The Japanese Journal of Antibiotics
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45 巻, 1 号
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  • II. Sisomicinとの併用効果
    出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加
    1992 年 45 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefodizime (CDZM) は広い抗菌スペクトルと比較的長い血中半減期を有するほか, 各種動物感染症実験モデルにおいては, 免疫抑制下における優れた治療効果が認められるなどの報告があるたあ, 易感染宿主に発症する感染症に対する期待が持てる。
    一方, Sisomicin (SISO) はグラム陰性桿菌に対する強い抗菌力を有するほか, 腎毒性や聴器毒性が軽度であるとされているため, 臨床分離株に対するCDZMとSISOのin vitroにおける抗菌併用効果を検討した。
    1. Escherichia coli, Citrobacter freundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter clocae, Serratiamarcecens, Proteus vulgaris, Morganella morganii, そしてPseudomonas aeruginosaのSISO感性株を対象としたCDZM+SISOの抗菌併用効果は, 大部分の供試株に対してはSISOの1MICもしくはsub MIC濃度存在下においてFIC index 05~≤1を示すことから, グラム陰性桿菌のSISO感性株には両薬剤の強い抗菌併用効果が示唆された。
    2. 供試株のC.freundii10.0%, E.cloacae6.7%, S.marcescens63.3%, P.vulgaris23.3%, そしてP.aeruginosa18.0%はSISO耐性株だつたが, これらのSISO耐性株に対する両薬剤の抗菌併用効果は, ほとんど認あられなかった。
    3. グラム陰性桿菌に対する両薬剤の抗菌併用効果は, SISO感性株においてはCDZM耐性株でも発揮されるが, SISO耐性株では下分に発揮されないことから, 両薬剤の抗菌併用効果はSISOの抗菌活性に依存することが示唆された。
    Cefodizime (CDZM) は抗菌スペクトルが広く, 比較的長い血中半減期と良好な組織移行性を示すほか, 各種動物感染症実験モデルにおいては, 最小発育阻止濃度 (MIC) から予測される以上の治療効果が認められており, なかでも免疫抑制下で感染防御能が低下した場合においても, 優れた実験的治療効果が認あられると報告されていることから1~3), 易感染宿主に発症する感染症に対する期待が持てる。
    そこでグラム陰性桿菌に対する抗菌力が強く, 加えて腎毒性や聴器毒性が軽度であるとされているSisomicin (SISO) を選び4, 5), グラム陰性桿菌に対するCDZMとSISOのin vitroにおける抗菌併用効果を検討した。
  • 小児期におけるCefdinirについての薬動力学的検討
    中村 はるひ, 岩井 直一
    1992 年 45 巻 1 号 p. 12-27
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児期におけるCefdnir (CFDN, FK482) の小児用細粒剤 (5%力価) についての吸収, 排泄を検討すると共に, 薬動力学的解析を加えた。
    1. 学童, 幼児, 乳児の各年齢層に分けて, 食事の影響について検討した。
    学童14例及び6例におけるCFDN3mg/kg食前30分及び食後30分服用後の成績では, 前者のTmaxは2.00±0.00時間,Cmaxは1.14±0.11μg/ml, T1/2はL63±0.14時間, 尿中回収率 (0~8時間) は23.68±2.92%で, 後者ではそれぞれ3.67±0.33時間, 0.71±0.06μg/ml, 2.18±0.16時間, 21.76±2.36%であつた。食前投与の方が明らかにTmaxが早く得られ, 高いCmaxを示したが, 尿中回収率については両投与方法の間に有意差は認められなかった。しかし, Crossover法でみた6例だけの検討では, 尿中回収率においても食前投与でかなり高い傾向がみられた。
    幼児19例及び6例の3mg/kg食前30分及び食後30分服用後の成績では, 前者のTmaxは2.11±0.11時間, Cmaxは0.98±0.14μg/ml, T1/2は1.71±0.23時間, 尿中回収率は23.60±1.72%で, 後者ではそれぞれ3.33±0.42時間, 0.47±0.14μg/ml, T1/2は2.35±0.27時間, 12.24±2.02%であった。食前投与の方が明らかにTmaxが早く, 高いCmaxを示し, 尿中回収率も高い値が得られた。
    乳児7例及び8例の3mg/kg食前30分及び食後30分服用後の成績では, 前者のTmaxは4.00±0.62時間, Cmaxは0,61±0.13μg/ml, T1/2は3.14±0.62時間で, 後者ではそれぞれ3.75±0.25時間, 0.79±0.13μg/ml, 2.44±0.42時間であり, 両投与方法間に有意差は認められなかった。
    2. 学童において用量依存性を検討した。学童14例及び7例における3mg/g食前30分及び6mg/kg食前30分服用後の成績では, 前者のCmaxは1.14±0.11μg/ml, AUCは4.44±0.41μg・hr/mlであり, 後者ではそれぞれ1.37±0.23μg/ml, 6.14±0.88μg・hr/mlであった。Cmaxでは明らかではなかったが, AUCについては明らかなDose responseが認められた。なお, Crossover法でみた6例だけの成績ではCmaxにおいても明らかなDose responseが確認された。
    3. 食前投与と食後投与とに分けて, 年齢による差異を検討した。
    学童14例, 幼児19例, 乳児7例における3mg/kg食前30分服用後の成績では, Tmaxは学童, 幼児, 乳児でそれぞれ2.00±0.00時間, 2.11±0.11時間, 4.00±0.62時間で, 乳児で明らかに遅く得られる傾向があつた。Cmaxについてはそれぞれ1.14±0.11μg/ml, 0.98±0.14μg/ml, 0.61±0.13μg/mlで, 乳児が最も低い値を示した。又, T1/2についてはそれぞれ1.63±0.14時間, 1.71±0.23時間, 3.14±0.62時間と, 乳児において明らかに長い傾向が認あられた。更に, AUCについては, 各年齢層間に差は認められなかつた。学童6例, 幼児6例, 乳児8例における3mg/kg食後30分服用後の成績では, Tmaxは学童, 幼児, 乳児でそれぞれ3.67±0.33時間, 3.33±0.42時間, 3.75±0.25時間, Cmaxは0.71±0.06μg/ml, 0.47±0.14μg/ml, 0.79±0.13μg/ml, T1/2は2.18±0.16時間, 2,35±0.27時間, 2.44±0.42時間であり, 三者間に有意差は認められなかった。しかし, AUCについては, それぞれ4.07±0.44μg・hr/ml, 253±0.56μg・hr/ml, 4.81±0.78μg・br/mlと, 幼児では他の年齢層に比べて小さい傾向があつた。
  • 岩田 敏, 川原 和彦, 池田 昌弘, 磯畑 栄一, 金 慶彰, 楠本 裕, 佐藤 吉壮, 秋田 博伸, 南里 清一郎, 老川 忠雄, 横田 ...
    1992 年 45 巻 1 号 p. 28-47
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい経口用セフェム系抗生物質であるCefdinir (CFDN) について, 4種感染マウス及び小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす彰響を検討した。
    Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4種感染マウスに, CFDN5%細粒10mg/kgを1日1回, 連続5日間経口投与した結果, 糞便中の生菌数は,E.coliが投与開始後3~5日目に減少傾向を示した以外, 大きな変動は認められなかった。
    小児臨床例における検討は, 感染症の小児7例 (男児3例, 女児4例, 年齢6ヵ月~12歳7カ月, 体重5.5~29.2kg) に対し, CFDN5%もくしは10%細粒1回3.0~3.7mg/kgを1日3回, 4~14日間経口投与して行つた。CFDN投与中の糞便内細菌叢の変動は症例により若干のばらつきが認められたが, 2例でEnterobacteriaceaeと嫌気性菌総数の著明な減少が認あられたものの, 好気性菌総数に変動はなく, 他の症例においても一部でEnterococcusの一過性の減少が認められた以外, 主要な好気性菌及び嫌気性菌にあまり大きな変動は認められなかった。又, ブドウ糖非醗酵性グラム陰性桿菌や真菌が持続的に優勢菌種として認められる症例もなかった。Clostridium difficile及びC.difficile D-1抗原はそれぞれ1例及び4例で検出されたが, その消長と便性には関連性がなかった。
    糞便から分離した菌種のCFDNに対する薬剤感受性を投与前, 中, 後で比較すると, Enterococcus, Bacteroidesなど一部の菌種で投与中もしくは投与後に耐性化する傾向がみられた。
    糞便中のCFDNは2例で投与中の検体から検出されたが, 糞便中のβ-Lactamase活性が陰性だった1例では254μg/gと高濃度を示し, Enterobactedaceaeと嫌気性菌総数の著明な減少が認められた。
    以上の成績から, CFDNは腸内細菌叢に及ぼす影響の比較的少ない薬剤と考えられるが, 症例によっては薬剤が糞便中に比較的高濃度に検出される場合もあるので注意が必要で, 長期間投与を続けるような場合には下痢や菌交代に対する配慮が必要である。
  • 豊永 義清, 畠山 和男, 矢守 和子, 坂口 直哉, 中野 賢一, 山崎 美喜雄, 杉田 守正, 堀 誠
    1992 年 45 巻 1 号 p. 48-73
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新経口用セファロスポリン系抗生物質であるCefdinir (CFDN, FK482) の5%細粒及び10% 細粒について基礎的・臨床的検討を行い以下の成績を得た。
    1. 抗菌力
    臨床分離のStaphylOcoccus aureuS, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Branhamella catarrhalis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeに対する MICをCFDN, Cefaclor, Cefixime (CFIX), Amoxicillin (AMPC) について検討した。CFDNのS. aureus, S. pneumoniae, S. pyogenes, H. influenzae, B. catarrhalis, K. pneumoniae, E. coliに対するMIC 80は0.78, 0.20, ≤0.025, 0.39, 0.10, 0.20, 0.10μg/mlであり, 優れた成績を示し, グラム陽性球菌ではAMPCとほぼ同様であったが, 他の2剤は著しく抗菌力が劣っていた。グラム陰性桿菌ではH. influenzaeにて, CFIXが若干優れ, そのMIC 80が0.05μg/mlであった以外は, CFIXに遜色ない成績であった。
    2. 吸収・排泄
    今回, 5%細粒, 10%細粒とも3.0mg/kg, 6.0mg/kgについて, 又, 30kg以上の患児では 100mg capsuleの投与時にも血漿中, 尿中濃度を空腹時投与にして検討した。5%細粒及び10% 細粒間には, 両投与量とも有意差はなく, 同様の血漿中濃度推移及び尿中回収率を示した。3.0mg/kg濃度ピークは2時間ないし3時間に見られ, 5%細粒, 10%細粒それぞれ0.20~2.12μg/ ml (平均0.97μg/ml), 0.50~1.15μg/ml (平均0.78μg/ml), 6.0mg/kgも同様に, 0.66~2.06μg/ ml (平均1.40μg/ml), 0.70~1.52μg/ml (平均1.27μg/ml) であり, 8時間では3.0mg/kg, 6.0mg/kgはほぼ同様の値となり, 5%では0.04~0.54μg/ml, 10%では0.06~0.27μg/mlであった。半減期は3.0mg/kg, 6.0mg/kg投与それぞれ1.33~4.36時間, 1.14~3.27時間であり, AUC もそれぞれ1.7~11.0μg・hr/ml, 2.4~8.7μg・hr/mlであった。100mg capsule投与群は体重kg 当り2.4~3.1mgになり, その濃度ピークは2-4時間に示され, 0.79~1.88μg/ml, 平均1.11 μg/mlで, 8時間では平均0.20μg/mlであり, 半減期は1.54~2.72時間, AUCは平均5.2 μg・hr/mlであつた。尿中回収率は3.0mg/kg, 6.0mg/kg, 100mg capsule投与群, それぞれ6.85 ~39.2%, 6.08~25.5%, 10.3~39.7%が8時間に回収され, 従来の第3群セファロスポリン系抗生物質よりも若干低いが, 第6群とほぼ同様の成績であった。
    3. 臨床成績
    本剤を急性肺炎9例, 急性気管支炎11例, 扁桃腺炎23例, 狸紅熱15例, リンパ節炎8例, 蜂窩織炎2例, 皮下膿瘍, 膿痂疹1例, 尿路感染症6例, 計76例に本剤を使用し, 1例の判定不能例を除き75例で, その臨床効果を判定し, 74例が有用以上の成績を示し, その有効率は98.7% であった。細菌学的に, 本剤投与前に検出された起炎菌あるいは原因菌の経過を追い, 検索が可能であったものは, 複数の菌が検出されたものが12症例であり, 70株であったが, そのうち69 株が除菌され, 除菌率は98.6%であった。又, 1例ごとの細菌学的有効率は, 56例中55例で, 98.2%であった。なお, 1例に水様便が経過中認められた以外, 副作用は認められず, 臨床検査値異常はGPT上昇1例だけであった。
  • 本廣 孝, 半田 祥一, 山田 秀二, 沖 真一郎, 津村 直幹, 吉永 陽一郎, 佐々木 宏和, 荒巻 雅史, 織田 慶子, 川上 晃, ...
    1992 年 45 巻 1 号 p. 74-86
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたCephem系抗生物質の経口剤であるCefdinir (CFDN) の10%細粒を小児の8例中各4例に3mg/kgを食前1時間すなわち空腹時か食後30分に投与し, 血漿中濃度, 尿中の濃度及び回収率を測定した。扁桃炎3例, 急性気管支炎1例, 肺炎1例, 急性化膿性中耳炎1例, 尿路感染症2例, 膿痂疹1例, 計9症例に本剤1回投与量平均4.8mg/kgを1日3回, 平均8日間投与し, 臨床効果, 細菌学的効果をみると共に起炎菌4株の接種菌量106cfu/mlに対する本剤とCefaclor, Cefixime (CFIX), Methicinin, Cloxacillin, Amoxicillin (AMPC) の薬剤感受性試験を実施, 副作用と臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。
    1. 8例中各4例に10%細粒3mg/kgを食前1時間か食後30分に投与した時の平均血漿中濃度は前者では投与2時間後, 後者では4時間後と投与5時間後が同値で最高濃度を示し, 各々0.88μg/ml, 0.50μg/ml, 平均半減期はそれぞれ1.61時間, 2.54時間, 平均AUCは各々4.24μg・hr/ml, 3.59μg・hr/mlであった。
    2. 前述の血漿中濃度を測定した同一例で尿中排泄を測定したところ, 食前1時間投与例における尿中の平均最高濃度は投与後2~4時間で93.3μg/ml, 食後30分投与例の平均最高濃度は投与後6~8時間で44.8μg/ml, 投与後8時間までの平均回収率はそれぞれ16.6, 13.4%であった。
    3. 本剤の細菌感染症6疾患9症例に対する臨床効果は全例有効以上と非常に優れた成績が得られた。
    4. 細菌学的効果は4例から起炎菌として分離されたStreptococcus pyogenesEscherichia coliの各々2株とHaemophilus influenzae1株について判定でき, いずれも消失したが, このうち3例と投与前常在菌であつた1例の計4例に菌交代がみられた。
    5. 薬剤感受性試験ではS.pypgenes2株に対するCFDNのMICはAMPCのMICと同じかやや大で, 他の4薬剤のMICに比較し小かほぼ類似した。E.coli2株に対するCFDNのMICはCFIXのMICと類似し, 他の4薬剤のMICに比べ類似か小であった。
    6. 本剤を投与した9症例では全例に副作用の出現はなく, 臨床検査値で異常変動を示したCaseもなかった。
  • 芳野 達也, 佐藤 清
    1992 年 45 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床における抗ガン剤による抗ガン治療の結果引起される易感染性をモデル化するために, 担ガンマウスを用いた実験系を構築し, KW-2228の有効性を評価した。腫瘍にはBALB/cマウスを宿主とするColon 26結腸ガンを用いた。担ガンマウスに対し腫瘍移植3日後にCyclophosphamide (CPA) による抗ガン治療を施したところ, 副作用による末梢血白血球数の減少が認められた。そこで, CPA投与翌日からKW-2228を1日1回計4日間投与することによつて実験的緑膿菌感染症に対し, 用量依存的に感染予防効果を示した。この効果は, KW-2228による白血球数の早期の回復, 白血球数減少期間の短縮ともよく対応した。
    以上の結果から, 抗ガン治療の副作用の結果引起される日和見感染症に対し, KW-2228は感染予防効果が期待できると結論された。
  • 佐藤 清, 米山 裕, 芳野 達也
    1992 年 45 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    KW-2228は遺伝子工学的手法によって得られたRecombinant human granulocyte colonystimulating factor (rhG-CSF) の誘導体である。KW-2228が感染症領域で臨床適用され得る可能性を持っかどうかは興味深い。本稿では, 正常マウス及びCyclophosphamideによる自血球減少マウスを用いた全身感染症モデルでKW-2228と各種抗生物質との併用効果を検討し, 以下の結果を得た。
    1. Pseudomonas aeruginosaBMH No.1感染症モデルでKW-2228とCeftazidime (CAZ) 又はAstromicin (ASTM) との併用投与は感染予防に著しい併用効果が認められた。CAZとの併用では予防効果より活性は弱いものの治療効果にも併用効果が認あられた。
    2. Serratia marcescens F3984感染症モデルでKW-2228とASTMの併用投与は感染予防に明らかな併用効果が認められた。
    3. Candida albicansMTU12077感染症モデルにおいてAmphotericin Bとの併用治療に顕著な併用効果が認あられた。
    以上の成績から, KW-2228は実験的マウス感染症に対して既存抗生物質との間に明らかな併用効果が認あられた。これらのことから, ヒトの感染症に対してKW-2228は化学療法の補助療法剤として臨床応用が期待できるものと予想された。
  • 芳野 達也, 佐藤 清
    1992 年 45 巻 1 号 p. 98-105
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床の担ガン患者において, 日和見感染として緑膿菌感染症が多く認められる。これは, 担ガン状態及びそれに対する化学療法の結果引起される免疫不全状態により起きるものである。著者らは今回, これをマウスによるモデル化を行い, 緑膿菌感染症に対するKW-2228とアミノ配糖体系抗生物質による併用効果を検討した。すなわち, マウスに腫瘍移植して担ガンマウスを作製し, 腫瘍移植3日後に抗ガン治療としてCyclophosphamide (CPA) を投与した。更に, その翌日からKW-2228 (1μg/mouse/日) を4連投したのち, 最終投与4時間後に緑膿菌を感染させ, 更に感染2時間後にアミノ配糖体系抗生物質 (Gentamicin (GM), Astromicin (ASTM)) を用いて治療を行った。
    主な結果,
    1. 腫瘍移植3日後にCPA処理した担ガンマウスにおいて, GM単独治療群のED幻値は40.7mg/kgであったのに対し, KW-2228+GM併用治療群のED幻値は3.6mg/kgであった。
    2. 腫瘍移植3日後にCPA処理した担ガンマウスにおいて, ASTM単独治療群のED50値は386mg/kgであったのに対し, KW-2228+ASTM併用治療群のED幻値は17.8mg/kgであった。
    3. 抗ガン治療を施した担ガンマウスにおける実験的緑膿菌感染症に対するアミノ配糖体系抗生物質のED蜀値は, KW-2228を併用した場合, 正常マウスにおけるED50値と同レベルであった。
    以上の結果から, KW-2228を予防的に併用使用することによつて, CPAによつて抑制された白血球数の回復が促進され, これによって抗ガン治療を施した担ガンマウスの実験的緑膿菌感染症に対するアミノ配糖体系抗生物質の治療効果が著しく向上することが示された。
  • 芳野 達也, 佐藤 清
    1992 年 45 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    今回著者らは, 抗ガン剤投与中にみられるKlebsiella pneumoniae感染症をモデル化し, 易感染化の一つとしてCyclophosphamide (CPA) 投与によつて好中球減少症としたマウスを用いて, KW-2228と代表的なセフェム系抗菌剤との併用効果を検討した。すなわち, マウスにCPA 200mg/kgを投与して好中球減少症マウスを作製した。その翌日からKW-2228 (1μg/mouse/日) を4連投したのち, 最終投与4時間後にK. pneumoniae8045 を感染させ, 更に感染2時間後にセフェム系抗菌剤を投与して治療を行つた。主な成績は下記のとおりである。
    1. Cefazolin (CEZ) 単独群のED50100mg/kgであつたのに対し, KW-2228+CEZ併用群のED50値は39.6mg/kgであった。
    2. Cefmetazole (CMZ) 単独群のED知値は100mg/kgであったのに対し, KW-2228+CMZ併用群のED50鉛値は46.9mg/kgであった。
    3. Ceftazidime (CAZ) 単独群のED50値は8.8mg/kgであったのに対し, KW-2228+CAZ併用群のED50値は4.4mg/kgであった。
    4. Cefaclor (CCL) 単独群のED50値は10.3mg/Kgであったのに対し, KW-2228+CCL併用群のED50値は7.1mg/kgであった。
    以上の結果から, 感染症の化学療法においてKW-2228を併用することにより, CPAによつて抑制された白血球数の回復が促進され, 好中球減少症マウスの実験的肺炎桿菌感染症に対する各種セフェム系抗菌剤の治療効果が大幅に向上することが証明された。
  • 吉竹 裕子, 佐藤 清
    1992 年 45 巻 1 号 p. 112-120
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    遺伝子工学的手法によつて得られたRECombinant human granulocyte colony-stimulating factor (rhG-CSF) の誘導体, KW-2228の作用機序研究の一環として, ラット好中球 (PMNs) の貪食・殺菌機能並びに活性酸素放出能に及ぼすKW-2228の効果を検討した。
    1. ラットPMNsはCandida albicansに対して高い貪食率を示し, KW-2228を投与することにより貪食活性は更に亢進され培養後15分から高い貪食率を示し, その後も60分まで高貪食率を持続した。
    2. Escherichia coliに対するラットPMNsの貪食殺菌作用を検討した結果, KW-2228を投与することによりE. coilの残存生菌数の減少がみられ, 貪食殺菌作用の亢進が認められた。
    3. Pseudomonas aeruginosaに対するラットPMNsの貪食殺菌作用を検討した結果, 若Pの貪食殺菌作用が認められたものの, 今回の条件下ではKW-2228の影響を明白に確認することはできなかった。
    4. ラットPMNsの活性酸素産生量を, ルミノール依存性化学発光法 (CL) を用い測定した。C. albicansの刺激によりKW-2228投与ラットのPMNsは, 無投与ラットのPMNsに比べ約2倍のCLを示し, KW-2228投与により活性酸素の産生量は明らかに増加した。E. coliによる刺激では, KW-2228投与ラットのPMNsは, 無投与ラットのPMNsに比べピーク時で約1.5倍のCLを示し, その後も同レベルを保持した。P. aeruginosaで刺激した場合には, KW-2228投与による明白なCLの上昇は認められなかった。
    以上, KW-2228は真菌及び細菌に対する貪食・殺菌機能及び活性酸素放出能を亢進させる作用を有することが明らかになった。
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