The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児, 未熟児におけるCefmenoximeの基礎的・臨床的検討
豊永 義清杉田 守正黒須 義宇堀 誠瀬尾 究
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1989 年 42 巻 12 号 p. 2593-2606

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抄録

Cefmenoxime (CMX) で治療又は感染予防のために使用した日齢0~24日までの成熟児, 未熟児41例について10, 30mg/kgをOne shot静注, 20mg/kgについて更に1時間点滴静注を加え, その後の血清中濃度推移及び尿中回収率を検討した。例数が少ないため, 成熟児, 未熟児に分けて解析せず, 新生児として, 日齢ごとに3日以内, 4~7日, 8日以上と3群に分けて比較検討した。臨床的検討を行つたのは, 生後1~29日の男児7例, 女児1例であり, その内訳は敗血症, 中耳炎, 蜂窩織炎がそれぞれ1例, 肺炎3例, 尿路感染症が2例であつた。
1. 血清中濃度推移及び尿中回収率
(1) 10mg/kg, One shot静注
3群のピーク値はいずれも初回採血時 (30分) にあり, 28.9μg/ml, 29.5μg/ml, 29.1μg/ml であり, その後, 各群とも緩徐に低下し, 6時間でも一番低い8日以上の群でも平均1.9μg/ml を示していた。半減期も, 日齢が進むに従い短縮しており, 平均で3.0時間, 1.9時間, 1.4時間であつた。尿中回収率は6時間まで検討した例は3例であつたが, 68.9~84.9%とかなり高いものであつた。又, 2時間までの検討でも15.4~66.2%の回収率を示した。
(2) 20mg/kg, One shot静注
3群とも30分にピークを示し, 65.2μg/ml, 60.5μg/ml65.8μg/mlで有意差を認めず, 濃度の低下も緩徐で, 6時間でも20.1μg/ml, 6.5μg/ml, 9.5μg/mlとかなり高い値を示していた。半減期は0~3日群3.5時間, 4~7日群1.7時間, 8日以上群は1.9時間と, 4日以降で半減期が逆転した結果を得た。これは8日以上の群での検討が, 全例, 未熟児であり, そのうち2例が測定時でも2, 000g以下の低体重であることが影響していると考える。尿中回収率は 6時間まで検討した4例では, 37.0~89.4%であり, 広い範囲であつた。
(3) 20mg/kg, 1時間点滴静注各群とも点滴静注終了時にピーク値を示し, 57.7μg/ml, 60.2μg/ml, 72.4μg/mlであり, 6 時間値も19.1μg/ml, 7.4μg/ml, 8.8μg/mlと高い値を示していた。半減期は4日以上群では
1.7時間であり, 3日以内群は3.2時間を示していた。尿中回収率は2例の検討で33.3%,
60.9%であつた。(4) 30mg/kg, One Shot静注
3例の検討で, 2~6日齢で30分~1時間にピークを示し, 98.7~108.0μg/mlであり, 半減期は1.5~4.7時間であつた。尿中回収率は3~4時間までに, 19.3%, 22.0%であつた。
2. 臨床成績
8例で検討し, CMX50~160mg/kg/日の投与量を3~4回に分注し, 投与した。8例の内訳は肺炎3例, 尿路感染症2例, 中耳炎, 蜂窩織炎, 敗血症それぞれ1例で, 全例有効以上の成績であつた。全例から菌が検出され, Staphylococcus aureus 2例, Streptococcus pneumoniae 3例, Escherichia coli 2例, Klebsiella pneumoniae 1例はいずれも経過中に消失した。
3. 投与量, 投与回数
20mg/kgでの投与量において, ばらつきはあるものの, 6時間でも最低3μg/mlを維持しており, 半減期も日齢により若干異なるものの1.7~3.5時間であり, これにCMXの優れた抗菌力を考慮し, 1日の投与量を検討すれば, 今回検討を加えた中等度感染症でも1日3回投与すれば適当と考える。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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