The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児感染症におけるImipenem/Cilastatin sodiumの評価
大倉 完悦春田 恒和金本 太珍小林 裕
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1988 年 41 巻 11 号 p. 1715-1720

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抄録

新生児8例, 乳児2例, 計10例の感染症を, Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS)1回10.2~37.7mg/kg (IPM量) を, 1日2~3回, 1時間点滴静注にて治療した。又, うち新生児5例において血中濃度, その1例で髄液中濃度も測定した。
1. 対象疾患は肺炎5例, 尿路感染症, 臍炎, 髄膜炎の疑い, 肛門周囲膿瘍, 敗血症の疑い各1例であった。細菌性と判断できなかったため効果判定から除外した髄膜炎の疑い例を除く9例に対する臨床効果は, 著効4例, 有効5例で, 無効例はなかつた。5例から検出された起炎菌6株 (Staphylococcus aureus2株, Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Streptococcus agalactiae, Bacteroides fragilis各1株) はすべて除菌された。
2. 副作用として, 発疹1例, 血小板, 網状赤血球減少, GOT, GPT上昇を伴う出血斑1例, 検査値異常として, 他にGPT上昇, GOT, GPT上昇を各1例に認めた。いずれも軽度か, 又は本剤中止あるいは投与終了後正常化した。
3. 本剤約20mg/20mg/kg1回1時間点滴静注後の血中濃度は, 点滴静注終了時3例平均IPM 41.3μg/ml, CS 60.9μg/ml, 10.2mg/10.2mg/kgではそれぞれ20.3, 32.2μg/ml, 37.3mg/37.3mg/kgではそれぞれ72.7, 127μg/mlで, 用量依存性が認められた。IPMの半減期は1.14~1.99時間, 一方, CSは日齢による差が著しく, 0~3日例では3.27~5.02時間とIPMより長く, 10, 24日例では0.88, 0.86時間と当該例のIPMより短かつた。
4. 1例で測定した37.3mg/37.3mg/kg1時間点滴静注1時間後の髄液中濃度は, IPM 3.90μg/ml, CS 6.0μg/mlであった。
5. 更に例数を増して検討する必要があるが, 以上の成績は新生児期の単独の初回選択剤として, 本剤が有用である可能性を示唆するものと思われた。

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