The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるCefuzonamの基礎的・臨床的検討
豊永 義清杉田 守正河村 研一瀬尾 究高橋 孝行堀 誠
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1987 年 40 巻 4 号 p. 843-865

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抄録

Aminothiazolyloxyiminoacetamido cephalosporin 系剤 (ATOICs) の一つであるCefUzonam (CZON) について, 抗菌力, 吸収・排泄, 髄液中濃度, 髄液移行率, 並びに臨床成績について以下の結果を得た。
1.抗菌力
臨床分離のStaphylococcus aureus (Cefazolin (CEZ) 感受性株, CEZ低感受性株), Escherichiacoli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis に対するCZONの抗菌力を Cefmenoxime (CMX), Latamoxef (LMOX), Cefoperazone (CPZ), Cefmetazole (CMZ), Cefotiam, CEZを対照薬として, 但し, S.aureusの場合にはCPZを除きCefamandole (CMD) を加え, 比較検討した。
S.aureusに対するCZONの抗菌力はCEZ感受性株, 低感受性株とも, 対照とした6薬剤より優れており, そのMIC分布は, 前者に対しては0.10~12.5μg/ml, 後者に対しては0.20~>100μg/mlであつた。MICビークは, それぞれ0.39μg/ml, 0.78~1.56μg/mlであり, 現在, Methicillin-resistantS.au7eus (MRSA) を含め広く使用されているCMZ, CMDより, 感受性株では1~2管, 低感受性株でも2管程度優れていた。E.coli, K.pneumoniae, P.mirabilisに対するCZONのMIC分布 (及びMICピーク) は, それぞれ≤0.025~1.56μg/ml (≤0.025μg/ml), ≤0.025~25μg/mr (≤0.025~0.05μg/ml), ≤0.025~25μg/ml (≤0.025μg/ml) で, 第5群Cephalosporin剤 (CEPs) であるCMX, LMOXとほぼ同様の抗菌力を示した。
2.吸収・排泄
10カ月から15歳までの8名に, CZONを体重kgあたり20mgあてOneshot静注で投与した際の血中濃度推移は, 各症例間に多少のバラツキを認めたが, 平均値で30分48.7μg/mlであり, その後速やかに漸減し, 1時間13.3μg/ml, 2時間3.4μg/ml, 4時間1.14μg/ml, 6時間0.15μg/mlであり, 半減期は0.67~1.47時間, 平均0.87時間であつた。尿中回収率は投与開始後6時間までに24.7~55.9%, 平均45.1%であつた。
3.髄液中濃度, 髄液移行率4.例の化膿性髄膜炎児にCZONを体重kgあたり25mg及び50mg投与後の髄液中濃度を測定した。他の第5群CEPsに最も近い結果を得たのは1例だけで, 静注後約2~2.5時間の髄液中濃度は1.0~5.0μg/mlであり, 髄液移行率は8.0~23.3%であつた。
4.臨床成績
本剤を化膿性髄膜炎十敗血症2例, 化膿性髄膜炎3例, 敗血症・菌血症5例, 気管支肺炎11例, 気管支炎3例, 化膿性リンパ節炎5例, 尿路感染症6例, 敗血症+骨髄炎, 蜂窩織炎, 膿瘍及びサルモネラ感染症各1例, 計39例に使用し, 死亡例である化膿性髄膜炎を判定不能とした以外38例での臨床評価を行い, すべて有効以上の成績を認めた。細菌学的にも33例にて菌を検出し, 評価判定症例31例では, すべて経過中に菌は陰性化した。投与量は化膿性髄膜炎及び敗血症例では90.9~300mg/kg/日とかなり大量を使用したが, 他疾患では60mg/kg/日を標準として使用した。臨床的な副作用としては, 1例に発熱, 1例に点状出血, 1例に下痢を認めた以外は特に重篤なものはなく, 検査値異常も1例にてGOT, GPTの上昇を認めたが, 投与を中止するには至らないものであつた

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