The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児領域におけるCefmenoximeの基礎的, 臨床的検討
岩井 直一柴田 元博溝口 文子中村 はるひ片山 道弘種田 陽一猪熊 和代尾崎 隆男市川 孝之松井 省治田内 宣生川村 正彦宮津 光伸中山 佳子
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1989 年 42 巻 12 号 p. 2641-2659

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抄録

新生児領域におけるCefmenoxime (CMX) の基礎的, 臨床的検討を行つた。
1. 新生児6例 (2~20日齢) と乳児5例 (36~107日齢) に本剤20mg/kgをOne shot 静注した際の血清中濃度と尿中排泄について検討した。
新生児の血清中濃度のピークは静注後1/4時間にあり, その値は48.2~90.7μg/ml (平均 70.4±14.3μg/ml) で, その後は1.27~5.19時間 (平均2.28±1.56時間) の半減期をもつて推移し, 6時間値は3.6~16.9μg/ml (平均8.3±6.0μg/ml) であった。又, 乳児の1/4時間値は67.5~111.0μg/ml (平均95.5±18.0μg/ml) で, 半減期は0.64~0.94時間 (平均0.81 ±0.13時間), 6時間値は0.2~1.1μg/ml (平均0.7±0.4μg/ml) であった。なお, 新生児の平均血清中濃度のピーク値は乳児より低く, 年長児より高い傾向にあった。又, 新生児の血清中濃度推移の日齢による差異については, ピーク値は日齢の浅いものほど低い傾向にあり, 半減期は日齢と共に短縮し, 乳児期早期ではほぼ年長児に近い値を示すようになつた。
一方, 静注後6時間までの尿中回収率は新生児では43.6~87.5% (平均61.6±14.6%), 乳児では52.1±90.8% (平均78.0±15.1%) であった。日齢の浅いものでも良好な尿中回収率を示し, 日齢が進むにつれて更に高くなる傾向がみられた。
2. 新生児27例及び乳児4例に本剤を投与し, その際の臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。
臨床効果の判定対象となつた新生児19例 (化膿性髄膜炎1例, 敗血症疑い2例, 急性気管支炎1例, 急性肺炎12例, 膿痂疹1例, 臍周囲膿瘍1例, 急性腎盂腎炎1例) に対する臨床効果は著効14例, 有効4例, 無効1例で, 著効と有効を含めた有効率は94.7%であった。又, 乳児4例 (急性肺炎2例, 臍周囲膿瘍1例, 急性腎盂腎炎1例) に対する臨床効果は著効2例, 有効2例であり, 全例に有効以上の成績が得られた。
細菌学的効果については, 新生児例から分離されたStaphylococcus aureus 1株, Escherichia coli 3株はいずれも消失, 乳児例から分離されたS. aureus 1株は存続, E. coli 1株は消失であった。
副作用については, 臨床的には全く認められなかった。臨床検査値異常としては, 新生児例ではGOT, GPTの上昇が2例, GOTだけの上昇が4例, 乳児例ではGOTだけの上昇が2 例, 好酸球増多が1例に認められたが, いずれも軽度であつた。又, 追跡のできた5例ではすべて正常化が確認された。

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