急性化膿性中耳炎及び慢性化膿性中耳炎急性増悪症に対するCeftriaxone (CTRX) 1日1g, 分1投与による有効性及び安全性をより客観的に評価するためCefotiam (CTM) 1日29, 分2投与を比較対照薬として, 封筒法による群間比較試験を実施し, 以下の結論を得た。
1. 委員会判定による臨床効果は急性化膿性中耳炎ではCTRX群71%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ63%, 60%を示し, 全例においては両群共に64%の有効率を示し両群間に有意差は認められなかった。
2. 主治医判定による臨床効果は急性化膿性中耳炎ではCTRX群65%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ72%, 60%, 又, 全例ではそれぞれ70%, 64%の有効率であったが, 両群間に有意差は認められなかった。
3. 細菌学的効果は急性化膿性中耳炎ではCTRX群88%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ74%, 62%, 又, 全例ではそれぞれ76%, 67%の菌陰性化率を示したが, 両群間に有意差は認められなかった。
4.
Staphylococcus aureus単独感染に対して, CTRXはCTMと同等の臨床効果, 細菌学的効果が認められた。
5. 副作用はCTRX群5例 (4%), CTM群3例 (3%) に発疹, 嘔気, 気分不良等が認められ, 又, 臨床検査値異常はCTRX群においてだけ3例 (5%) にGOT上昇, GPT上昇, Al-P上昇, 血小板減少が認められたが, いずれも中等度以下の一過性のものであり, 両薬剤とも安全性は高いものと考えられた。
6. 有用性は急性化膿性中耳炎において, CTRX群71%, CTM群86%, 慢性化膿性中耳炎ではそれぞれ72%, 62%, 又, 全例ではそれぞれ72%, 66%の有用率を示したがいずれも両群間に有意差は認められなかった。
以上の成績から, CTRXは化膿性中耳炎の治療に際し, 1日1g 1回投与にて有用性の高い薬剤であると結論できる。
CTRXのように外来で1日1回投与でその治療目的を達し得る薬剤は, 治療の簡便性の上からも優れた有用性を持つものと考えられる。
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