1988 年 41 巻 5 号 p. 538-548
Gentamicin (GM) は小児科領域の感染症の治療において重要な薬剤の一つである。しかし本剤は筋肉内注射だけが認可されているため, 四頭筋拘縮症等の副作用の点で小児科領域では使用しにくい。近年ようやく成人領域で静脈内投与が許可され, 小児科領域でも静脈内投与例についての検討が散見されるようになった。そこで今回我々は小児科領域におけるGMの点滴静注時の基礎的, 臨床的検討を行うためにGM小児科領域研究会を組織し以下の結果を得た。
1. GM体重kg当り2.0~2.5mg (最大60mg/回) を30分~1時間かけて点滴静注し, 従来報告されている筋肉内投与と同様に4~12μg/mlの有効血中濃度が得られた。
2. 点滴静注後6時間まで高濃度の尿中濃度が得られ, 尿中回収率は約60%であつた。
3. 本研究会に142例の症例が集められ, その内117例について検討した。疾患別臨床効果では肺炎30例/30例 (100%), 尿路感染症59例/60例 (98.3%), 皮膚軟部組織感染症12例/13 例 (92.3%), 合計94.9%の有効率であつた。
4. 細菌学的効果の検討ではStaphylococcus aureus8例/10例 (80%), Pseudomonas aeruginosa 3例/5例 (60%), Haemolphilus influenzae7例/7例 (100%), Escherichia coli 44例/45例 (97.8%), 合計92.4%の消失率であつた。混合感染例は6例/7例 (85.7%) であつた。
5. 聴力障害, 腎障害, アレルギーなどの副作用は認めなかつた。検査値異常は合計5.6%に認められ, その内訳はGOT上昇 (3.1%), GPT上昇 (3.9%), 血小板増多 (1.5%), 好酸球増多 (0.8%) であった。
以上からGMの点滴静注は小児科領域では有用な方法である。