The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
Aztreonaiの母児間移行に関する薬動力学的検討
小幡 功大和 竜夫林 茂興今川 信行林 茂一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 43 巻 1 号 p. 70-80

詳細
抄録

Aztreonai (AZT) の産婦人科周産期領域における有用性と安全性の一端を評価する目的で本剤を73症例に投与し母体血清中, 膀帯血清中並びに羊水中への移行性について検討し, 次の結果を得た。
1. AZT19をOne shot静注投与して得られた実測値及び理論値の経時的濃度推移を検討した結果, 母体血清中濃度は投与直後に最高値を示した後, 時間経過と共に漸減し, 臍帯血清中濃度は母体血清中濃度にやや遅れて母体血清中濃度に比べて低い最高値を形成した後, 時間経過と共に減少するが, その減少度は母体血清中濃度に比べて緩やかで理論値では投与後2.23時間又は2.24時間以後は母体血清中濃度を上回る濃度で推移した。羊水中濃度は投与後徐々に上昇し投与後1.68時間, 1.73時間で臍帯血清中濃度を, 投与後1.82時間, 1.85時間で母体血清中濃度を上回る濃度を示した以後に最高値を形成した。その後羊水中では高濃度が長期間にわたって維持していた。この結果, 本剤は羊水感染の予防や治療に有用であることが示唆された。
2.実測値に基づいてTwo-compartment open modelとThree-compartment open modelに適応して理論値を解析し各Parameterを比較した結果, 母体血清中濃度及び臍帯血清中濃度のT1/2はそれぞれ1.29時間, 1.29時間, 2.14時間, 2.00時間を, Cmaxは187.09μg/ml, 184.15μg/ml, 30.63μg/ml, 30.66μg/mlを, AUCは153.25μg・hr/ml,153.40μg.hr/ml, 123.19μg・hr/ml, 123.09μg・hr/mlと近似した数値を示した。羊水中濃度ではCiaxが47.08μg/ml, 47.74μg/ml, AUCが948.03μg・hr/ml, 1,028.70μg・hr/mlと近似した数値を示した。しかし臍帯血と羊水の分布容量はModelの違いによって差が認められた。
3.以上の結果から薬剤の母児移行についてT1/2, Cmax, AUC値だけを求める場合はTwo-compartment open modelだけの適応で解析が可能であると考えられた。
4.本剤投与を行った全症例は母児共に自他覚的な副作用や臨床検査値異常の発現は認められなかった。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top