The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
造血器疾患患者に合併した重症感染症に対するImipenem/Cilastatin sodiumの臨床的検討
澤江 義郎仁保 喜之原田 実根渋谷 恒文岡村 孝浅野 嘉延谷口 修一村川 昌弘豊嶋 崇徳小鶴 三男鵜池 直邦武市 尚久橋本 通西村 純二油布 祐二久野 修資瓦 隆森岡 英次石橋 守興秋吉 都美中島 浩昭酒井 好古牟田 耕一郎定村 伸吾加藤 詳子小野 恭裕杉村 隆史平松 真裕南野 修一岡本 正紀田北 淳浅山 良吉山崎 和夫奥村 雄三中野 輝明本村 正治松原 不二夫金子 周司山本 雄正村石 昭彦迎 利彦池田 公明山野 裕二郎吉沢 誠司
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 45 巻 2 号 p. 123-135

詳細
抄録

1. 急性非リンパ性白血病34例, 急性リンパ性白血病12例, 慢性骨髄性白血病5例, 慢性骨髄性白血病の急性転化6例, 成人T細胞白血病・リンパ腫8例, 非ポジキンリンパ腫16例など, 造血器疾患96例に併発した感染症に対するImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS)の臨床的有効率は, 判定不能の9例を除くと60.9% (53例/87例) であった。
2. 感染症別の主な有効率は敗血症56.3% (9例/16例), 敗血症疑い40.7% (11例/27例), 肺炎62.5% (15例/24例), 上気道炎7748% (7例/9例) であった。
3. IPM/CSの1日投与量別の有効率は0.5g×2回が73.3% (11例/15例), 0.5g×4回が54.5% (6例/11例), 1g×2回が54.5% (24例/44例), 1g×3回が80.0% (4例/5例) であつた。
4. 1日投与量別, 重症度別の有効率は, 重症群の0.5g×4回が60% (6例/10例), 1g×2回が375% (9例/24例), 1g×3回が75.096 (3例/4例)であった。
5. 投与前後の好中球数別有効率は前後共に0~100/mm3の群が30.8% (4例/13例), 投与前が0~100/mm3で投与後が101~500/mm3の群が35.7% (5例/14例) であったが, 他の4例以上の群では70%以上の有効率を示した。
6. 起炎菌は42例から55株が明らかにできたが, 消長不明の12株を除くと消失率は83.7% (36例/43例) であつた。主な分離菌の消失率はStaphylococcus aureus100% (4株/4株), Coagulase-negative staphylococci 83.3% (5株/6株), Enterococcus faecalis100% (3株/3株), Pseudomonas aeruginosa63.6% (7株/11株) 等であつた。
7. 敗血症17症例についてみると, 基礎疾患 (造血器疾患), 1日投与量, 他抗生物質との併用, 投与前後の好中球数, 感染症の重症度から明らかに重症且つ難治性で, 分離菌は他の感染症より日和見感染菌が多かった。これらの悪条件にもかかわらず, 56.3%の有効率が得られた。
8. 副作用は消化器症状を主体として10例 (9.5%) に, 又, 臨床検査1直異常は肝機能値の上昇が12例 (11.4%) にみられたが, いずれも軽度で一過性のものであった。
以上により, IPM/CSは造血器疾患に併用した重症感染症に非常に優れた臨床効果を発揮する薬剤と考えられた。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
次の記事
feedback
Top