抄録
今回Flomoxef (FMOX, 6315-S) 29を1時間かけて点滴静注し, その経時的血清中濃度及び骨盤死腔液中濃度を測定し, 併せて組織内濃度についても測定した。
1.経時的血清中濃度は点滴静注終了時92.86±17.05μg/mlで最高値を示し, 30分後48.94±15.19μg/ml, 1時間後29.00±10.49μg/mlと次第に減少し, 6時間後には1.16±1.08μg/mlであつた。
2.骨盤死腔液中濃度は点滴静注終了時6.54±3.21μg/mlであり, 30分後31.28±12.69μg/mlと漸増し, 1時間後35.21±13.29μg/mlと最高値を示し, 次第に減少して, 6時間で11.10±6.64μg/mlとなつた。
3.子宮動脈結紮時の肘静脈血清中濃度は103.21±51.69μg/mlであり, この時に採取した組織内濃度で, 子宮頸部37.17±18.20μg/9で最も高濃度であり, 子宮腔部35.77±7.68μg/g, 卵管26.35±14.15μg/9, 卵巣21.62±12.15μg/9, 子宮筋層20.56±9.82μg/g, 子宮内膜16.45±8.10μg/gと次第に低濃度となつた。
4.Two-compartmentmodel解析から, FMOX29点滴静注した時の血清中濃度の最高値は92.81μg/mlと非常に高く, β 相の半減期は1.21時間と速い。一方骨盤死腔液中濃度の最高値は32.38μg/mlであり, 半減期は2.44時間と速い。
血清中から骨盤死腔液への移行を濃度曲線下面積 (AUC) で比較すると, 血清中濃度147μg.hr/mlに対し, 骨盤死腔液中濃度201μg・hr/mlで, 骨盤死腔液への移行が137%よいことが示された。
5.臨床的には, Peptostreptococcus asaccharolyticus による付属器炎, Staphylococcus aureusによる子宮内感染症, Klebsiella, Escherichia coli の複数菌による膀胱炎, Streptococcus, E. coliの複数菌による術後膣断端部感染症はいずれも菌陰性化をきたした。その他分離菌の得られなかつた症例では臨床症状の改善が得られた。