1992 年 45 巻 11 号 p. 1592-1608
小児感染症に対するCefprozil (CFPZ, BMY-28100) 細粒の基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
1. 血中濃度, 尿中排泄
CFPZの小児における体内動態を4.0mg/kg, 75mg/kg及び15.0mg/kgの3投与量で単回投与により検討した。いずれの投与量においても投与後1.00~1.30時間に最高血中濃度に達し, それぞれ3.06, 4.62μg/ml及び9.65μg/mlを示した。又, AUCもそれぞれ7.44, 12.50μg・hr/ml及び27.01μg・hr/mlを示し, 用量依存性が認められた。T 1/2 (β) は0.94~1.03時間と投与量による違いはほとんど認あられなかつた。投与後6時間までの尿中排泄率は51.5~57.1%であった。
食事の影響について75mg/kgで検討した。空腹時投与では, 投与後1.17時間に最高血中濃度に達し, 4.88μg/mlであった。食後投与では, 投与後1.54時間に最高血中濃度4.30μg/mlを示し, Tmaxの遅れと, Cmaxの若干の低下が認められた。しかし, T 1/2は空腹時投与で0.93時間, 食後投与で0.91時間と差はなく, AUCについても各々12.82μg・hr/ml及び12.96μg・hr/mlと差が認められなかった。投与後6時間までの尿中排泄率は各々63.8%及び50.7%であつた。
2. 臨床成績
総症例804例のうち, 除外・脱落29例を除く775例について臨床効果の検討を行つた。
起炎菌が検出された527例では著効315例, 有効197例, やや有効12例, 無効3例で有効率は97.2%であった。起炎菌が検出できなかった248例での有効率は96.0%であった。
起炎菌別臨床効果は単独菌感染475例, 複数菌感染52例について有効率はそれぞれ97.3%, 96.2%と高かった。Haemophilus influenzaeはほとんどすべて急性呼吸器感染症からの分離菌であるが, 単独菌感染88例において, 95.5%の有効率が得られ, 複数菌感染においてもStaphylococcus zureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniaeなどとの組み合せで多くみられているが, 高い有効率であった。
起炎菌別細菌学的効果は, 複数感染菌は分離し別々に計上すると起炎菌と判定された582株中460株が消失し, 菌消失率は83.3%であった。
S. aureusは106株が起炎菌と判定され, 菌消失率96.1%, S. pyogenes5172株で98.2%, S. pneumoniae48株で86.4%, H. influenzae132株で50.4%, Escherichia62株で90.3%の菌消失率であった。
3日以上使用したペニシリン系III群, セフェム系III群, マクロライドなどの経口抗菌剤が無効の64例については本剤の投与に変更し著効31例, 有効26例で反応し, 有効率は89.1%であつた。細菌学的効果は34株中27株が消失し, 菌消失率は79.4%であった。
3. 副作用・臨床検査値異常変動
副作用の検討は投与日数不足等の6例を除く798例について行つた。消化器症状は, 軟便3例, 下痢3例であり, その他では顔面蒼白・悪心が1例に認められ, 副作用の発現率は0.9%であった。
臨床検査値の異常変動は, 好酸球増多が530例中25例に, 顆粒球減少が530例中1例に, 血小板増加が448例中6例に, S-GOT, S-GPTの上昇が447例中各々7例に認められ, 発現率は約7%であったが, いずれも一過性で軽度なものであり, 本剤投与中止又は, 終了により消失もしくは正常に復した。
4. 服用性
服用性の検討が可能であつた803例のうちわずか4例が苦味等を訴えたが, 服用は可能であり, 本剤は従来の小児用経口抗菌剤の中では服用性に甚だ優れている印象が得られた。
5. 標準投与量
1日の標準投与量は以上の成績から1回7.5mg (力価)/kgを食前食後いずれも3回投与が適当であり, 必要により倍量にまで増量できるが, 成人量を超えないことを原則とした。