The Japanese Journal of Antibiotics
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42 巻, 1 号
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  • 山口 英世, 内田 勝久, 川崎 賢二, 松永 敏幸
    1989 年 42 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規トリアゾール系抗真菌剤Fluconazoleのin vitro抗真菌活性, 特にCandida albicansに対する活性について検討を行い, 以下の成績を得た。
    1. 本剤の抗菌試験に適した培地を選定するために, 培地組成及びpHを種々検討した結果, 中性pHのSynthetic amino acid medium, fungal (SAAMF) を用いた場合に最も高い抗菌効果が得られることが確認された。
    2. SAAMF (pH7.4) を用い, 生菌数を指標としてFluconazoleに高い感受性を示すC. albicans株の発育に対する影響を経時的に測定したところ, 薬剤濃度と共に発育阻止効果は増大し, 1μg/mlの濃度では99%の阻止を示した。しかし, それ以上は薬剤濃度を高くしても阻止レベルは上昇せず, 80μg/mlでも100%阻止は得られなかつた。
    3. 上記の測定法により99%阻止濃度 (IC99) を指標としてC. albicansその他の医学的に重要な酵母4属9菌種67株に対するFluconazoleの抗菌活性を測定した。最も高い感受性を示した菌種はC. albicans及びCandida kefyrであり, 反対にCandida glabrata, Cryptococcus neoformans及びTrichosporon cutaneumの感受性は最も低く, 前2菌種に対するIC99の範囲は0.20~0.39μg/ml, 後3菌種では3.13~12.5μg/mlであった。このようなFluconazoleの抗菌力は同一条件下で測定したKetoconazoleやMiconazoleの1/10~1/100程度低かつた。
    4. 医学的に重要なAspergillus 4菌種に対するFluconazoleの抗菌活性を, 菌体蛋白量を指標として測定した。Aspergillus fumigatusに対するIC50及びIC90は, それぞれ24~44μg/ml, 50~>100μg/mlであり, 他の菌種についてはこれと同程度か又は幾分低い値が得られた。
    5. Fluconazoleの抗Candida活性は, 血清の影響をほとんど受けなかつた。又, C. albicansの菌糸形発育を促進する血清添加培地中での菌糸形発育及び発芽管伸長を0.20μg/ml以下の低濃度で有意に阻害した。
    6. Fluconazole 1μg/mlを含む反応液中では, 薬剤無添加の場合に比べてマウス腹腔由来食細胞に貪食されたC. albicansの発芽管形成・伸長は有意に阻害された。
  • 健常成人男子志願者を対象とした内服及び静注による検討
    柴 孝也, 斎藤 篤, 宮原 正
    1989 年 42 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    トリアゾール系という新しい化学構造を有する抗真菌剤Fluconazole単回内服及び静注時の安全性と体内動態について検討した。
    健常成人男子志願者8名を対象とし, Fluconazole 25mg内服, 50mg内服, 25mg静注, 50mg静注, 100mg内服の順に単回使用し, 安全性の検討並びに血漿中濃度, 尿中濃度の測定を行つた。なお, 100mg内服は6例について検討した。
    Fluconazoleの濃度測定は血漿中濃度については高速液体クロマトグラフィー法, 尿中濃度についてはガスクロマトグラフィー法にて実施した。
    内服した場合, 血漿中濃度は速やかに上昇し, Cmaxは25mg内服0.53μg/ml, 50mg内服 0.92μg/ml, 100mg内服1.88μg/mlであり, 明瞭な用量相関を示した。Tmaxは25mg内服0.7時間, 50mg内服1.4時間, 100mg内服1.7時間であつた。Cmax到達後は緩やかに減衰し, 半減期は約31時間であつた。
    静注例では血漿中濃度は二相性を示し, 静注後30分までは内服例よりも高い血漿中濃度を示し, 急速に減衰した。静注後1時間以降の血漿中濃度は内服の場合と近似した推移を示した。
    Fluconazole内服後2時間の尿中未変化体濃度は25mg8.0μg/ml, 50mg 9.5μg/ml, 100mg 38.7μg/mlと高い値を示し, その後12時間までほぼ同じ尿中濃度を保つた。
    静注例における尿中濃度推移は内服例のそれとほぼ同様であつた。尿中回収率は120時間までにいずれも約70%であった.
    AUC0~∞は25mg内服20.3μg・hr/ml, 25mg静注19.2μg・hr/ml, 50mg内服34.7μg・hr/ml, 50mg静注39.0μg・hr/ml, 100mg内服86.9μg・hr/mlで, 内服例と静注例に差を認めなかつた。
    内服例の分布容積は55~59Lで, ほぼ被検者の総水分量に相当する値を示した。自他覚的副作用及び臨床検査値に特記すべき異常は認められなかつた。
  • 岡 慎一, 時津 学, 毛利 洋, 中田 光, 後藤 美江子, 後藤 元, 島田 馨
    1989 年 42 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    12例の深在性真菌症 (カンジダ食道炎7例, カンジダ肺炎2例, カンジダ血症1例, クリプトコックス髄膜炎1例, 全身性クリプトコックス症1例) に対してFluconazoleを使用し, その有効性を検討した。
    Fluconazoleは判定不能のカンジダ肺炎1例を除き, 他の全例において有効であつた。本剤との関係は確定できなかつたが, 本剤使用中1例に吃逆が認められた。
    透析症例にFluconazole150mg (200mg) 経口使用時20時間後の血清中濃度は5.9μg/ml (11.6μg/ml), 髄液中濃度は3.5μg/ml (9.2μg/ml) であつた。
    以上の成績から, Fluconazoleは深在性真菌症, 特にカンジダ食道炎, 遷延性クリプトコックス髄膜炎例に対する有用な抗真菌剤と考えられた。
  • 米田 良蔵
    1989 年 42 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fluconazoleはトリアゾール系に属する新しい抗真菌剤で, Aspergillus属真菌に対し, マウスを用いた感染防御試験成績でKetoconazoleの約15倍強力な抗真菌作用を示したと報告されている。
    著者は慢性難治性呼吸器疾患である肺アスペルギローマ症例6例に本剤400mgを1日1回, 23~110日間 (平均70日間) 連続経口投与し, 臨床効果と安全性の検討を行つた。
    対象の選択は, 1. 胸部X線所見で明らかなFungus ballを認める, 2. 喀痰培養において Aspergillusを連続的に証明, 3. Aspergillusに対する血清沈降抗体を証明, 以上の3項目中2項目を満たす例とした。
    臨床効果は6例中Fungus ballの著明な縮少を認めた「有効」2例, 軽度縮小又は臨床所見の改善を認めた「やや有効」2例, 「無効」2例であつた。長期投与例においても自他覚的副作用及び臨床検査の異常変動は認められなかつた。
  • 外山 圭助, 林 洸洋, 北条 均, 津田 明瑞, 鳥居 泰志, 吉川 治
    1989 年 42 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    造血器悪性腫瘍に併発した深在性真菌症7例にFluconazoleを1日100~400mg静脈内投与し, 有効性と安全性を検討した。
    造血器悪性腫瘍の内訳は急性リンパ性白血病1例, 急性骨髄性白血病1例, 急性骨髄単球性白血病2例, 悪性リンパ腫2例, 骨髄異形成症候群1例であつた。起因菌が分離できた4例はすべてCandida属真菌で, Candida albicans 2例, Candida parapsilosis 1例, Candida krusei 1例であつた。
    感染症診断名はカンジダ肺炎3例, カンジダ血症1例, 真菌血症の疑い3例であつた。有効性の評価は起炎菌が分離できた4例について行つた。総合臨床効果はカンジダ肺炎の3例では有効2例, やや有効1例で, カンジダ血症の1例は有効と判定し, 有効率は75%であつた。真菌学的効果は消失3例, 減少1例であつた。
    自・他覚的副作用症状は1例もみられず, 又, 臨床検査成績においても本剤投与に起因すると考えられる異常値はみられなかつた。
  • 森 健, 松村 万喜子, 江部 司, 高橋 まゆみ, 小原 共雄, 稲垣 正義, 礒沼 弘, 日比谷 一郎, 浜本 恒男, 渡辺 一功, 池 ...
    1989 年 42 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいTriazole系抗真菌剤であるFluconazoleを真菌感染症11例 (カンジダ尿症1例, 肺クリプトコックス症1例, カンジダ血症3例, カンジダ眼内炎3例, アスペルギルス肺梗塞1例, 肺ペニシリウム症1例, 真菌による肺感染症の疑い1例に投与した。治療効果は判定が可能であつた9例のうち8例に, 良好な結果を得た。
    副作用として1例に胃腸症状, 1例に白血球減少を認めたが, いずれも軽度であつた。
    以上の結果から, 本剤は深在性真菌症に対しては有望な薬剤と考える。
  • 池本 秀雄, 渡辺 一功, 森 健, 谷内 昭, 赤保内 良和, 三国 主税, 吉田 弘喜, 笠井 正晴, 川村 憲一, 吉田 司, 今野 ...
    1989 年 42 巻 1 号 p. 63-116
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ファイザー社により開発された新しいトリアゾール系抗真菌剤のFluconazoleは静脈内及び経口投与ができ, 血中濃度半減期が約30時間と長く1日1回の投与で治療が可能であるなどの特徴を有し, 又, 安全性が高いことからその有用性が期待される薬剤である。
    今回我々は深在性真菌症を対象に経口及び静脈内投与合計170例の患者に本剤を投与し, 効果判定のできた99例につき検討を行つた。
    臨床効果はカンジダ症では87.2% (41例/47例), クリプトコックス症では66.7% (10例/15 例), アスベルギルス症では48.6% (17例/35例) の有効率であり, ムーコル症と酵母血症それぞれ1例には有効であつた。
    安全性は166例につき検討され, 副作用は10例にみられたが, 特に重篤なものはなく発現率は6%であつた。臨床検査値異常は32例にみられたが, ほとんどが軽度の一過性の変化であり, 発現率は19.3%であつた。
    これらの結果から, Fluconazoleは深在性真菌症に対し有用性の高い薬剤であると考えられた。
  • 丸田 壱郎, 松崎 道男, 府川 仁哉, 児玉 文雄
    1989 年 42 巻 1 号 p. 117-126
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    白血病に合併した深在性真菌症6例にFluconazole 100~400mg/日の投与量で静脈内投与し臨床的検討を行つた。
    基礎疾患となつた白血病の種類は急性リンパ性白血病4例, 急性骨髄性白血病1例, 急性骨髄性単球性白血病 (AMMoL) 1例で, 起因真菌はすべてCandida属真菌であつた。感染症診断名はカンジダ肺炎, 気管支カンジダ症3例, カンジダ尿症2例, 敗血症疑い及び口腔内カンジダ症合併1例であつたが, カンジダ尿症の1例は基礎疾患 (AMMoL) のため死亡したので, 有効性の評価は5例について行われた。
    総合臨床効果はカンジダ肺炎, 気管支カンジダ症の3例と敗血症疑い, 口腔内カンジダ症の1 例は有効, カンジダ尿症の1例は著効と判定され, 有効率は100%であつた。
    自他覚的副作用症状は1例もみられず, 臨床検査成績において血清トランスァミナーゼ活性と Al-Pの上昇が2例に, 血清クレアチニンの上昇が1例に認められたが, 原疾患である白血病及び白血病に対する治療薬の影響と考えられた。
  • 肺クリプトコックス症並びに肺アスペルギルス症に対する本剤の効果とその血中動態について
    中島 道郎
    1989 年 42 巻 1 号 p. 127-137
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 新しい抗真菌剤Fluconazoleを原発性肺クリプトコックス症2例, 肺アスペルギルス症2例に試用した。
    2. 投与法は経口で1日1回400mgを, 1例には2週間, 2例には4週 (31日) 間連日投与した。肺アスベルギス症の1例には50mg 4週間, 100mg 6週間, 400mg 4週間投与した。
    3. 成績は肺クリプトコックス症の2例は著効, 肺アスベルギルス症の2例は無効であつた。
    4. 経口400mg投与の3例について, その血中動態を観察した。
    血中最高濃度到達時間は2~4時間。血中最高濃度は初日平均10.3μg/ml, 7日目平均30.6μg/ml。投与5~7日間で定常状態に達し, その際の内服直前の血中濃度の平均は約21~23μg/ml, 4週間後のそれは平均26.6μg/mlであつた。又, 血中濃度半減期は初日平均34.4時間, 4週間投与終了後24~168時間におけるそれは37.2時間であつた。
    5. 本剤に原因すると思われる副作用は認められなかつた。
  • 李 永浩, 塩田 哲広, 池田 貞雄, 桂 敦史, 塙 健, 八木 一之, 小鯖 覚, 畠中 陸郎, 松原 義人, 二宮 和子, 船津 武志
    1989 年 42 巻 1 号 p. 138-143
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    肺真菌症10例 (原発性肺クリプトコックス症7例, 肺アスペルギルス症3例) に最近開発されたBis-triazole系の抗真菌剤であるFluconazoleを点滴静注ないしは内服投与し, その治療効果及び副作用について検討を行った。効果判定可能であったのは外科的に病巣部の完全切除が行われた肺クリプトコックス症の2例を除く8例である。肺クリプトコックス症では有効2 例, やや有効3例であった。肺アスペルギルス症ではアスペルギルス肺炎の1例に対して著効を示し, 肺アスペルギロームの2例ではやや有効1例, 無効1例であった。副作用は点滴静注投与 (9例) で嘔気・食欲不振 (3例), 発熱・体熱感 (3例), 血管痛 (1例), 下痢と発疹 (1 例) が出現したが特に重篤なものは認めなかった。経口投与ではGOT, GPT, Al-P, γ-GTPの上昇を1例に, γ-GTPの上昇を1例に認めた。臨床効果, 副作用からみてFluconazoleは原発性肺真菌症に有用であると考える。
  • 矢木 晋, 渡辺 正俊, 中島 正光, 築山 邦規, 守屋 修, 日野 二郎, 二木 芳人, 副島 林造
    1989 年 42 巻 1 号 p. 144-152
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    英国ファイザー社で合成された新しいトリアゾール系の抗真菌剤であるFluconazoleの治療成績を報告した。対象症例は12例あり, カンジダ感染症が8例 (カンジダ血症4例, カンジダ血症十カンジダ尿症1例, カンジダ尿症1例, 食道カンジダ症1例, カンジダ性肝膿瘍1例), 肝アスベルギルス症2例, 肺クリプトコックス症1例そして同定不能の酵母様真菌による真菌血症1例であった。真菌学的効果では11例が菌消失, 又, 残りの1例は菌減少を示し, 極めて高率に真菌の陰性化を認めた。総合臨床効果では著効2例, 有効8例, やや有効2例の成績を得, 副作用の出現はいずれの症例においても認めなかった。
    Fluoonazoleは経口及び静脈内投与が可能で, 且つ血中半減期が25~30時間と長く, 組織移行性も極めて良く, 又, 一般毒性も低いため, 深在性真菌症に対して優れた臨床的有用性が期待され下いる。今回の検討でも有効率は83.3%と優れた効果が得られ, 特にカンジダ感染症に対す多有効性時高いものであった。又, 全例に副作用は認めておらず, 本剤は真菌症とりわけ深在性裏菌症に対して, 極めて高い有用性が期待される薬剤であると考えられた。
  • 松島 敏春, 池田 博胤, 富澤 貞夫, 中村 淳一, 安達 倫文, 川西 正泰, 田辺 潤, 田野 吉彦
    1989 年 42 巻 1 号 p. 153-163
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    4例の深在性真菌症に対してFluconazoleを経口使用した。使用量は1日100~300mgで, 使用期間は8日間から6カ月間に及んだ。
    Candidaによる敗血症と舌潰瘍を伴う口内炎では, 重篤な基礎疾患があるにもかかわらず, 症状・所見は速やかに改善し, 菌陰性化も得られ, 極めて有効であつた。
    2例のアスペルギローマにおいても, 菌球の消失, 縮小を認め, 菌陰性化も得られ, 臨床的には極めて有効であろうと考えられた。しかし, Fluconazoleのこれら分離Aspergillusに対する発育阻止濃度は2例におけるFluconazoleの血中濃度よりもはるかに高く, 臨床的有効性との間に大きなギャップがあった。この差を説明できる所見が現在得られていないので, 更に今後検討する必要がある。
    アスペルギローマの2例ではFluconazole100~200mg/日の内服6カ月間, カンジダ症では100~300mg/日の内服8~13日間使用したが, 胃腸障害を始めとする副作用はなく, 臨床検査値の異常も認められなかった。
    以上から, 本薬剤の真菌感染症に対する有用性が示唆された。
  • 荒井 祥二朗, 井口 光正, 神谷 齊, 櫻井 實
    1989 年 42 巻 1 号 p. 165-170
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fluconazoleはトリアゾール系の抗真菌剤で, Candida, Aspergillis, Cryptococcusなどに対して強い作用を持ち, 経口又は静脈内投与した場合いずれも各臓器に広く分布するため, 深在性真菌症に対して効果が期待できる薬剤である。又, その血中濃度半減期が25~30時間と長いことから, 1日1回の投与で効果が期待できる。
    我々は真菌感染症のリスクが高い4症例に対して予防的に, 及び3例の深在性真菌感染症に対する治療として本剤を経口的に投与した。3例の真菌感染症の起炎菌はすべてCandida albicansで, 疾息は肺炎, 口腔内感染症, 消化管感染症各1例であった。臨床評価を行つた3例はすべて臨床症状の改善があり, C. albicansは消失し, 総合効果は有効であった。予防的投与を行つた4例においても, 剖検所見にて明らかな真菌感染は認められなかった。
    Fluconazoleは臨床的に問題となるような副作用の出現もなく, 小児でも比較的安全に使用できるものと思われた。
  • 仁藤 博
    1989 年 42 巻 1 号 p. 171-178
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    トリアゾール系に属する新抗真菌剤Fluconazoleは尿路真菌感染症の主要な起因菌であるCandida属真菌に強い抗菌活性を有すると共に, 主に尿中に未変化体のまま排泄されることから, 尿路真菌症に対し有用であることが期待されたので臨床的検討を実施した。
    尿路に基礎疾患を有する複雑性尿路感染症で, 投与前に複数回の尿検査を行い, いずれも真菌が104CFU/ml以上培養され, 一般細菌は陰性又は103CFU/ml未満の例を対象とした。7例に投与を行い, 男性6例, 女性1例, 年齢29~83歳であった。
    Fluconazoleは1回50mgを1日1回, 14~42日間経口 (4例) 又は静脈内 (3例) 投与した。起因真菌はCandida albicans5例, Candida tropicalis2例と全例Candida属真菌であった。
    効果判定は河田らが報告している方法に準拠して行った。
    経口投与4例では著効1例, 有効3例, 静脈内投与3例では著効2例, 無効1例であつた。真菌は経口投与群ではC. albicans3株, C. tropicalis1株すべて消失し, 静脈内投与ではC. albicans2株, C. tropicalis1株中C. albicans1株が存続した。投与後に真菌が消失した例のうち, 一般細菌が103CFU/ml未満であった4例では, 75%で膿尿が正常化した。
    副作用として経口投与の1例に-過性の下痢が認められたが, 何ら処置することなく正常便に復した。又, 臨床検査値異常は認められなかった。
    以上の結果から, Fluconazoleは1回50mg1日1回の経口又は静脈内投与でCandida属真菌を起因菌とする尿路真菌感染症に対し, 有効かつ安全な薬剤であると考えられた。
  • 高橋 洋文, 木村 康隆, 比留間 政太郎, 久木田 淳
    1989 年 42 巻 1 号 p. 179-188
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    化膿性皮膚疾患14例に対してFosfomycin (FOM) 錠1.5~3gを一週間経口投与し, 有効性, 安全性を検討した結果, 次のような成績が得られた。
    1. 臨床的有効率は71.4%, 細菌学的消失率は71.4%であった。
    2. 副作用として下痢, 腹痛が3例に認められたが, いずれも投与量減量, 投与中止にて症状は軽快した。
    3. 有効性並びに, 安全性から有用率は71.4%と判定した。
    以上のことから, FOM錠は従来のカプセル剤と同等の有用性を持つ薬剤と評価した。
  • 千村 哲朗, 平山 寿雄, 小川 哲司, 椎名 有二
    1989 年 42 巻 1 号 p. 189-192
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域の術後感染予防に対し, Latamoxef (LMOX) とTobramycin (TOB) を50例に点滴静注し, TOBの血中濃度を測定し, Aminoglycoside系抗生物質との併用投与時の腎機能に対する影響を臨床的に検討し, 以下の結果を得た。
    1. TOB 90mg+LMOX 1g点滴静注投与時のTOBの血中濃度の測定では, 点滴静注終了時にPeakを示し, 以後急減したが, 最高濃度及び次回投与開始時の濃度は安全域内であった。
    2. 術前後の臨床検査で, 腎機能マーカー (BUN, クレアチニン, β2-Microglobulin, N-Acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG) の検討では, 術後7日目にBUN, NAGで若干の上昇傾向を示したが有意差は認められなかった。
    3. その他の臨床検査値の異常及び自他覚的副作用の出現は認められなかった。
  • 小池田 聡, 岡部 博之, 柴田 仁美, 長谷 哲, 中西 義信, 桶崎 英一, 加藤 日出男, 正宗 行人
    1989 年 42 巻 1 号 p. 193-199
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Lomefioxacin (NY-198,(±)) 1-Ethyl)-6, 8-difluoro-1, 4-dihydro-7-(3-methyl-1-piperazinyl)-4-oxo-3-quinolinecarboxylic acid hydrochloride) はグラム陰性菌のEscherichia coliだけでなくグラム陽性菌であるStaphylococcus aureusにも優れた抗菌力を持つピリドンカルポン酸の誘導体である。
    In vivo, in vitroの実験によりこの薬剤はE. coliのDNAジャイレースを特異的に阻害するDNA合成阻害剤であることが分かつた。
  • 公文 裕巳, 水野 全裕, 那須 良次, 津川 昌也, 岸 幹雄, 大森 弘之
    1989 年 42 巻 1 号 p. 200-207
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいアミノ配糖体系抗生物質Arbekacin (HBK) を健康成人3例, 腎機能障害患者6例に投与し, 血中濃度及び尿中排泄を検討した。血中濃度は, 微生物学的測定法 (Bioassay法), 螢光偏光イムノアッセイ法 (FPIA法) 及び高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法で測定した。腎援能の指標としては24時間内因性クレアチニン・クリアランス(Ccr)を用い, 薬動力学的解析はTwo-compartment modelこ従つた。腎機能低下に伴い血中濃度は高く推移し, 尿中回収率は低下する傾向が認められ, Ccrと血中濃度半減期, Ccrと濃度曲線下面積との間にそれぞれ有意の双曲線的相関関係が認められた。又, Bioassay法, FPIA法, HPLC法の成績はそれぞれよく相関した。
  • 飯岡 秀晃, 森山 郁子, 南淵 芳, 片上 佳明, 久永 浩靖, 辻 祥雅, 一條 元彦
    1989 年 42 巻 1 号 p. 208-211
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新開発の抗生剤であるCefodizimo (THR-221, CDZM) の基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    1. CDZMの婦人内性器各組織への移行性は良好であった。
    2. 子官内膜炎1例, 子官溜膿腫2例, 外陰部膿瘍1例, バルトリン腺膿瘍1例に本剤1gを1日2回, 4~8日間点滴静注あるいは, One shot静注を行い, 全例に総合効果として有効を認めた。本剤によると考えられる副作用及び臨床検査値異常は認めなかった。
  • Cefotiamとの比較対照試験
    馬場 駿吉, 森 慶人, 鈴木 賢二, 海野 徳二, 川堀 真一, 柳内 統, 野中 聡, 高坂 知節, 粟田口 敏一, 古内 一郎, 谷垣 ...
    1989 年 42 巻 1 号 p. 212-247
    発行日: 1989/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    急性化膿性中耳炎及び慢性化膿性中耳炎急性増悪症に対するCeftriaxone (CTRX) 1日1g, 分1投与による有効性及び安全性をより客観的に評価するためCefotiam (CTM) 1日29, 分2投与を比較対照薬として, 封筒法による群間比較試験を実施し, 以下の結論を得た。
    1. 委員会判定による臨床効果は急性化膿性中耳炎ではCTRX群71%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ63%, 60%を示し, 全例においては両群共に64%の有効率を示し両群間に有意差は認められなかった。
    2. 主治医判定による臨床効果は急性化膿性中耳炎ではCTRX群65%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ72%, 60%, 又, 全例ではそれぞれ70%, 64%の有効率であったが, 両群間に有意差は認められなかった。
    3. 細菌学的効果は急性化膿性中耳炎ではCTRX群88%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ74%, 62%, 又, 全例ではそれぞれ76%, 67%の菌陰性化率を示したが, 両群間に有意差は認められなかった。
    4. Staphylococcus aureus単独感染に対して, CTRXはCTMと同等の臨床効果, 細菌学的効果が認められた。
    5. 副作用はCTRX群5例 (4%), CTM群3例 (3%) に発疹, 嘔気, 気分不良等が認められ, 又, 臨床検査値異常はCTRX群においてだけ3例 (5%) にGOT上昇, GPT上昇, Al-P上昇, 血小板減少が認められたが, いずれも中等度以下の一過性のものであり, 両薬剤とも安全性は高いものと考えられた。
    6. 有用性は急性化膿性中耳炎において, CTRX群71%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ72%, 62%, 又, 全例ではそれぞれ72%, 66%の有用率を示したがいずれも両群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績から, CTRXは化膿性中耳炎の治療に際し, 1日1g 1回投与にて有用性の高い薬剤であると結論できる。
    CTRXのように外来で1日1回投与でその治療目的を達し得る薬剤は, 治療の簡便性の上からも優れた有用性を持つものと考えられる。
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