The Japanese Journal of Antibiotics
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44 巻, 1 号
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  • 西野 武志, 尾花 芳樹, 葛井 久嗣, 村上 龍敏
    1991 年 44 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床分離のEscherichia coli, Proteus vulgaris, Serratia marcescens及びPseudomonas aeruginosa合計88株に対するAztreonam (AZT) と他の8薬剤のinvitroにおける相互作用についてチェッカーボード法で検討した。AZTと他の8薬剤の併用は全般的に相加的か不干渉的作用であった。S. marcescensあるいはP. aeruginosaではAZTとIsepamicin (ISP) の併用により菌株によつては相乗作用が認められた。又, 拮抗現象はP. vulgarisにおいて, AZTとLatamoxefの間だけに認められた。位相差顕微鏡観察により, E. coli 177に対して, AZTとAspoxicillin, P. aeruginosa 15846に対して, AZTとISPの併用でそれぞれ相乗作用が確認できた。P.aeruginosa 15846によるマウス実験的尿路感染症に対して, AZTとISPの相乗効果が認められた。
    AZTと種々の抗菌剤の併用は協力及び相加作用がみられ, 拮抗現象が認められないことから, 感染症の初期治療に適当であると思われた。
  • 平野 正満, 藤村 昌樹, 山本 明, 山本 育男, 西村 和明, 高原 秀典, 平野 節, 森 渥視
    1991 年 44 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆石手術後のCefuzonam (CZON) の胆汁中移行を検討した。対象は術後胆道ドレナージが施行された6例の患者で, 術後にCZON 1gを静注し, 術当日と術後2日目に血中と胆汁中CZON濃度を測定した。
    1. 血中濃度は投与30分で最高値を示し, 術当日で45.8±13.8μg/ml, 術後2日目で60.9±12.2μg/mlであった。
    2. 胆汁中濃度は投与後1時間で最高値に達し, 術当日で4,083±1,427μg/ml, 術後2日目で4,376±630μg/mlと高い値を示した。又, 投与後6時間では154~259μg/mlの値がみられ, Pseudomonas aeruginosaを除くグラム陰性菌に対するMIC80をはるかに超える濃度が得られた。
    3. 術当日に比べ, 術後2日目の血中, 胆汁中濃度がより高値を示したが, 両者間に有意の差はみられなかった。
    CZONは胆汁中移行の優れた薬剤であり, 胆汁中では術後6時間にわたり, 高濃度が維持されていた。
  • 藤広 茂, 江原 英俊, 斉藤 昭弘, 伊藤 康久, 兼松 稔, 坂 義人, 河田 幸道
    1991 年 44 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    経口抗真菌剤の一つであるFlucytosine (5-FC) を37例の尿路真菌症患者に投与した。患者条件は毎視野5コ以上の膿尿, 103コ/ml 以上の真菌尿及び7日間の間隔をおいて繰返し真菌が認あられること (定常性) とし, 1日2~8gを7~14日間投与した。投与した37例中31例が評価可能であつたが, 14日間投与を行った27例について臨床効果を検討すると, 総合臨床効果は77.8%であり, カテーテル留置例の方が不良であつた。分離された真菌30株のうち22株 (73, 3%) が治療後に消失した。5-FCのMICは5株を除いて0.78μg/ml以下であった。無効の6例では治療後早期に5-FCに対する二次耐性が認められた。副作用として, 37例中食欲不振, 軽度の白血球減少が各1例に認められた。5-FCは尿路真菌症の治療において有用な経口剤と考えられた。
  • 今泉 宗久, 渡辺 英世, 小鹿 猛郎, 藤田 興一, 榊原 正典, 近藤 大造, 西村 正士, 阿部 稔雄
    1991 年 44 巻 1 号 p. 22-34
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 術直前Flomoxef (FMOX) 1g, 1時間点滴静注投与では, 血清中濃度は投与開始後1時間で最高 (平均42.4μg/ml) となり, β 相の半減期は1.26時間であつた。
    2. 正常肺 (肺胞) 組織内濃度はCmax 17.98μg/gであり, 血清ピーク値に対する比率は投与開始後1, 2, 3, 4, 5, 6時間値がそれぞれ31.8, 27.1, 22.2, 9.4, 5.9, 5.0%であつた。
    3. 細気管支組織内濃度はCmax 31.91μg/gで, 血清ピーク値に対する比率は投与開始後2, 3, 4時間値がそれぞれ27.8, 19.3, 10.1%であり, 細気管支組織内移行は良好であつた。
    以上の成績から, FMOXは呼吸器感染症の治療薬並びに術後感染予防薬としても有用であると考えられた
  • 岩井 直一, 中村 はるひ, 笠井 啓子, 尾崎 隆男, 松井 省治, 田内 宜生, 山口 英明, 種田 陽一, 牧 貴子
    1991 年 44 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児期呼吸器感染症におけるCefixime (CFIX) の臨床評価を, 特に有用性が高いと考えられるHaemophilus influenzaeによる症例を中心にして検討した。
    1. 総投与症例は232例で, そのうち臨床効果については215例, 安全性については224例が評価の対象となった。これらの評価対象例における1回投与量は3~6mg/kg, 1日投与同数は2~3回, 投与日数は3~15日, 総投与量は0.24~4.0gであった。
    2. 臨床効果の評価対象となった215例における臨床効果は著効136例, 有効64例, やや有効10例, 無効5例で, 著効と有効を合せた有効率は93.0%と極あて高く, しかも有効以上の200例中136例が著効例で, 著効率が68.0%と非常に高いのが特徴的であった。又, 疾患別には, 症例数が比較的多く集積され, かなり客観的な評価ができると考えられた急性咽頭炎, 急性鼻咽頭炎, 急性化膿性扁桃腺炎, 急性気管支炎, 急性肺炎では89.4~95.7%と一様に高い有効率が得られた。
    3. 原因菌判明例146例における分離菌別の臨床効果については, 単独菌感染例128例では, 症例数の多かったH. influenzae, Haemophilus parainfluenzae, Streptococcus pyogenesの有効率は100.0%, 100.0%, 95.0%で, 全体では96.9%であつた。又, 複数菌感染例18例については, 最も多かったH. influenzaeStreptococcus pneumoniaeとの混合感染例の有効率は100.0%で, 全体では94.4%であった。なお, H. influenzaeが関与していた症例は複数菌感染例を含めて108例集積されたが, その有効率は99.1%と極あて高く, しかもβ-Lactamase産生株の関与が明確であった32例においても96.9%と優れていた。
    4. 原因菌判明例146例からの分離菌164菌株に対する細菌学的効果は, 菌株数が少なかったS. pneumoniaeの菌消失率は71.4%と若干低かったが, H. influenzae, H. parainfluenzae, S.pyogenesでは89.5~100.0%と優れており, 全体では91.4%の消失率であった。なお, 菌交代は21例に認められ, 出現菌としてはS. pneumoniaeStaphylococcus aureusとが多かった。
    5. 安全性についての評価対象例224例のうち, 副作用が認められたのは軟便の1例と下痢の1例だけであつた。又, 臨床検査値異常については, 投与前後の検査を行い得た31例において異常を認めた症例は全くなかった。
    6.検討症例からの分離菌を含めたH. influenzae 78菌株に対する本剤のMICはβ-Lactamase産生の有無に関係なく優れており, 全株が0.10μg/ml以下に分布し, 対照薬剤のCefaclor (CCL), Amoxicillin (AMPC) より明らかに勝つていた。又, S. pyogenes 11株, S. pneumoniae 2株に対するMICについては, 前者は0.10μg/ml以下に分布, 後者は0.39μg/mlで, AMPCには劣つていたものの, CCLとはほぼ同等あるいはそれより優れていた。
    以上の検討成績から, 本剤は小児期の呼吸器感染症に対し, 従来の経口抗生剤の弱点とも言えるH. influenzaeによる場合を含めて優れた治療効果が得られ, しかも安全性の高い薬剤であると考えられた。
  • 澤江 義郎, 柏木 征三郎, 熊谷 幸雄, 石丸 敏之, 滝井 昌英, 重岡 秀信, 桑原 健介, 田北 淳, 村西 寿一, 永渕 正法, ...
    1991 年 44 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    九州大学第1内科関連の9施設において診療された肺炎41例, 急性気管支炎18例, 慢性気管支炎33例, 気管支拡張症+感染15例, びまん性汎細気管支炎3例, その他の二次感染3例の計113例について, 封筒法による無作為割付けにより, Ofloxacin (OFLX) 1日量400mgと600mgの1日2回分割投与法の有用性を比較検討した。
    OFLX の1日400mg投与群は55例で, 600mg投与群は58例であり, 患者の背景の中で重症例が600mg投与群に多くなつていた。臨床症状の全般改善率は400mg投与群が92.6%, 600mg投与群が82.1%で, 400mg投与群の方が優れていた。しかし, 著明改善率は600mg投与が35.7%と400mg投与の27.8%より優れていた。細菌学的効果としての菌消失率は400mg投与群が88%で, 600mg投与群の55%より有意に優れていた。副作用発現率は400mg投与群の3.6%に比べ, 600mg投与群は22.4%と高率で, 不眠などの中枢神経系症状が多発した。臨床検査値異常出現率は1.8, 1.7%と両群に差がなかった。そこで概括安全度は400mg投与群の96.4%に対して600mg投与群は77.6%で, 有意差が認められた。
    下気道感染症を対象とした OFLX の1日400mgと600mgの1日2回分割投与法の有用性はそれぞれ94.4%と79.3%で, 400mg投与の方がより有用であったが, 有意差はなかった。
  • 春田 恒和, 大倉 完悦, 黒木 茂一, 小林 裕
    1991 年 44 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiromeの髄液中移行をStaphylococcus aureus髄膜炎家兎モデルを用いて検討した。本剤100mg/kg静注後15分の血清中濃度は362±6.63μg/ml (平均±S.E), 髄液中濃度は60分にピークがあり, 14.6±2.85μg/mlであつた。この推移曲線から求めたPharmacokineticparameterは最高濃度髄液血清比百分率4.04%, AUC髄液血清比百分率15~60分5.14%, 15~120分8.12%, 15~180分10.4%, 髄液中濃度T1/2は154分, T1/2髄液血清比は3.96であった。
    同様な方法で得られた他のβ-Lactam剤の値と比較すると本剤の移行は中等度であるが, 最高髄液中濃度は高い方であり, 髄膜炎主要起炎菌に対する抗菌力と考え合せて, 臨床応用を試みる価値があると考えられた
  • 岩田 敏, 池田 昌弘, 磯畑 栄一, 金 慶彰, 横田 隆夫, 楠本 裕, 佐藤 吉壮, 秋田 博伸, 老川 忠雄, 砂川 慶介, 市橋 ...
    1991 年 44 巻 1 号 p. 62-83
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい注射用 Cephalosporin 系抗生物質である Cefpirome (CPR, HR810) について, 小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した。
    対象は感染症で入院した小児9例 (男児6例, 女児3例, 年齢1ヵ月~5歳1カ月, 体重3.94~21.0kg) で, これらの小児に対し, CPR 1回19.0~40.0mg/kgを1日3~4回, 6~12日間静脈内投与し, 投与前, 中, 後の糞便を採取して, 糞便1g中に含まれる各種細菌の同定及び菌数計算を行った。同時に糞便中の CPR 濃度, β-Lactamase 活性, 及び Clostridium difficile D-1 抗原の測定も行つた。
    CPR 投与中の糞便内細菌叢の変動は症例により若干のばらっきが認められたが, 好気性菌では9例中5例で Enterobacteriaceae Enterococcus faecalis の著明な減少が認あられた。その他の4例では一部の症例で一過性の減少がみられただけで大きな変動は認められなかった。Enterococcus avium, Enterococcus faecium には大きな変動は認められなかったため, 好気性菌総数は1例で一過性の減少がみられただけで, あまり大きな変動は認められなかった。嫌気性菌のうち Bifidobacterium, Eubacterium については症例によつて著明に減少する場合, 一過性に減少する場合, 変動のみられない場合がそれぞれ認められたが, Bacteroides ではほとんど菌数の変動が認められなかった。従って, 嫌気性菌総数は, 投与前に Bacteroides の検出されなかった1例で著明な減少がみられた以外に大きな変動は認あられなかった。
    又, ブドウ糖非醗酵性グラム陰性桿菌や真菌が優勢菌種となる症例は認められず, C.difficile及びC.diffice D-1 抗原はそれぞれ3例及び4例で検出されたが, その消長と便性には関連性がなかった。
    糞便中の CPR は6例で投与中の検体から検出され, その濃度は1.20~22.4μg/gであったが, 糞便中の β-Lactamase 活性が低い検体で高い値を示す傾向が認められた。
    糞便から分離した菌種の CPR に対する薬剤感受性を投与前後で比較すると, Enterococci, Bacteroides など一部の菌種で投与中もしくは投与後に耐性化する傾向がみられた。
    以上の成績から, CPR は小児の腸内細菌叢に及ぼす影響が比較的少ない薬剤と考えられるが, 長期間投与を続けるような場合には, 下痢や菌交代に対する注意が必要である。
  • 藤井 良知, 阿部 敏明, 目黒 英典, 田島 剛, 中澤 進, 佐藤 肇, 平間 裕一, 成田 章, 松本 貴美子, 中澤 進一, 鈴木 ...
    1991 年 44 巻 1 号 p. 84-109
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセファロスポリン系抗生物質Cefpirome sulfateの小児科領域における基礎的, 臨床的検討を目的とし研究会を組織し, 全国19基幹施設とその関連施設による共同研究を実施し, 以下の成績を得た。
    1.抗菌力
    本臨床試験から分離され起炎菌と判定された菌のうち, グラム陽性菌71株, グラム陰性菌110株についてMICを測定した結果MRSAを含むStaphylococcus aureusを初あとするグラム陽性菌に対してCeftazidimeに比較し2~16倍の優れた抗菌力を示した。グラム陰性菌ではBranhamell acatarrhalisにおいてはMICはやや幅広く分布していたが, Escherichia coli, Haemophilus influenzaeではそれぞれ0.10, O20μg/ml以下で全株発育が阻止された
    .血漿中濃度及び尿中排泄率
    小児での体内動態は1回量20mg/kgを主として静注並びに30分, 60分点滴静注で検討した。10, 20, 40mg/kg静注15分後の平均血漿中濃度はそれぞれ, 51.2, 70.5, 123.5μg/ml値で, 半減期はそれぞれ1.21, 1.39, 1.53時間であった。投与後6時間までの尿中排泄率は63.6, 66.0, 71.6%であった。同一用量を30分あるいは60分点滴静注後も同様に用量依存的な血中動態を示した。
    3.髄液中濃度
    髄液への移行は, 1回投与量39~79mg/kgを静注投与後45~60分で1.85~24.2μg/mlの濃度を示し, 他のセファロスポリン系抗生物質に比べ中等度の移行性を示した。
    4.臨床成績
    各種細菌感染症に対する本剤の効果判定解析症例は総症例499例から除外例を除いた454例で, 1患児に複数の疾患を合併する3例を加え457例で行った。
    臨床効果は457例中, 有効以上が430例 (94.1%) で, 起炎菌の判明した群は255例で, 有効以上243例 (95.3%), 起炎菌が検出されなかった群は202例で, 有効以上187例92.6%と高い有効率を示した。
    起炎菌別臨床効果はS. aureusを含むグラム陽性菌感染症では有効率95.0%とグラム陰性菌の95.7%と同様高い有効率を示し, 複数菌感染症においても94.4%の有効率が認められた。
    起炎菌別細菌学的効果は起炎菌と判定された延べ276株中266株が消失し, 消失率は96.4%であった。グラム陽性菌ではS. aureusは89.5% (38株中34株), Streptococcus pneumoniaeは97.4% (38株中37株), Streptococcus pyogenesは100% (15株中15株) と高い消失率を示し, グラム陽性菌全体では95.1%の消失率を示した
    グラム陰性菌ではH. influenzaeは96.6% (88株中85株), B. catarrhalis (12株中12株), E.coli (43株中43株), Klebsiella pneumoniae (5株中5株) はいずれも100%の消失率を示し, Pseudomonas aeruginosaにおいても3株いずれも消失した。
    他剤無効例に対するCPRの臨床効果は135例中有効以上が126例で93.3%の高い有効率を示した。
    .副作用及び臨床検査成績
    安全性に対する検討は総投与例499例から併用薬違反, 投与日数不正等の7例を除いた492例について検討した。
    発現した副作用の症状は下痢, 軟便, 発疹など計20症例, 23件に認あられ, 主な症状は消化器症状であった。
    臨床検査値異常はGOT, GPT, 総ビリルビン, クレアチニン上昇, 血小板, 好酸球増多及び白血球, 血小板減少が101症例 (20.5%), 142件に観察され, その中ではトランスアミナーゼの異常変動がやや多かった。
    副作用, 臨床検査値異常は, いずれも投与中止後又は投与継続中に正常化し, 重篤なものはなかった。
    以上の成績から, 本剤は小児科領域の適応感染症に有効な薬剤であると考えられる。
    剤の標準的な用法・用量については, 体内動態の検討成績及び臨床成績から1回20mg/kgを1日3~4回静注又は点滴静注で十分な治療効果を期待できる。更に, 軽症例においては1回10mg/kg1日3~4回投与でも臨床効果が得られることが期待できるものと考えられた。なお, 症状によつては倍量まで増量するが成人用量を越えないものとした。
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