The Japanese Journal of Antibiotics
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血中有効濃度を得るためのイミペネム/シラスタチン投与量設定, 評価へのアプローチ
1濃度ディスク (1, 2, 5, 10, 30μg含有ディスク) 感受性結果の定量的利用とその臨床的意義
松尾 清光植手 鉄男
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1989 年 42 巻 11 号 p. 2377-2392

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抄録

1. 本研究においては, イミペネム (IPM) の各種臨床分離菌株への抗菌力 (MIC) の測定及びディスク感受性結果の定量的吟味, 検討を行った。昭和及び自家製ディスク (共に8mm直径30μg含有) の阻止円直径とMIC実測値を比較し, その4分類評価及び3分類評価の信頼性を究明した。30μg含有ディスクではMIC3μg/ml以下の菌株を細分類できない。MIC3μg/ml 以下に分布する菌株を細分類するため, 1, 2, 5, 10μg含有8mm直径の4種類の低濃度ディスクを作成し, それぞれの阻止円直径とMIC実測値から, これらディスクの感受性テストの有用性を検討した。
2.1988年1月から6月に至る間, 北野病院 (大阪市) において, 各種臨床材料から分離された413菌株に対するIPMのMIC実測値からするとStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Group A Streptococcus, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Indole (-),(+) Proteus, Haemophilus influenzae, Pseudomonas aeruginosa, Serratia spp., Enterobacter spp., Citrobacter freundii, Acinetobacter anitratusの70%以上の菌株の発育がほぼ1μg/ml以下の濃度で阻止された。Xanthomonas maltophiliaに対するMICはすべて100μg/ml以上であった。
3. S. aureusに対するIPM, セファゾリン (CEZ), ミノサイクリン (MINO) のMIC80はそれぞれ25, 100, 0.39μg/mlであった。IPMのMICピーク値は0.025μg/ml以下に認められたが, CEZ, MINOではそれぞれ0.39, 0.10μg/mlであった。P. aeruginosaに対するIPM, セフタジジム (CAZ), アズトレオナム (AZT) のMIC80はそれぞれ1.56, 6.25, 25μg/mlであった。又, IPM, CAZのMICピーク値はそれぞれ0.78, 3.13μg/mlであった。AZTは3.13~6.25μg/mlにMICピーク値がみられた。
4.30μg含有昭和及び自家製ディスクでの感受性結果を阻止円直径から分類し,(+++) をMIC≤3μg/ml,(++)>3~15μg/ml,(+)>15~60μg/ml,(-)>60μg/mlとした場合, 両ディスクとも阻止円直径とMIC実測値との間に良好な負の相関関係がみられた。両ディスク結果からMIC概値を推定することは可能であり, 信頼性は高い。False positiveは0.3~2.6%, False negativeは0.3~2.3%であった。
5. 低濃度 (1, 2, 5, 10μg含有) ディスク阻止円直径から, 10μg又は5μg含有ディスクではMIC約1μg/ml以下, 約1~3μg/ml, 約3μg/ml以上の菌に分類することができた。2μg及び1μg含有ディスクでは, 約1μg/ml以上と以下の菌に分類することができた。
6. 低濃度ディスクを感受性検査に使用することは, IPMの血中濃度, 組織内濃度がMIC 以上にあるかどうか, 更にMICの何倍以上あるかをより正確に推定でき, IPM投与量設定, 評価により有用である。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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