1987 年 40 巻 10 号 p. 1809-1819
新しく開発された注射用Cephem剤であるFlomoxef (FMOX, 6315-S) について, 抗菌力及び19点滴静注時の腹水中, 血清中濃度を検討し, 急性腹膜炎に対し有用な抗生剤であると結論した。
1.広島大学第1外科及び関連施設で最近4年6カ月間に経験した急性腹症の検出菌を検討し, これらの検出菌種に対するFMOXの抗菌力を測定した。その結果, Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus spp. に対して極めて優れた抗菌力を示した。
2.FMOX 1gを術中に生理食塩水100mlに溶解, 1時間点滴静注を行い, 血清中及び腹水中濃度を測定した。その結果, 腹水中濃度は点滴静注終了後2時間目には血清中濃度を越え, ほぼ12.5μg/ml程度のMICの細菌に対しては有効に作用するものと考えられた。
以上の1, 2の検討から急性腹膜炎に対し, 新しく開発された注射用Cephem剤FMOXは充分効果を発揮するものと考えられた。