The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるCefteram pivoxil細粒の基礎的・臨床的検討
本廣 孝吉永 陽一郎織田 慶子荒巻 雅史川上 晃田中 耕一古賀 達彦冨田 尚文阪田 保隆山下 文雄高城 信彦岡林 抄由理清水 隆史山田 孝大部 敬三今井 昌一荒木 久昭高橋 耕一原田 博子金子 真也山村 純一石川 豊松元 康治永山 清高安岡 盟林 真夫島田 康進藤 静生二宮 正幸三原 聖子天本 正乃山川 良一橋本 信男田中 信夫加藤 栄司原田 豊石本 耕治高木 純一森田 潤西山 亨間 克磨佐々木 宏和沖 真一郎藤沢 卓爾富永 薫古賀 龍夫久保田 薫久田 直樹津川 信亀崎 健治田中 幹久大山 幸徳高崎 好生吉永 陽三河野 信晴田中 地平横地 一興藤本 保
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1989 年 42 巻 9 号 p. 2023-2061

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抄録

Cefteram pivoxil (CFTM-PI) はCephem環の7位Acyl側鎖にAminothiazol基を導入した抗菌活性を有するCefteram (CFTM) の4位のカルボン酸をPivaloyloxymethyl基でエステル化し吸収を良好にした経口用Cephem系抗生物質である。本剤は経口投与後, 腸管から吸収され, 腸管壁のエステラーゼにより加水分解を受け, 活性体としてのCFTMは体液中に存在する。本邦ではその錠剤はすでに発売されているが, 小児用として新しく細粒が製剤化された。
そこで, 当科で臨床材料から分離した保存株と本剤投与症例からの分離株, すなわちグラム陽性球菌ではStaphylococcus aureus11株, Streptococcus pyogenes85株, Streptococcus agalactiae16株, Streptococcus pneumoniae4株, グラム陰性桿菌ではHaemophilus influenzae11 株, Bordetella pertussis11株, Escherichia coli9株, Proteus mirabilisMorganella morganii各1株, 計149株の接種菌量106cfu/mlに対し, 保存株ではCFTM, Cephalexin (CEX), Cefaclor (CCL), Ampicillin (ABPC), Erythromycin (EM) の5薬剤, CFTM-PI 投与症例からの分離株ではCFTM, CEX, CCL, ABPC, Methicillin, Cloxacillinの6薬剤についての薬剤感受性試験を実施, 8歳3ヵ月から10歳10ヵ月の男児9例中各3例に本剤の細粒を各々1.5, 3.0, 6.0mg/kg, 食後30分に経口投与し, Bioassay法でCFTMの血清中濃度, 尿中濃度及び回収率を測定, 3.0mg/kg投与群では高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法で主な代謝物であるT-2525Aの尿中濃度と回収率を測定, 1生月から11歳6ヵ月の咽頭炎22例, 扁桃炎12例, 急性気管支炎3例, 肺炎11例, 胸膜炎1例, 猩紅熱28例, 急性化膿性中耳炎16例, 膿痂疹13例, 膿瘍2例, 化膿性リンパ節炎1例, 尿路感染症33例, 計142例に本剤の細粒を1回平均投与量3.3mg/kgを1日3回か4回 (3回は133例, 4 回は9例) で, 平均8日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果及び副作用と臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 薬剤感受性試験ではグラム陽性球菌中CFTM-PIを投与した症例から分離のS. aureus11 株に対するCFTMのMICは1株以外は3.13μg/mlか6.25μg/mlで, CEXのMICに類似し, 他の4薬剤のMICよりやや大か大を示した。S. pyogenesの保存株50株ではCFTM のMIC90は0.025μg/mlで, ABPCに次ぐ優れたMICを示し, 他の3薬剤のMICより小であった。CFTM-PIを投与した症例から分離の35株に対するCFTMのMIC90は0.025μg/ml以下で, 保存株に対するMICと同じで, ABPCのMICとも同等を示し, 他の4薬剤のMICより小であった。S. agalactiaeの保存株16株に対するCFTMのMIC90ほ0.05μg/mlで, 他の4薬剤のMICより小であった。CFTM-PIを投与した症例から分離のS. pneumoniae4 株に対するCFTMのMICはすべての株が0.025μg/ml以下か0.05μg/mlを示し, ABPCのMICとほぼ同等で, 他の4薬剤のMICより小であった。
グラム陰性桿菌中CFTM-PIを投与した症例から分離のH. influenzae11株に対するCFTM のMIC90は0.025μg/ml以下で, 他の5薬剤より優れたMICを示した。B. pertussisの保存株11株に対するCFTMのMIC90は0.78μg/mlで, EMに次ぐMICで, 他の3薬剤のMICより小を示す傾向にあった。CFTM-PIを投与した症例から分離のE. coli9株に対するCFTMのMICは全株が0.20μg/mlか0.39μg/mlで, 他の5薬剤のMICより小であった。CFTM-PIを投与した症例から分離のP. mirabili5とM. morganii各1株に対する CFTMのMICはそれぞれ1.56μg/ml, 0.39μg/mlで, 両株共に他の5薬剤のMICより小であった。
2. CFTM-PI細粒1.5mg/kgと3.0mg/kg投与群におけるCFTMの平均血清中濃度はいずれも投与3時間後, 6.0mg/kg投与群では投与4時間後に最高濃度を示し, 各々0.62, 1.25, 2.18μg/mlで, 3投与量群間にDose responseがみられた。平均半減期はそれぞれ0.98, 1.24, 1.28時間であった。平均濃度曲線下面績 (AUC) は各々2.39, 5.36, 10.0μg・hr/mlで, 血清中濃度と同じく3投与量群間にDose responseが認められた。
3. 血清中濃度を測定した同一の症例における平均尿中濃度は1.5mg/kg投与群では投与後 4~6時間, 3.0mg/kgと6.0mg/kg投与群では投与後2~4時間が最も高い濃度で, それぞれ 27.9, 83.0, 156.0μg/mlと投与量にみあった濃度を示し, 投与後8時間までの平均回収率は各々18.9, 20.2, 16.3%であった。
4. CFTM-PIの主な代謝物であるT-2525Aの尿中濃度を3.0mg/kg投与の3例について HPLC法で測定したところ, いずれも投与後2~4時間が最高濃度を示し, 平均2.16μg/mlで, Bioassay法での尿中CFTM濃度との割合は平均2.6%であった。投与後8時間までの平均回収率は0.45%で, Bioassay法による尿中CFTMの回収率との割合は平均2.2%であった。
5. 臨床効果は142例中136例が有効以上で, 有効率は95.8%と優れた成績を示した。
6. 細菌学的効果は81株について判定でき, 全株が陰性化し, 消失率は100%と非常に優れた成績であった。
7. 副作用は掻痒を伴った発疹が1例0.7%, 下痢が2例1.4%に出現した。本剤の服薬状況では服用を嫌った症例が1例0.7%にみられた。
8. 臨床検査値では好酸球増多が87例中8例9.2%, GOTの軽度異常上昇が44例中1例 2.3%に出現した。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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