1992 年 45 巻 2 号 p. 160-171
新しいカルバペネム系抗生物質Panipenem/Betamipron (CS-976, PAPM/BP) を慢性気道感染症例に対し1回500mgあるいは750mg, 1日2回静脈内投与を行い, その臨床効果, 細菌学的効果及び安全性等について検討した。効果検討症例は29例であり, 肺炎等の対象外疾患や疾患病態が重篤で判定に適さないと判断された症例, 更に副作用中止による投与回数不足の症例等6例については安全性だけの判定を行った。投与期間は1g・分2が6~18日間で, 1.5g・分2が4~15日間であった。
疾患別臨床効果は慢性気管支炎12例では有効11例, やや有効1で有効率91.7%, 気管支拡張症12例では有効10例, やや有効1例, 無効1例で有効率83.3%, び漫性汎細気管支炎3例ではやや有効2例, 無効1例, 肺気腫+感染2例は共に有効であった。用量別では1g・分2投与群が17例, 1.5g・分2投与群が10例, 投与量を途中で変更した症例が2例であり, 用量別有効率は1g・分2が76.5%, 1.5g・分2が90.0%であった。29症例全体では, 有効23例, やや有効4例, 無効2例で有効率79.3%であった。原因菌は19例から11菌種24株を分離・同定した。その内訳は, グラム陽性球菌ではStaphylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae各2株, Stgphylococcus epidermidis, Streptococcus sanguis Streptococcus viridans, Streptococcus spp. 各1株, グラム陰性桿菌ではPseudomonas aeruginosa 9株, Haemophilus influenzae 4株, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas spp., Enterobacter cloacae各1株であった。これら24株に対する本剤の細菌学的効果は消失8株, 減少2株, 菌交代8株, 不変3株, 不明3株で, 消失率76.2% (16株/21株) であった。このうち, 不変3株と減少2株はいずれもP. aeruginosaであった。副作用は1g・分2投与群の2例にみられた。その内容は皮疹と動悸・不眠・癌痒感が各1例で, 程度はいずれも軽度で投与終了・投与中止後速やかに消失した。臨床検査値異常は8例に認められ, その内訳はLDH上昇2例, 好酸球増多, 好塩基球増加, GOT, ビリルビン, BUN, NAGの上昇各1例で, 程度はいずれも軽度・過性で, 臨床上特に問題になるものではなかった。