The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児領域におけるFlomoxef sodiumの基礎的, 臨床的検討
岩井 直一中村 はるひ宮津 光伸笠井 啓子渡辺 祐美種田 陽一尾崎 隆男松井 省治牧 貴子田内 宜生市川 孝行山口 英明
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1991 年 44 巻 11 号 p. 1265-1285

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抄録

すでに上市されているFlomoxef sodiumについて, 新生児領域における基礎的, 臨床的検討を行つた。
1.生後1~30日の新生児22例 (在胎週数31~43週, 生下時体重1,650~4,040g) 及び生後50~95日の乳児5例 (在胎週数33~40週, 生下時体重1,720~3,308g) に本剤20mg/kgをOneshot静注で投与した際の血清中濃度と尿中排泄について検討した。
新生児例及び乳児例の血清中濃度のピーク値 (0.5時間値) は10.8~67.6μg/ml (平均32.7±2.8μg/ml) 及び25.1~52.0μg/ml (平均38.9±4.3μg/ml) で, その後は0.96~5.59時間 (平均2.20±0.26時間) 及び0.97~1.54時間 (平均1.22±0.12時間) の半減期をもつて推移し, 8時間値は0.2~17.1μg/ml (平均2.9±0.6μg/ml) 及びN.D.~1.1μg/ml (平均0.4±0.2μg/ml) であった。又, 投与後8時間までの尿中回収率については15.0~96.0% (平均53.7±4.9%) 及び29.9~73.3% (平均62.4±9.4%) であった。
2.細菌感染が存在するか, あるいはその発症が予想された新生児78例 (在胎週数31~42週, 生下時体重1,420~3,860g) に本剤を投与し, その際の臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。
臨床効果の判定対象となった敗血症1例, 急性上気道炎3例, 急性肺炎18例, 臍感染症1例, 膿痂疹1例, 急性尿路感染症4例, 急性外耳道炎1例, 肛門周囲膿瘍1例, 子宮内感染 (胎内感染) 17例, 計47例に対する臨床効果は, 著効41例, 有効6例であり, 有効率は100.0%であった。又, これらの症例の原因菌となったStaphylococcus aureus3株, Streptococcus pneumoniae1株, Streptececcus agalactiae1株, Escherichia coli9株, Haemophilus influenzae2株に対する細菌学的効果についてはすべて消失であつた。更に, 感染予防の目的で投与されたか, 結果的にそうなった27例においても, 感染予防効果は完全に達成できた。
なお, 副作用の認められた症例はなかった。又, 臨床検査値異常については, GOTの上昇が2例, 好酸球増多が1例, 血小板増多が1例に認あられたが, いずれも軽度で, しかもGOT上昇例の1例では正常化が確認された。
以上の結果から, 本剤が新生児期においても有用, 且つ安全に使用できる薬剤であると考えられた。

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