The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるCefdinir (5%, 10%) 細粒の基礎的・臨床的検討
豊永 義清畠山 和男矢守 和子坂口 直哉中野 賢一山崎 美喜雄杉田 守正堀 誠
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1992 年 45 巻 1 号 p. 48-73

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抄録

新経口用セファロスポリン系抗生物質であるCefdinir (CFDN, FK482) の5%細粒及び10% 細粒について基礎的・臨床的検討を行い以下の成績を得た。
1. 抗菌力
臨床分離のStaphylOcoccus aureuS, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Branhamella catarrhalis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeに対する MICをCFDN, Cefaclor, Cefixime (CFIX), Amoxicillin (AMPC) について検討した。CFDNのS. aureus, S. pneumoniae, S. pyogenes, H. influenzae, B. catarrhalis, K. pneumoniae, E. coliに対するMIC 80は0.78, 0.20, ≤0.025, 0.39, 0.10, 0.20, 0.10μg/mlであり, 優れた成績を示し, グラム陽性球菌ではAMPCとほぼ同様であったが, 他の2剤は著しく抗菌力が劣っていた。グラム陰性桿菌ではH. influenzaeにて, CFIXが若干優れ, そのMIC 80が0.05μg/mlであった以外は, CFIXに遜色ない成績であった。
2. 吸収・排泄
今回, 5%細粒, 10%細粒とも3.0mg/kg, 6.0mg/kgについて, 又, 30kg以上の患児では 100mg capsuleの投与時にも血漿中, 尿中濃度を空腹時投与にして検討した。5%細粒及び10% 細粒間には, 両投与量とも有意差はなく, 同様の血漿中濃度推移及び尿中回収率を示した。3.0mg/kg濃度ピークは2時間ないし3時間に見られ, 5%細粒, 10%細粒それぞれ0.20~2.12μg/ ml (平均0.97μg/ml), 0.50~1.15μg/ml (平均0.78μg/ml), 6.0mg/kgも同様に, 0.66~2.06μg/ ml (平均1.40μg/ml), 0.70~1.52μg/ml (平均1.27μg/ml) であり, 8時間では3.0mg/kg, 6.0mg/kgはほぼ同様の値となり, 5%では0.04~0.54μg/ml, 10%では0.06~0.27μg/mlであった。半減期は3.0mg/kg, 6.0mg/kg投与それぞれ1.33~4.36時間, 1.14~3.27時間であり, AUC もそれぞれ1.7~11.0μg・hr/ml, 2.4~8.7μg・hr/mlであった。100mg capsule投与群は体重kg 当り2.4~3.1mgになり, その濃度ピークは2-4時間に示され, 0.79~1.88μg/ml, 平均1.11 μg/mlで, 8時間では平均0.20μg/mlであり, 半減期は1.54~2.72時間, AUCは平均5.2 μg・hr/mlであつた。尿中回収率は3.0mg/kg, 6.0mg/kg, 100mg capsule投与群, それぞれ6.85 ~39.2%, 6.08~25.5%, 10.3~39.7%が8時間に回収され, 従来の第3群セファロスポリン系抗生物質よりも若干低いが, 第6群とほぼ同様の成績であった。
3. 臨床成績
本剤を急性肺炎9例, 急性気管支炎11例, 扁桃腺炎23例, 狸紅熱15例, リンパ節炎8例, 蜂窩織炎2例, 皮下膿瘍, 膿痂疹1例, 尿路感染症6例, 計76例に本剤を使用し, 1例の判定不能例を除き75例で, その臨床効果を判定し, 74例が有用以上の成績を示し, その有効率は98.7% であった。細菌学的に, 本剤投与前に検出された起炎菌あるいは原因菌の経過を追い, 検索が可能であったものは, 複数の菌が検出されたものが12症例であり, 70株であったが, そのうち69 株が除菌され, 除菌率は98.6%であった。又, 1例ごとの細菌学的有効率は, 56例中55例で, 98.2%であった。なお, 1例に水様便が経過中認められた以外, 副作用は認められず, 臨床検査値異常はGPT上昇1例だけであった。

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