The Japanese Journal of Antibiotics
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尿路真菌感染症に対するFluconazoleの臨床的検討
仁藤 博
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1989 年 42 巻 1 号 p. 171-178

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抄録

トリアゾール系に属する新抗真菌剤Fluconazoleは尿路真菌感染症の主要な起因菌であるCandida属真菌に強い抗菌活性を有すると共に, 主に尿中に未変化体のまま排泄されることから, 尿路真菌症に対し有用であることが期待されたので臨床的検討を実施した。
尿路に基礎疾患を有する複雑性尿路感染症で, 投与前に複数回の尿検査を行い, いずれも真菌が104CFU/ml以上培養され, 一般細菌は陰性又は103CFU/ml未満の例を対象とした。7例に投与を行い, 男性6例, 女性1例, 年齢29~83歳であった。
Fluconazoleは1回50mgを1日1回, 14~42日間経口 (4例) 又は静脈内 (3例) 投与した。起因真菌はCandida albicans5例, Candida tropicalis2例と全例Candida属真菌であった。
効果判定は河田らが報告している方法に準拠して行った。
経口投与4例では著効1例, 有効3例, 静脈内投与3例では著効2例, 無効1例であつた。真菌は経口投与群ではC. albicans3株, C. tropicalis1株すべて消失し, 静脈内投与ではC. albicans2株, C. tropicalis1株中C. albicans1株が存続した。投与後に真菌が消失した例のうち, 一般細菌が103CFU/ml未満であった4例では, 75%で膿尿が正常化した。
副作用として経口投与の1例に-過性の下痢が認められたが, 何ら処置することなく正常便に復した。又, 臨床検査値異常は認められなかった。
以上の結果から, Fluconazoleは1回50mg1日1回の経口又は静脈内投与でCandida属真菌を起因菌とする尿路真菌感染症に対し, 有効かつ安全な薬剤であると考えられた。

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