1992 年 45 巻 1 号 p. 74-86
新しく開発されたCephem系抗生物質の経口剤であるCefdinir (CFDN) の10%細粒を小児の8例中各4例に3mg/kgを食前1時間すなわち空腹時か食後30分に投与し, 血漿中濃度, 尿中の濃度及び回収率を測定した。扁桃炎3例, 急性気管支炎1例, 肺炎1例, 急性化膿性中耳炎1例, 尿路感染症2例, 膿痂疹1例, 計9症例に本剤1回投与量平均4.8mg/kgを1日3回, 平均8日間投与し, 臨床効果, 細菌学的効果をみると共に起炎菌4株の接種菌量106cfu/mlに対する本剤とCefaclor, Cefixime (CFIX), Methicinin, Cloxacillin, Amoxicillin (AMPC) の薬剤感受性試験を実施, 副作用と臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 8例中各4例に10%細粒3mg/kgを食前1時間か食後30分に投与した時の平均血漿中濃度は前者では投与2時間後, 後者では4時間後と投与5時間後が同値で最高濃度を示し, 各々0.88μg/ml, 0.50μg/ml, 平均半減期はそれぞれ1.61時間, 2.54時間, 平均AUCは各々4.24μg・hr/ml, 3.59μg・hr/mlであった。
2. 前述の血漿中濃度を測定した同一例で尿中排泄を測定したところ, 食前1時間投与例における尿中の平均最高濃度は投与後2~4時間で93.3μg/ml, 食後30分投与例の平均最高濃度は投与後6~8時間で44.8μg/ml, 投与後8時間までの平均回収率はそれぞれ16.6, 13.4%であった。
3. 本剤の細菌感染症6疾患9症例に対する臨床効果は全例有効以上と非常に優れた成績が得られた。
4. 細菌学的効果は4例から起炎菌として分離されたStreptococcus pyogenesとEscherichia coliの各々2株とHaemophilus influenzae1株について判定でき, いずれも消失したが, このうち3例と投与前常在菌であつた1例の計4例に菌交代がみられた。
5. 薬剤感受性試験ではS.pypgenes2株に対するCFDNのMICはAMPCのMICと同じかやや大で, 他の4薬剤のMICに比較し小かほぼ類似した。E.coli2株に対するCFDNのMICはCFIXのMICと類似し, 他の4薬剤のMICに比べ類似か小であった。
6. 本剤を投与した9症例では全例に副作用の出現はなく, 臨床検査値で異常変動を示したCaseもなかった。