kgを筋注, 静注及び点滴静注し, その体内動態を検討した。
筋注, 静注及び点滴静注時の最高血漿中濃度 (Cmax) は投与量に依存して増加した。生物学的半減期 (T1/2) 及び血漿中濃度時間曲線下面積 (AUC) はいずれの投与経路におv・ても大きな差は認められなかつた。
点滴静注においては, 点滴時間を調節することにより筋注とほぼ同様の血漿中濃度推移が得られることが確認された。すなわち, 筋注と同一投与量でCmaxを合せるためには6.25mg/kg及び25mglkgの場合で1時間, 100mg/kgの場合は更に長い点滴時間が必要と推定された。
筋注時の血漿中濃度から算出される薬動力学的パラメーターを用いてのシミュレーションにより得た点滴静注時の血漿中濃度理論推定曲線を実測値と比較した結果, 点滴時間が短い場合は理論値の方がわずかに低い値を示したが, 点滴時間が長くなるに従い理論値と実測値は一致し, 筋注時の薬動力学的パラメーターから点滴静注時の血漿中濃度推移を推定することが可能であつた。
筋注, 静注及び点滴静注時の尿中排泄は, いずれの投与量及び投与方法においても速やかで, 投与後24時間までに71~89%と高い排泄率を示した。
TLC/Bioautographyにより筋注時の尿中代謝物を検索した結果, 単一の阻止帯だけが認められ, 尿中には活性代謝物は検出されなかつた。
アミカシン25mglkgを筋注及び静注しHAPA-Bと比較した結果, いずれの投与方法においても血漿中濃度推移及び尿中排泄率に差は認められなかつた。