The Japanese Journal of Antibiotics
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小児期呼吸器感染症におけるCefiximeの臨床評価
岩井 直一中村 はるひ笠井 啓子尾崎 隆男松井 省治田内 宜生山口 英明種田 陽一牧 貴子
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1991 年 44 巻 1 号 p. 35-47

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抄録

小児期呼吸器感染症におけるCefixime (CFIX) の臨床評価を, 特に有用性が高いと考えられるHaemophilus influenzaeによる症例を中心にして検討した。
1. 総投与症例は232例で, そのうち臨床効果については215例, 安全性については224例が評価の対象となった。これらの評価対象例における1回投与量は3~6mg/kg, 1日投与同数は2~3回, 投与日数は3~15日, 総投与量は0.24~4.0gであった。
2. 臨床効果の評価対象となった215例における臨床効果は著効136例, 有効64例, やや有効10例, 無効5例で, 著効と有効を合せた有効率は93.0%と極あて高く, しかも有効以上の200例中136例が著効例で, 著効率が68.0%と非常に高いのが特徴的であった。又, 疾患別には, 症例数が比較的多く集積され, かなり客観的な評価ができると考えられた急性咽頭炎, 急性鼻咽頭炎, 急性化膿性扁桃腺炎, 急性気管支炎, 急性肺炎では89.4~95.7%と一様に高い有効率が得られた。
3. 原因菌判明例146例における分離菌別の臨床効果については, 単独菌感染例128例では, 症例数の多かったH. influenzae, Haemophilus parainfluenzae, Streptococcus pyogenesの有効率は100.0%, 100.0%, 95.0%で, 全体では96.9%であつた。又, 複数菌感染例18例については, 最も多かったH. influenzaeStreptococcus pneumoniaeとの混合感染例の有効率は100.0%で, 全体では94.4%であった。なお, H. influenzaeが関与していた症例は複数菌感染例を含めて108例集積されたが, その有効率は99.1%と極あて高く, しかもβ-Lactamase産生株の関与が明確であった32例においても96.9%と優れていた。
4. 原因菌判明例146例からの分離菌164菌株に対する細菌学的効果は, 菌株数が少なかったS. pneumoniaeの菌消失率は71.4%と若干低かったが, H. influenzae, H. parainfluenzae, S.pyogenesでは89.5~100.0%と優れており, 全体では91.4%の消失率であった。なお, 菌交代は21例に認められ, 出現菌としてはS. pneumoniaeStaphylococcus aureusとが多かった。
5. 安全性についての評価対象例224例のうち, 副作用が認められたのは軟便の1例と下痢の1例だけであつた。又, 臨床検査値異常については, 投与前後の検査を行い得た31例において異常を認めた症例は全くなかった。
6.検討症例からの分離菌を含めたH. influenzae 78菌株に対する本剤のMICはβ-Lactamase産生の有無に関係なく優れており, 全株が0.10μg/ml以下に分布し, 対照薬剤のCefaclor (CCL), Amoxicillin (AMPC) より明らかに勝つていた。又, S. pyogenes 11株, S. pneumoniae 2株に対するMICについては, 前者は0.10μg/ml以下に分布, 後者は0.39μg/mlで, AMPCには劣つていたものの, CCLとはほぼ同等あるいはそれより優れていた。
以上の検討成績から, 本剤は小児期の呼吸器感染症に対し, 従来の経口抗生剤の弱点とも言えるH. influenzaeによる場合を含めて優れた治療効果が得られ, しかも安全性の高い薬剤であると考えられた。

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