The Japanese Journal of Antibiotics
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Cefteram pivoxilの腸内細菌叢に及ぼす影響
岩田 敏山田 健一朗金 慶彰横田 隆夫楠本 裕佐藤 吉壮秋田 博伸南里 清一郎老川 忠雄砂川 慶介市橋 保雄
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1989 年 42 巻 8 号 p. 1761-1779

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抄録

新しい経口用エステル型セフェム系抗生物質であるCefteram pivoxil(CFTM-PI)について, 4種感染マウス及び小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した。Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4種感染マウスに, CFTM-PI細粒10mg/kgを1日1回, 連続5日間経口投与した結果, 糞便中の生菌数は, E. coliが投与開始後2~5日目に軽度の減少傾向を示した以外, 大きな変動は認められなかった。小児臨床例における検討は, 感染症の小児5例(男児3例, 女児2例, 年齢6カ月~10歳4カ月, 体重3.5~28.0kg)に対し, CFTM-PI細粒1回3.0~3.8mg/kgを1日3回, 5~11日間経口投与して行った。CFTM-PI投与中の糞便中細菌叢の変動は症例により若干のばらつきが認められたが, Enterobacteriaceaeの減少傾向とEnterococciの増加傾向が認められたものの, ほとんどの症例ではその他の主要な好気性菌及び嫌気性菌にあまり大きな変動は認められなかった。又, ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌や真菌が優勢菌種となる症例も認められなかった。10歳4カ月の男児例では糞便中にCFTM-PIの活性型であるCFTMが72.20μg/g検出され, 嫌気性菌総数の著明な減少が認められた。糞便中薬剤濃度はCFTM-PIが4例で, CFTMが2例で検出され, その濃度はそれぞれ1.50~89.65μg/g及び2.25~72.20μg/gであった。糞便中β-Lactamase活性は全例で陽性を示した。以上から, CFTM-PIは腸内細菌叢に及ぼす影響の比較的少ない薬剤と考えられるが, 症例によっては薬剤が糞便中に比較的高濃度に検出される場合もあるので注意が必要である。

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