The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児期感染症に対するCefmenoximeの臨床評価
春田 恒和大倉 完悦山本 初実黒木 茂一山岡 幸司小林 裕
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1989 年 42 巻 12 号 p. 2661-2671

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抄録

新生児期におけるCefmenoximeの体内動態及び臨床的有効性, 安全性を検討した。
1. 日齢1~11日の未熟児3例に本剤約10mg/kgを1回静注時 (1群), 18, 32日の未熟児及び17日の成熟新生児各1例に約20mg/kgを1回静注時 (2群), 日齢15日の成熟児の髄膜炎1例に45.2mg/kgを1回静注時の血中濃度を測定した。静注30分後の血中濃度は1群43, 29, 27μg/ml, 2群46, 37, 44μg/ml, 45.2mg/kg静注例208μg/mlで, 用量依存性があると考えられ, 6時間では, 1群18.2, 6.6, 8.1μg/ml, 2群9.6, 11, 1.35μg/ml, 45.2mg/kg例5.2μg/ml, 半減期は1群4.59, 2.85, 3.48時間, 2群2.52, 2.73, 1.14時間, 45.2mg/kg例1.0時間であった。
うち4例で尿中濃度を測定し, 6時間までに45.8%, 87.0%, 50.2%, 100%が回収されたが, 45.8%, 50.2%の2例は生下時体重が少ない未熟児であった。
化膿性髄膜炎 (起炎菌Escherichia coliと推定) 1例に本剤48.3mg/kg静注後の髄液中濃度は, 静注後6時間での0.68μg/mlを除き, 80~90分の値は3.8, 1.72, 1.32μg/mlで, 回復と共に減少する傾向が認められた。
2. 日齢0~24日の9例に本剤を投与した。治療に用いたのは7例, 10疾患でその内訳は化膿性髄膜炎1疾患 (起炎菌グラム陰性桿菌, E. coliと推定), 敗血症4疾患 (E. coli 1, Staphylococcus aureus 2, Streptococcus agalactiae 1), 尿路感染症3疾患 (E. coli, Serratia, Enterococcus faecalis各1), 化膿性耳下腺炎1疾患 (S. aureus), 肺炎1疾患 (不明) で, 化膿性髄膜炎, 敗血症, 尿路感染症では全例著効, 耳下腺炎と肺炎には有効であった。
2例では感染予防のため本剤を投与し, 感染は起らなかった。
3. 使用9例のうち, 本剤によると考えられる副作用は1例もなく, 臨床検査値で1例に一過性のGPT上昇をみただけであった。
4. 以上の成績は本剤の新生児感染症に対する有用性を示唆するものと考えられた。

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