1989 年 42 巻 4 号 p. 983-1013
新しいマクロライド系経口抗生物質Clarithromycin (TE-031, A-56268) 錠 (1日400mg, 2分割投与) の急性歯性感染症に対する有用性を客観的に評価するため, Josamycin (JM, 1日1,200mg, 3分割投与) を対照薬として二重盲検試験を実施した。
集積症例は302例であった。主治医による臨床効果解析対象症例は284例, 点数法による臨床効果解析対象症例は273例であつた。TE-031群の有効率は主治医判定で77.2% (105例/136例), 点数判定法で86.0% (111例/129例), JM群は69.6% (103例/148例), 80.6% (116例/144例) と有意差は認められなかつた。疾患別主治医臨床効果判定では歯周組織炎, 歯冠周囲炎ともTE-031群とJM群の間に有意差はみられなかったが, 顎炎でTE-031群83.0% (44例/53例), JM群64.7% (33例/51例) とTE-031群の有効率が有意に高かつた。
副作用はTE-031群7例 (4.8%), JM群3例 (2.0%) に, 臨床検査値異常はTE-031群, JM群とも各3例に認められたが, いずれも有意差は認められなかつた。
有用性はTE-031群73.9%, JM群70.3%が満足以上とほぼ同等の評価がなされた。
以上の結果からTE-031は急性歯性感染症に対し, JMの1/3量でほぼ同等の効果が期待できる有用な薬剤と考えられた。