1987 年 40 巻 4 号 p. 883-900
新しく開発されたCefuzonam (CZON) を小児21例において9例中各々3例に本剤10, 20, 40mg/kgをOne shot静注, 12例中各々5, 3, 4例に10, 20, 40mg/kgを1時間点滴静注で投与し, 血清中, 尿中の濃度及び回収率を測定, 化膿性髄膜炎1例に本剤を55.6mg/kg, Oneshot静注で投与し, 髄液中及び血清中の濃度を測定すると共に扁桃炎1例, 肺炎24例, 化膿性髄膜炎・菌血症1例, 尿路感染症7例及びブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群, 化膿性リンパ節炎, 顎関節周囲炎, 上顎洞炎・眼窩膿瘍の各1例, 計37症例に対し本剤を1回平均投与量21.6mg/kgで, 1日3~4回, すべてOne shot静注により, 平均7日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果及び, 本剤を投与したが除外例の6例を加え, 43症例について副作用と臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1.小児9例中各3例に10, 20, 40mg/kgをOneshot静注で投与したところ, CZONの平均血清中濃度はいずれの例も投与5分後に最高濃度を示し, 各々の平均は57.1, 147.2,316.7mcg/mlで, 3投与量群間にDose responseがあり, 平均半減期は各々0.83, 1.10, 0.79時間を示し, 10, 40mg/kg投与量群は類似したが, 20mg/kg投与量群は10, 40mg/kg投与量群の半減期よりやや長かつた。
2.小児12例中各々5, 3, 4例に10, 20, 40mg/kgを1時間点滴静注で投与した場合の血清中濃度はいずれの例も点滴静注開始後1時間すなわち点滴静注終了時が最も高い濃度で, 各々の平均は22.3, 50.3, 76.6mcg/mlを示し, 3投与量群共に同量投与のOne shot静注例の濃度より低い濃度で推移したが, 3投与量群間にDose responseが認められ, 平均半減期は各々0.73, 0.69, 0.91時間で, 10, 20mg/kg投与例は類似し, 40mg/kg投与例の半減期よりやや短かつた。
3.前述の10, 20, 40mg/kg, One shot静注における各3例での平均尿中濃度はいずれの投与量群も投与後0~2時間が最高濃度で, 各々1,283.3, 2, 123.3, 7, 116.7mcg/ml, 投与6時間後までの平均回収率は各々55.0, 57.78, 51.9%で, 3投与量群共に類似した。
4.前述の10, 20, 40mg/kg1時間点滴静注で投与した場合の尿中濃度は各々4, 3, 4例に測定できたが, 40mg/kg投与4例中3例は点滴静注開始後2~4時間で排尿がなかつたことから平均から除外してみると, 3投与量群の平均濃度はいずれも点滴静注開始後0~2時間が最も高い濃度を示し, 各々872.3, 2,955.7, 1,479.5mcg/ml, 点滴静注開始6時間後までの平均回収率は各々45.5, 50.0, 43.1%で, 20mg/kg投与例は他の2投与量群の回収率よりやや高かつた。
5.化膿性髄膜炎1例に対し3病日に本剤を55.6mg/kg, One shot静注で投与し, 投与1時間後に髄液中と血清中の濃度を測定したところ, 各々0.828, 24.5mcg/ml, 髄液・血清比は3.4%であつた。
6.種々の細菌感染症37例に対する臨床効果は35例94.6%が有効以上で, 高い有効率を示した。
7.細菌学的効果は15例で判定でき, 全例に消失がみられ優れた成績が得られた。
8.除外症例を加え43例での副作用は発熱, 発疹に悪心を伴つた例が1例, 血管痛が1例に出現, 種々の臨床検査値では好酸球増多が3例, 直接クームステストで陽性が1例, GPTの異常値が2例にみられた。