The Japanese Journal of Antibiotics
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新鮮臨床分離株に対するSulbactam/Cefoperazoneの抗菌力
出口 浩一横田 のぞみ古口 昌美深山 成美西村 由紀子中根 豊小田 清次田中 節子加藤 三枝子佐藤 久美子福本 寅雄
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1987 年 40 巻 10 号 p. 1752-1762

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抄録

新鮮臨床分離株に対するSulbactam (SBT) /Cefoperazone (CPZ) の抗菌力をCPZ, Cefotiam (CTM), Cefotaxime (CTX), Latamoxef (LMOX) と比較検討した。SBT/CPZはSBTとCPZの各々を1: 1の組み合せ, すなわちCPZをベースにしてそれにSBTとCPZを同一の濃度で加えた希釈系列で検討した。検討に供した株はStaphylococcus aureus, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Citrobacter freundii, Enterobacter spp., Serratia marcescens, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris そしてPseudomonas aeruginosa の各々50株である。
1. S. aureus, E. coli, K. pneumoniae, P. mirabilis すなわち主にPenicillinase型β-Lactamaseを産生するこれらの菌種に対するSBT/CPZの抗菌力はCPZ単独と比較すると良好で, SBTのβ-Lactamase阻害作用は0.39~1.56μg/mlの低濃度域で発揮されていた。
2. C. freundii, Enterobacter spp., S. marcescens, P. vulgaris, P. aeruginos a等の主にCephalosporinase型β-Lactamaseを産生するこれらの菌種に対するSBT/CPZの抗菌力は, SBTのβ-Lactamase阻害効果が中程度に発揮されると推察される。このことが各々の菌種に対するMIC値分布にみられた他, SBTのβ-Lactamase阻害作用は3.13~12.5μg/mlの濃度域で発揮されていた。又, C. freundii, Enterobacter spp., S. marcescens のCTX, LMOXに対する耐性菌がMIC80レベルで確認された。
3.これら臨床分離株に対する抗菌力をMIC80でみると, SBT/CPZはグラム陽性のS.aureusからE. coli, K. pneumoniae, Enterobacter spp., S. marcescens, P. aeruginosa 等のグラム陰性菌に対しCTM, CTX, LMOXに比較して最も平均した抗菌力を示していた。
4. S. aureus 8%, C. freundii 18%, Enterobacter spp. 10%, S. marcescens 26%, P. vulgaris 2%, そしてP.aerugimosa18%に対するSBT/CPZのMIC値は≥25μg/mlを示し, SBTのβ-Lactamase阻害作用が十分に発揮し得ない株も存在した。これらの株はβ-Lactamaseの産生による耐性とは異質の耐性菌と考えられる。
5.臨床分離株の現状はCPZ耐性菌の存在とその割合が将来の問題ではなく, 今日的問題であり, 加えてCPZと構造の異なるNewcephems耐性菌も増加している。そうした時期に登場したSBT/CPZはタイムリーな意義があると考えた。

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