The Japanese Journal of Antibiotics
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近年に分離した臨床分離株に対するCeftazidimeの抗菌活性
出口 浩一横田 のぞみ古口 昌美鈴木 由美子鈴木 香苗深山 成美石原 理加小田 清次
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1992 年 45 巻 11 号 p. 1421-1450

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抄録

1989年及び1991年に全国の医療機関から送付されてきた臨床分離株, 更に各種感染症患者採取材料から分離・同定した臨床分離多数株を対象にして, Ceftazidime (CAZ) の抗菌活性を他のセフェム系薬剤などを加えて検討し, 以下の結論を得た。
1. 1980年代前半における臨床分離株を対象とした報告に比較して, 1991年分離株に対するCAZのMIC90が大幅に上昇した菌種は, Staphylococcus spp., Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Enterobacter spp., Serratia marcescens, Proteus vulgaris, Morganella morganii, そしてPseudomonas aeruginosaであることが示唆された。そしてProvidencia rettgeri, Providencia stuartii, Xanthomonas maltophilia, Bacteroides fragilis groupにもCAZ耐性株が高い割合に認められた。
しかしStreptococcus pyogenes, Klebsiella spp., Citrobacter spp., Proteus mirabilis, Pseudomonas cepacia, Acinetobacter calcoaceticus, Haemophilus influenzae, 更にAnaerobic GPC (Gram-positivecocci) に対するCAZの抗菌活性には大きな経年的変動が認められなかった。
2. 供試株にはMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA), Benzylpenicillin (PCG)-insensitive S. pneumoniae (PISP), オキシム型セフェム及びセファマイシン耐性の腸内細菌科グラム陰性桿菌, 更にニューキノロン系薬剤耐性菌が高い割合に認められたことから,「CAZ耐性菌」にはこれらの耐性機作が重なつていて, そうした耐性菌にはCAZの抗菌力が十分に発揮し得ない状況にあることも考えられた。
3. 近年に検出された臨床分離株に対するCAZの抗菌活性には, 上述したような問題点を含む。しかし, 日常診療で対象となる感染症の起炎菌となり得る大部分の臨床分離株には, CAZが有効な抗菌活性を維持していることも示唆された。そして, CAZは数少ない抗緑膿菌作用, 更に外膜透過性に優れた特徴を加味するなら, CAZは1990年代を迎えた今日においても, 臨床的に有用なセフェム系薬剤の一つであるとの結論を得た。

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